故郷への帰還 2
故郷の村、そして実家での暮らしは平和そのものだった。
寡黙だが頼りになるお父さん。
料理が上手で優しいお母さん。
最近、ませてきた妹のサフィア。
毎日、村の防衛能力を高める為の柵の作成に村人みんなで取り組んでいる。
王国からは建築士の派遣と共に、いくらかの助成金もいただいている。
そのおかげで木こりである、お父さんの仕事も忙しそうだった。
この楽しい空間を壊してしまう可能性があるかと思うと怖い。
でも…どうしても聞きたかった。
子供の頃に聞いた事があるが、その時は「分からないわ。」の一言だったような記憶がある。
だが…ボクは勇気を出してもう一度、同じ質問をしてみる事にした。
美味しそうな料理が夕飯のテーブルに並ぶ。
ジャガイモとガーガー鳥の燻製を使った炒め物はボクの大好物だ。
さて…
「お父さん、お母さん…話があるんだ。」
急に真面目に問いかけると食器を置いて両親は身構えた。
妹のサフィアは、フォークを口に運んだまま止まっている。
「ボクは何故、魔法を使えるの?」
家の中に静寂が広がる。
カランっ
サフィアがテーブルの上にフォークを落とす音が響き渡った。
「なんだ、そんな事~」
お母さんが口火を切った。
「でも…その答えは分からないわ。」
「あなたが子供の頃に聞いた時と答えは同じ。でも、ちょっと補足するわ。」
「お母さんのおばあさんのお母さん…つまり私のひぃおばあさんには、魔力があったらしいの。」
「だだ、おばあさんには魔力が引き継がれなかった。つまりおばあさんはお父さん側の血を引き継いだのね。」
そうだったんだ、僕の先祖には魔力があったという事か。
ただ、”魔力は両親のどちらかから引き継がれる”という定説からすると、ボクが持つ魔力の理由は説明できない。
「なぁに?お兄ちゃんは、どこからか拾われてきた子だとでも思ってたの?」
サフィアが鋭い突っ込みを放つ。
お父さんとお母さんが顔を見合わせて笑いあった。
「いや、そういう訳では…」
ボクは困った顔をしながら頭を掻いて否定したが、実は心の中に…もしかして。との思いもあった。
「ねぇ、アルマ…」
夜、アルマに魔力提供を行う時に、ボクはアルマに声を掛けた。
「ん?なぁに?」
「魔力って、親からしか引き継げないんだよね?」
「私は人族の事はよく分からないわ。」
たしかに…魔族であるアルマは知る訳も無いか。
「ところで魔族は、誰もが魔力を持っているの?」
ボクは珍しく魔族に関する質問をした。
「それは…企業秘密よ。」
アルマが珍しく困惑した表情を見せた。
続けてアルマは言う。
「人族の事は分からない…ただ、あなたはあなたって事で良いんじゃない?」
その言葉にボクは衝撃を受けた。
「確かに…うん…そうだな。」
ボクは自分が魔力を持っている理由に対して、ずっと疑問を抱いていた。
ただ、それはそんなに重要な事なのだろうか?
理由が分かったところで、分からなかったところで、自分のやるべき事は変わらない。
そういう事なんじゃないだろうか?
「ありがとう、アルマ。」
アルマの両手を取り、彼女の体を持ち上げて回した。
目を見つめながらボクは笑顔でグルグルと…
「火魔法…火球…」
アルマの口からボクに向けて火魔法が放たれる。
ボクは慌ててアルマの手を放すと水魔法でアルマの火魔法を相殺させた。
~~~~~~~~~~
しばらくして街の防衛柵が完成した。
すると、王国から大臣と呼ばれる偉い方がやってきて、防御柵の完成披露式典が行われた。
柵が完成したと言う事は、親方や建築士の方々とのお別れになってしまう。
村人は沢山の料理を作り、その式典を祝った。
美味しい料理に加えお酒も振舞われ、大人たちは大騒ぎしている。
うちのお父さんもとても楽しそうに騒いでいる。
が…実はボクは不安だった。
実際の魔獣と対峙した事があるボクにとって、この村を囲う柵がとても貧弱に見えていたのだ。
けっして王国からの建築士たちの設計がダメだという訳ではない。
3メートル程の木の柵が役に立つとは思えない程、以前にボクが対峙した魔獣は強力だったのだ。
「ねぇアルマ、この防御柵で本当に村は安全なのだろうか?」
問いかけるボクに対して、アルマは…
「何を言っているの?無理に決まっているじゃない?」
ボクは唖然とした。
「いや、アルマ…キミも一生懸命に手伝っていたじゃないか。」
「え?なんか楽しそうだったから加わっていただけよ。」
うーん、相変わらずの魔族クォリティーだ。
この防御壁をさらに大きくすべきか…
いや、火を吐くような魔獣が襲ってきたら、大きくしたところで木材の柵は燃やされるか。
「うーん。」
唸り声を上げているとアルマが肩を叩いてきた。
「魔獣が嫌う匂いがあるって知ってる?」
「その匂いを放つ花があってね、その花を村の周りに植えるのはどうかしら?」
(もっと早く言えよ。)と思ったが、
ボクの心を読んだアルマに「いや、聞かれていなかったから…」と、この疑問を口にするよりも早く返答された。
早速、ボクは式典の中央で話をしている大臣と村長さんの元へと近づいた。
「おー、マイトくん。今回はご苦労だったね。」
村長さんは、そういうと共に隣に座る大臣にボクの説明をする。
「ほぉ、君は軍立学園に通っているのかい。しかも魔法科とは…それは心強い。」
「王国軍も最近は、魔法師の人数が減る一方でね、おかげで騎士の横暴が目立ってきている部分もある。君も早く学園を卒業して、是非、軍の魔法師に加わって欲しいところだ。」
さらりと軍の内情を暴露した大臣の言葉に対して気になる部分もあったが、ボクは村の防衛に関する話を優先させた。
「お二人に伝えたい事があります。この防御柵でも十分だとは思うのですが、ボクの召喚獣であるアルマから提案があります。」
「この世界には”獣を寄せ付けない特別な匂いを放つ花”というものがあります。それを村の周りに植えていてはいかがでしょうか?きっと、防衛能力は向上します。」
村長さんと大臣はお互いに顔を見合わせて不思議そうな顔をしている。
そりゃそうだ、ボクなんかよりも何年も長く生きている二人が全く知らない話をしているのだがら。
と、そこで隣に居たアルマが口を開いた。
「”獣を寄せ付けない特別な匂いを放つ花”は、王国軍立学園の魔法科と薬師科との共同研究で行われています。まだ、世に知れ渡っていないのは、確証が無いからです。」
「ただ、それほど難しい事ではないので、この村で試してみるのはいかがでしょうか?」
「そんな花があるなら、畑を守るのにも役立つ可能性があるな。是非、試してみたいところだ。」
村長さんはアルマの答えに納得したようで笑顔で答えてくれた。
「予定より工事が早く終わってね、資金が少し残っている。その花はこちらで手配しよう。」
大臣の言葉に「ありがとうございます。」とボクが言い、アルマが花の名前と特徴を伝えた。
「うーん、そのような花の名は聞いた事が無いな。」
村長さんと大臣は揃って首を傾げた。
すると、この話を聞いていたデマントの街からボクと一緒に来たあの家族が口を開いた。
「私たちが住んでいたジン村から東の方角に行ったところにある高台に、そういった名前の花が咲いていた筈です。特徴も似ている気がします。」
「おう、それは良い情報だ。一度、調査してみよう。」
大臣は言うと、部下に指示を与えていた。
ボクは安堵したが、
(アルマ…魔法科で、花の研究なんてしてたかな?)と心の中で聞く。
「ウソに決まっているでしょ。」アルマが小声で答える。
(え?ウソだったの?)
「人族にウソをついて何が悪いのよ。」
確かに…魔族が人に嘘をつくのは…普通の事か、と思い至った。
日が暮れて来たので、酔っ払って大騒ぎをしている大人たちを尻目に、サフィアを連れて家へと帰る事にした。
「ねぇ、お兄ちゃん。もう行っちゃうの?」
「うん、学園が始まるからね…きっと、また帰ってくるから。」
ボクはサフィアの手をぎゅっと繋ぎ、ゆっくりと帰路に就いた。
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