薬師科の発表会 2
「アルマ…光魔法の回復でなんとかならないかな。」
ボクは多くの村人が苦しむこの現状をなんとかしたいと願い、そう伝えた。
「流石に今の世に存在しない光魔法を、こんなに大勢の前で使うのは危険だわ。」
「私が使っても、マイトが使っても目立ちすぎるわよ。」
確かに…失われた魔法を使えるなんて知られたら、ボクのアルマとの魔族契約の事までバレてしまうかもしれない。
アルマが魔族だという事がバレても大変じゃないか。
ナタリアや薬師科の生徒達が走り回っている。
「痛いよー」泣き叫ぶ子供。
男性の名前を叫び続ける女性。
「助けてくれー」と叫ぶ老人。
ぐったりと動かなくなった男性。
泣き声と叫び声が庭中に響き渡っている。
「マイトくん、何とかならない?」
イリエが焦った口調で言う。
「アルマも居る事だし、何とか出来ないかな?」
サビアスもボク達に助けを求めて来た。
「おいおい何を言ってんだ!?いくらマイトでも無理に決まってるだろ!」
ヤエノが半泣きになりながら叫ぶ。
ボクは…
助けたい…
こんな惨状…見たくない。
目立ちすぎるのがダメならば…
「そうだアルマ…手を貸してくれないか。」
ボクは自分が考えている事を心に写す。
「はぁ、仕方ないわねぇ。」
ボクの心を読んだアルマは渋々ながらも了承する。
「みんなも手を貸して欲しい。」と伝えると、
「当たり前だ!なんでもするよ!」と3人は力強く答えてくれた。
「サビアスくんは、さっきの機械室から煙り玉を」
「イリエさんと、ヤエノさんは、展示スペースから"水に入れると癒しの香りがでる草"と"音楽を奏でる箱"を借りて来てくれ。」
走って取りに行く姿を見送る。
「はぁ、なんで私がこんな事を…」
この作戦はアルマの力が重要になる。
「誰も居なかったから、黙って貰ってきちゃった」
サビアスとイリエが口を揃えて言う。
ヤエノはイタズラっ子かのようにニカッと笑った。
この混乱で薬師科の生徒達は皆、治療に専念しているのだろう。
ボクは3人に各々の役割を伝えた。
そして…「みんな…行くよ。」号令をかける。
「風魔法…召喚獣創造、天風讃美の奏者!」
ボクが詠唱を始めると同時にサビアスが煙り玉を空へと向かい放り投げた。
たちまち、辺りは黒煙で覆われる。
アルマが足元を駆け、すり抜けて走る。
ボクの手からは竜巻が舞う。
黒煙に包まれてボクの姿は隠れたままだ。
ヤエノが"音楽を奏でる箱"を空に向けて投げた。
その箱はボクの風魔法によって、空高くへと運ばれた。
「水魔法…水弓!」
イリエが放った水の矢には"水に触ると良い匂いを放つ草"が仕込まれている。
ボクの風魔法が空中で舞い、一つ、また一つとイメージした姿を形成していく。
やがて…縦型の琴を持つ、美しい女性の姿が現れた。透き通るようなその肉体は水色か半透明に輝き、ゆらゆらと揺らいでいる。
"音楽を奏でる箱"を琴の部分に添えた。
「すごい…」イリエ、ヤエノ、サビアスの3人は口を開けて、その姿に魅せられている。
"召喚獣…天風讃美の奏者"は、
ゆっくりと負傷者が横たわる庭の頭上へと進んでいく。
「サビアスくん!?」
ボクが促すと彼は我を取り戻した。
「あ!あれは…召喚獣だ!」
声の通りが良いサビアスが叫ぶと、
村人達、薬師科の生徒達が空を仰ぎ見た。
美しい音色が辺りに響き、さらにとても心地よい香りが漂う。
先程までの喧騒がウソのように静かになった。
アルマティアス…出番だ!ボクは心の中で叫んだ。
「光魔法…回復!」
患者から少し離れた場所より、アルマが治療を始める。
演奏を聴きながら、人々は空に浮かぶ美しい女性の姿をした召喚獣を見つめている。
「まるで夢を見ているかのようだ…」
一人の男性が呟く。
「光魔法…回復!」「回復!」「回復!」「回復!」
アルマが連続して魔法を唱えていく。
「あれ?」
「何があったの?」
所々から声が聞こえ…ザワザワと辺り一面が騒ぎ始めた。
「なんか…痛くなくなっている。ママ…怪我が治っているみたい。」
「あれ?骨が折れていたように思っていたが…」
意識を失っていた男性が静かに起き上がる。
「これは…召喚獣様の力?」
「いや、女神様の降臨に違いない!」
辺りは、さらに驚嘆の声へと包まれる。
そのとき…アルマが倒れた。
「アルマ!!」動揺したボクは召喚獣を作り出していた魔法に揺らぎが生じさせてしまう。
慌てて立て直すと、走り寄るイリエの姿が見えた。
「アルマちゃん、魔力回復薬を…」
「はぁ…はぁ、イリエ…ハグは…ダメよ」
アルマは薬を飲み干すと、ゆっくりと起き上がり次は治療室の方へと歩きだした。
すると…イリエはアルマを抱き抱えた。
「ちょ、ちょっと…」
「いいから!大人しくしてて!」
イリエはアルマを抱えたまま治療室へと入る。
アルマは部屋の中に居た怪我人達に、こっそりと回復魔法をかけた。
ボクは赤い魔法陣を空中へと描いた。
いつもアルマが出入りしているような模様だ。
そして、"召喚獣… 天風讃美の奏者"を上の方から徐々に消し去っていった。
辺りはだいぶ落ち着いたが、亡くなってしまった方や、行方不明の村人が居るので暗い雰囲気は残っていた。
ナタリアも忙しいそうにしていたので、ボク達4人は挨拶だけして魔法科へと帰る事にした。
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薬師科から帰ってきたボク達4人は魔法科寮の食堂の席へと座った。
重苦しい雰囲気の中、
「せっかくの発表会が、あんな事になっちゃて…薬師科のみんなは残念だったよね。」
と、サビアスが口を開いた。
「あの人達の村はどうなっちゃったのかな。」
ボクは呟いた。
「きっと、ナムーヤ様達がどうにかしてくれたわよ!」
イリエが手を握りしめて言う。
そんな中…
ヤエノが急に立ち上がった。
「なんで…マイトは、あんなに凄いことが出来るのに隠しているのさ!」
「なんなの?今日の魔法は…あの召喚獣も全部魔法でしよ!?」
「怪我人を治療したのも全部、あのアルマって子だよね!」
「あの子は一体、何なの?」
「マイトもアルマって召喚獣も普通じゃないでしょ!?」
勢いよく話すヤエノはいつの間にか涙ぐんでいた…
「ごめん…事情があって言えないんだ。でも、信じて欲しい。」
質問攻めにあったボクだが、こう答えるしか無かった。
少しの沈黙のあと、場の空気を変えようとしてくれたのかサビアスが話した。
「薬師科の生徒達は気づかなかっただろうけど…魔法を攻撃だけじゃなく、治療にまで使うなんてね。僕は感動しちゃったよ。時代が変わるような出来事だったね。」
「僕は今後もマイトくんの味方だからね!
「わたしもマイトくんの味方よ!誰が来たってマイトくんを守るわ!今日あったことも、絶対に秘密にする。」
イリエが興奮気味に話す。
「分かったよ、私も内緒にしとくわ!」
ヤエノは何故か怒り口調だが、約束をしてくれた。
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