合同野外演習 3
水、火、風、土、ボクは4つの上級魔法をぶつけたが、魔獣は倒れずにいた。
が…相当なダメージを受けているのは確かで動けずにいる。
ジンバイトとサモアンがゆっくりと立ち上がり、剣を構える。
薬師科のナタリアは、二人の側で彼らの回復に専念している。
ナイサンスールは、その傍らで盾を構えて3人を守る姿勢を見せる。その立ち姿は、さっきまで震えていたとは思えない程、立派だ。
ボクとイリエはアルマと共に魔獣の状態を確認していた。
もう一発、必要なようだな…
ボクが考えた…その時、背後から声が聞こえてきた。
「大丈夫かー!?」
火魔法組のファスマス先生と風魔法組のザンビアス先生だ。名前は分からないが剣士科と薬師科の先生方も駆けつけてくれた。
「助かったわ…」
よほど緊張していたのかイリエがその場で座り込んだ。
魔獣は、もう息絶え絶えな状態に見える。
ボクはこれ以上の魔法の行使を止め、先生達に後を任せる事にした。
剣士科の先生と、魔法科の先生が力を合わせて魔獣へと立ち向かっている。
ボク達の班、6人はすでに戦線から離れ息を整えていた。薬師科のナタリアが「これを飲んで…」と回復薬を渡していた。
剣士科の3人、ジンバイト、サモアン、ナイサンスールから、感謝の気持ちが彼女に伝えられる。
イリエはボクに感謝の気持ちを伝えると共に、「マイトくん、お疲れ様。あんなに凄い魔法を見たのは初めてよ。4属性上級魔法の連発だなんて…王国軍所属の魔法師でも不可能よ。」と話してきた。
ボクは…
「ちょっと事情があるんだ…悪いが黙っておいてくれないか?」と依頼した。
「うーん、どうしよっかな♪」と答えるイリエはいたずらっぽく微笑んていた。
魔族であるアルマと契約した事で魔力が強くなったとは言えないので困惑する。
「何かキミが臨むものがあれば叶えるよ。ボクの出来る範囲でだけどね…」
そうイリエに伝えると「いいわよ。」と言い嬉しそうに微笑んだ。
アルマが「秘密をバラすようなら…」と言いつつイリエに魔法を放とうとしているのをボクは必死に止める。
何故かその光景を見てイリエが笑う。いや…キミが危険な状態だったんだけどな…
魔獣との戦闘以上に疲れを感じる。
歓喜の声が聞こえてくる。
どうやら先生達が魔獣を倒したようだ。
「今日はありがとう。」そう言ってきてくれたのは、剣士科の優等生、王国軍所属の剣士の父を持つサモアンだ。
「ボク達、剣士科が地図外のエリアにまで足を踏み入れてしまった為にキミ達に迷惑をかけてしまった。ジンバイトの我儘を抑えきれず申し訳ない。」
「あと、魔法があんなに凄いものだとは知らなかった。オレはまだまだ勉強不足だと実感したよ。」
感謝の気持ちは嬉しいが魔法科の生徒、全員が上級魔法を使えると勘違いしていないか不安にはなった。
ナイサンスールも声を掛けてきてくれた。「ありがとう、ボクは足手纏いで役に立たなかったけど良い経験を積ませて貰ったよ。キミの魔法は本当に凄いね!」
彼の言葉にボクは返した。
「ボクもね、実は平民の家の子なんだ。両親は魔法を使えないんだよ。毎日訓練を重ねた事で上級魔法まで行使出来るようななったんだ。」
ネイサンスールはしばらく言葉を失ったが「ありがとう、ありがとう、とても励みになるよ。」と涙を流しながら言った。
二人にも「ボクの魔法の事は口外しないで欲しい。」とお願いした。
ジンバイトは、遠い場所に居る。
一旦下がり回復薬を飲んだ後すぐに前線に戻り、最後まで先生達と一緒に魔獣の討伐に加わったようだ。
彼は放っておいても魔法は凄い。なんて言いふらさないだろう。
次にナタリアが近づいてきた。
「今日はありがとうございました。これ、魔力回復薬よ。」と瓶を渡してきてくれたので、
「こちらこそありがとう。ボクの魔法の話は広げないで欲しい。あと、ナタリアさんが班の危機を知らせてくれたおかげで助かったよ。」と伝えた。
「うん、役に立てて良かったわ…」
その後、何か言おうとしていたみたいだが…もじもじとした後、何も言わずに去っていった。
「あー、今のは…」
イリエが眉間にシワを寄せて考え込んでいる。
アルマも何か不機嫌そうに見える。
次にファスマス先生とザンビアス先生が近寄って来た。
「マイトくん、お疲れ様。演習でこんな事になるなんて申し訳ない。重い怪我人が出なかったのが幸いだ。詳しくは明日、学園で聞く事にするよ。」
疲れていたボクは「ありがとうございます。」とだけ伝えて、今日は解放される事に安堵した。
寮に戻った後、アルマに声を掛けた。
「ねぇ、アルマ…魔獣って、いろんなところに居るものなの?」
「何故、あの森に居たのかは謎ね。魔族の動きが気になるところだわ」
アルマの返答に、「ん?アルマも魔族だよね??」と質問する。
何故か驚いた表情をするアルマ。
「私は…はぐれ魔族なのよ。」
魔族にも色々あるのだな…と思いながら、毎日の約束通り今日、残っている分の魔力をアルマに提供した。
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翌日、ボクは呼び出されてファスマス先生の部屋に来た。イリエも呼ばれていたようで、すでに座ってお茶を飲んでいる。
ボクはイリエの隣にゆっくりと座り、置かれていたお茶に口をつける。
「昨日はお疲れ様。剣士科の生徒の暴走で演習範囲外から出た事は剣士科の先生から聞いたよ。」
「にしても、あの巨大な獣をあそこまで追い詰めるなんて…一体、何があったんだ?」
うーん、どう答えるべきか…
「ボクの召喚獣、アルマティアスが追い詰めました。剣士科の3人も強かったです。」
居ないから良いか♪と思い、すでに強い事が知られているアルマの活躍だという事にした。
事情を詳しく知っているイリエは黙ってテーブルの中央に置かれていた、お菓子に手を出している。
「確かに、キミは凄い召喚獣を従えているね。ただ、キミ自身の魔力も相当なものだと思うんだ。」
「召喚術師を目指すのもダメだとは言わない。が、召喚獣に頼りすぎずに、自分の能力もしっかりと見定めて欲しい。」
「先生!マイトくんも凄いんですよ!」
突然イリエが立ち上がり叫んだ。
ボクは慌てて彼女の服の袖口を引っ張る。
動揺した先生に向かい「はい、自身の精進も怠らず、強い魔法師を目指します。」と宣言した。
イリエは、ふぅ…と息を吐きながら椅子に座り直した。
話題を変えようと考え、ボクは先生に質問を投げかけた。
「ファスマス先生は、剣士科の先生や生徒についてどう思いますか?」
今回の合同野外演習では、剣士科と魔法科がどうしたら仲良く出来るか。まずは剣士科の生徒を探ろうと考えていた。
昨日の演習から考察すると、
ジンバイトは完全に魔法科の生徒を嫌っている。
サモアンとナイサンスールは、魔法科に対して興味が無く魔法の知識も乏しかった。
「あー、剣士科の連中は自分達の事しか考えていないからねぇ。困ったものだよ。」
「キミ達の演習も見させて貰っていたけど、剣士科の生徒は単独行動が目立ち、連携なんてまったく無かったね…なんの為の合同演習か。」
先生の返答にボクは驚いた。
「先生、見ていたのですか?」
「あぁ、そりゃ演習の内容を見ないとね。あの森には薬師科と魔法科の先生と協力して作った魔法装備が設置してあるんだよ。それを使ってキミ達の行動を見ていたんだよ。」
「何かトラブルが起きたら助けに行かないとならないしね。ただ…今回のようにエリア外に出てしまうと見れないんだ。」
「あと、気がついていると思うが、常に3体1組で獣が行動していたのも、薬師科の先生の仕業だよ。」
う、まったく気づかなかった。
危なかったな、もし魔獣が演習範囲内に出ていたら完全に見られていた訳か。
「では、そろそろ失礼します。」
授業が始まる時間だったのでボクとイリエはお茶のお礼を伝えて、部屋の外に出た。
先生の部屋を出ると同時にイリエが微笑みながらボクに言ってきた。
「マイトくん。次の休み、私と街に買い物に行ってよ♪」




