土魔法使いのサビアス
アルマと召喚獣の想像をして楽しんでいるが、どれ一つとして実現はしていない。
形は出来たとしても、それで攻撃するというイメージが難しかった。
何よりも練習する場所が無い事が悩みの種だった。
誰にも見られずに練習する事は出来ないだろうが。
寮の食堂でアルマと二人で項垂れていると、サビアスがやってきた。彼もこの寮で暮らしている。
「やぁ、2人して頭を抱え込んで何をしているんだい?」
サビアスの質問に対して明確な返答は出来ないので
「どこか、目立たない場所は無いかなーって思っててね。」
「あー、何かすんごい魔法をぶっ放したいんだね。」
う、サビアスは鋭いな…
「ボクの兄がこの学園に通っていた時に発見した、秘密の練習場があるんだけど…良かったら紹介しようか?」
「サビアスくん、すごい助かるよ!」
ボクは彼の手を取ってお礼を伝えた。
が……「いや、タダでは教えないよ。」
口元をニヤリとさせながらサビアスは言った。
「残念だけど、ボクは裕福な家の生まれでは無いんだよ…」
ボクはしょんぼりとしながら握りしめていた彼の手を離した。
「はははは…違うよ。」
サビアスは笑いながら言う。
「キミが凄い魔法をぶっ放す所を見たいんだ。それが秘密の練習場所を教える条件さ。」
(うーん、サビアスに見られてたら全力を出せないしな。)
困った顔をしているのがバレバレなのか、サビアスが口を開く。
「大丈夫、ボクは誰にも言わないから!2人だけの秘密にしよう!いや、アルマも居るから3人だけの秘密だ!」
アルマとボクは顔を見合わせる。
「うーん」と考え込むボクに向かい、アルマはそっと耳打ちした。
「とりあえず場所を教えて貰って、サビアスが居る時は召喚獣の練習をせずに、適当に違う練習をしたら良いのよ。そしてサビアスが居ない時にこっそりと召喚獣の練習をする。どう??」
(流石、魔族は人を欺くのが上手いな!)
心の中で呟いたがアルマには読まれているので、
「まぁ、そう言う事にしておいてあげるわ。」と少し怒ったように返してきた。
「サビアスくん頼む。練習風景を見せるからその場所を教えてくれ。」
ボクは改めて手を差し出した。
サビアスに先導されて、ボク達は秘密の練習場と呼ばれる場所へと向かい歩いた。
夕方となり、辺りはすでに暗くなり始めている。
「サビアスにはお兄さんが居るんだね。」
「そうだよ…とても優秀な兄でね、この学園に在籍していた時は、何度も表彰されていたんだ。
自慢のお兄さんなんだな。と思い、サビアスの顔を見たが、なんだか曇っているように見えた。
「お兄さんとは仲が良いのかい?」
ボクは少しサビアスの心情を探ってみる。
「うん、仲良しだよ。小さい頃から魔法を教えてくれたんだ。兄は風魔法が得意でね、というか…ボクの家系は全員、風魔法が得意なんだ。」
「だけど、ボクには風魔法の才能が無くてね。お父様にはよく怒られていたんだ。そんな時も、兄はボクを庇ってくれていたんだ。」
サビアスの顔が少し明るくなったのでホッとした。
「ここだよ。」
着いた先はちょうど演習場の裏側だった。商業の街デマントとは、正反対の場所で人影は無い。そして片側には演習場の壁が高くそびえ立っている。もう片方は鬱蒼とした森林だ。
「なるほど、これは良い場所だ。」
ボクとアルマは頷いた。
「さぁ、時間も遅いし、早く練習を始めようよ。」
サビアスは何かを訴えるような目をしてこちらを見ている。
さて…どうしたものか。
アルマと目を合わせた後、ボクはサビアスが納得できる程度の魔法を放った。
「火魔法…中級 炎の波!」
手の平から放たれた炎が放射線状に広がり、大地を駆ける。
「水魔法…中級 氷結!」
空中に集まった水滴がその中心から氷へと変わり凝縮、パリンという音とともに砕け散る。
「風魔法…中級 花吹雪!」
色とりどりの無数の花びらが円状にうねりを上げながら突き進む。
「土魔法…中級 土砂流!」
地面から浮かび上がった土と砂が、波となって流れ出す。
「4属性、すべて中級魔法が使えるなんて凄い!」
サビアスが拍手を送ってくれた。
「でも…マイトくん。本当はもっと凄い魔法を使えるんでしょ。ボクはね、優秀な兄の背中をずっと見てきたんだ。だから、どのくらいの魔力でどのくらいの魔法を使えるか分かるんだよ。」
「今のキミは余裕すぎる。」
んー困ったな。サビアスは鋭すぎる。
これ以上は上級魔法という事になる。平民の子供が実は上級魔法を使えるだなんて説明がつかないからな。
「ふふふ。いいよ、隠さなくても、もしボクが誰かにマイトくんが上級魔法を使った。と言ったとしても、誰も信じないよ。」
確かにそうだな。
ボクは再びアルマと目を合わせた後、久しぶりに上級魔法を行使する事にした。
「火魔法…上級 炎星の業火」
炎に包まれた球が頭上へとゆっくりと浮かんで行く。それが少しずつ大きくなり、炎を撒き散らしながら回転し始める。
一定の大きさになったところで、ボクは高く上に上げた腕を振り下ろした。
ずどぉーん、炎の球体は地面へと撃ち放たれた。
「水魔法…上級 絶対零度の氷河」
両手を天にかざし、大気の水分を集結させる。同時に水分の温度を下げ、氷へと変化させる。固く固く…氷の純度を増していく。
空中で固まった壁上の氷、ボクは両腕を前へと突き出す。氷の氷壁は轟音と共に雪崩れるように地面へと叩きつけられた。
「風魔法…上級 神風の頂き」
目を閉じて神経を風の流れを感じる。その流れを徐々に大きくし、ボクは渦巻きを作った。さらに大きくさせる渦巻き。周りの植物が巻き込まれていく。
ずごぉーん。巨大な竜巻が地面の形を変えた。
「土魔法…上級 大地の憤怒」
両手を地面につけ、大地に祈りを捧げる。ボクに力を…目を閉じて魔力を込める。ガタガタガタ。ボクの祈りに応えた大地が地響きを鳴らせた震え始めた。ゴゴゴゴゴオ、大きく揺らした大地から何本もの岩山が突き出る。
うん。久しぶりに上級魔法を放つと、なんだか気持ちがいい。
サビアスはボクに拍手を送る。
「いやぁ、流石に4属性すべての上級魔法を使えるだなんて思わなかったよ。それも、見た事もないような凄い魔法だ。地形が変わってしまっているじゃないか。」
しまった…やり過ぎたか。
「マイトくんは、本物に凄いね。これは先生を超える実力だよ。学園で学ぶ事は、もう無いんじゃないの?」
「いや、もっと強くなりたくてね…やりたい事があるんだ。」ボクの返答にアルマの尻尾が顔面に炸裂する。余計な事を言うなという言葉が尻尾から伝わってきたようだ。
「マイトはね…学園で常識を学ぶ必要があるのよ。」
アルマが言うとサビアスはお腹をかかえて笑った。
「ふぅ…ボクの兄も上級魔法を使えてね。学園の卒業試験でオリジナルの風魔法を披露したんだ。」
「その時は、結構 学園内で話題になったらしいよ。」
自慢の兄の事を語るサビアスは嬉しそうだ。
「へぇー、どんなオリジナル魔法なのか見てみたいな。」
そう呟くボクに向かい、
「兄は卒業後、すぐに軍に所属しちゃってね。実はボクも見たことがないのさ。」
「ただ、兄のオリジナル風魔法は、音を使った魔法だと聞いたよ。」
「音を使った魔法?」
ボクはアルマの方を見たが、何も知らないようで、首を横に振った。
辺りは暗闇に包まれつつあった。
お腹が空いた事もありボク達は、秘密の練習場を離れて食堂へと向かう事にした。
「音か。。。」
帰り道、ボクはアルマに囁く。
「楽器を持った召喚獣なんて…おかしいかな?」
「そうねぇ…人型の召喚獣…あっても良いと思うわ。」
人型の召喚獣は、天使のような女性にしよう。そうだな…楽器は縦型の弦がついた形が良いかな。そして…楽器を鳴らす事で風魔法を放つ…うん、いいかも!
アルマと顔を合わせ、頷きながら微笑み合うボクの姿をサビアスは振り返って見ると、不思議そうな顔をしてまた前を向いた。
すっかり暗くなってしまったが、ボク達の姿を淡い月明かりが照らしてくれた。




