火魔法使いのヤエノ
何故、剣士科の生徒は魔法師の事を嫌うのだろうか…
ボクはこの疑問をサミュアに聞いてみた。
「うーん、とりあえず寮の食堂に行こうか。そこでゆっくりと話をしよう。」
2人並んで寮の中へと入っていった。
寮の食堂は朝食と夕食が提供される。有料だが安価だ。ボクは朝食は自分で用意するが夕食はここで取ると事が多い。
授業はもう終わっているが、まだ時間が早いので生徒はあまり居なかった。
「おっ、マイトとサミュアじゃん。」元気に声をかけて来たのは長身赤髪の女子生徒ヤエノだった。
1人、テーブルでノートを広げている。
どうやら勉強していたらしい。
「数学がまったく分からなくてねー。ここでちょっと復習しようかと。」
「邪魔しちゃ悪いから、ボク達は他の席に行くよ。」
勉強の邪魔をしては悪いので、ボクはそう伝えたが…「お願い、私に数学を教えて!」と懇願されてしまった。
サミュアと顔を見合わせる。
「じゃあ、オレが教えてあげるよ。マイトとの話が終わってからでも良いかい?」
嬉しそうに微笑むヤエノ。
「勿論、さぁここに座って。」
ボクが、剣士科と魔術科の生徒が何故、仲が悪いのかをサミュアに聞くと伝えたら「なるほど、新入生らしい疑問だね。」と相槌を打った。
「さて、どこから話そうかな。」
「まず…キミはデマントの街にある大魔法師トルナシア様の銅像を見た事があるかい?」
入学試験の日に見た事をサミュアに伝える。
「剣士科の生徒達は、アレが気に入らないのだよ。」
サミュアの話を聞きながらヤエノは頷いている。
「王国民はトルナシア様の事を魔族から人族を救った英雄だと讃えている。が、そんな事はもう数100年も前の話だ。今は剣の時代だ。というのが剣士科の生徒達の考えなんだ。」
「そんな事で魔法科の生徒が嫌がらせされるのはおかしい!」ボクは興奮気味に言った。
少し大きめの声を出してしまったのか、周りに居る生徒数人がこちらの方を見てきた。
「ただ、これは剣士科の先生方から来ている考えでね、何年も積み重なられて教えられているのだよ。」
「その話に加えるとね。」ヤエノが口を開く。
「魔法を使えるかどうかは遺伝で決まる。だから剣士科の生徒はいくら頑張っても魔法を使えない事が分かっているの。」
「剣士科としては、魔法科より優位に立とうとするなら、魔法を否定するしかないのよ。」
はぁ…相手より有利に立つとか…くだらない。
ボクは頭を何度か横に振った。
「"魔法の時代はもう古い、これからは剣の時代だ!"先生から常にそう言われていると、それが真実でなくても本当のように思えてしまうのだよ。」
「さらに魔法科の生徒は減る一方、逆に剣士科生徒は増えているから、魔法科の生徒の肩身は狭くなる一方さ。」
サミュアの言葉に対して「魔法科の生徒達も剣士科の生徒達に憎悪感があるのかい?」と聞いた。
「魔法科の生徒達は、魔法対して絶対の自信を持っているからね。あまり相手にしていない生徒が多いよ。」
「ただ、相手から嫌われているのに好きになる生徒は居ないのが現実さ。」
なるほど、そういえば魔法科の授業では剣士科の事を悪く言う先生は居ないな。
「どうやったら剣士科と魔法科の生徒は仲良くなれるかな?」
ボクの問いかけにサミュアとヤエノは目を見合わせた。
「そんな事は考えた事も無かったな。マイトはやはり凄いよ。」ヤエノは言う。
サミュアは苦笑いしながら「うーん、難しいと思うけど、マイトなら出来るかもしれないな。」
「そうだな…3ヶ月に一度くらいの頻度で剣士科、魔法科、薬師科合同の野外演習会があるんだ。そこで必然的に剣士科と一緒に行動する事になる。」
「まずはそこで相手を知ることから始めてみてはどうだろうか?」
「流石、サミュアは頭が回るね!」と伝えた時、机の上に赤い魔法陣が現れた。
「ちょっと、余計な事を考えていないで自分の精進に力を注ぎなさい!」
白い身体を震わせながらアルマが現れた。
「こんにちは。」
ヤエノとサミュアが怖い顔をしているアルマに声をかける。
「アルマさんにボクの召喚獣を紹介したかったけど残念だな、さっき魔力を使いすぎちゃってね。今は疲れて寝ているんだ。」
そう言うサミュアに対して、アルマは「別に紹介なんてして貰えなくても良いわ。」と…魔族クオリティな返答をする。
せっかく出来た友達に何てことを言うのだろうか、ボクは大きくため息をこぼした。
「さて、勉強を教えるとするか。」
空気を変えようとしたのかサミュアが話題を変えてくれた。
ヤエノの勉強会が始まったので、ボクは自分の勉強にもなるかと思い、一緒に参加する事にした。
サミュアの教え方はなかなか上手い。
これならヤエノの勉強も捗りそうだ。と思ってから数分。
「あーーー、飽きたわ!」ヤエノが叫ぶ。
「ねぇ、マイト。ちょっと魔法の相手をしてよ!」
おいおい…勉強時間、短すぎるだろ。
ボクとサミュアは呆れ顔となった。
仕方ない…と、3人で寮の中庭に出る。
「試験でやっていた水の入った釜に火をつける魔法を教えてよ!」
「いや、あれは単なる火球だから…」
「じゃあ私の火魔法とマイトの水魔法で対決しようよ!」
楽しそうな笑顔をボクに向けてヤエノが言う。
「よし、じゃあオレが審判をしよう!」
サミュアもノリノリだ。
ヤエノと距離を置いて向かい合う。少し離れた場所にサミュアが立った。
「私から行くねー!」
ヤエノが構えて呪文を唱える。
「火魔法…火弓!」
火の弓から放たれた火の矢がボクに向かって放たれた。
「水魔法…水弓!」
水の弓から放たれた水の矢をヤエノに向かって放つ。
…どぉーん!
2人の真ん中でぶつかりあった魔法は水蒸気と化して消えた。
「流石ね!もう一回行くよ!」
「火魔法…火球!」
ヤエノから放たれた火の玉をボクは水魔法…水球で相殺させた!
「面白く無いわねー。マイト、手加減してるだろ!?」
バレてる…だと言って本気で魔法を放つのは危険だし…
「じゃぁ、ボクから行くよ。水魔法…水球かける10!」
さっき見ていた数学を思い出して、水魔法を10発、掛け合わせて放った。
連続で放つのでは無く、小さめのを10発並べたイメージだ。
直接ぶつけるのは危険なので、水球は空中へと放つ。
一旦、空中で留まった10発の水球をボクは腕を振り下ろしてヤエノへと飛ばす。
10発の水球は分散されて降り注ぐ。
ヤエノは慌てて水球に向けて火球を空中へと放つ!
…ざばぁーん!
ヤエノの放った火魔法は消え、空からのシャワーを浴びる事となった。
「ヤエノの負けー。」サミュアは笑いながら叫ぶ。
「もー!」ずぶ濡れになったヤエノは負けを認め、火と水の魔法対決は解散となった。
2人が寮へと向かって行くのを見送る。
「ねぇ、さっきの魔法、いいんじゃない?」
「水魔法を空に上げて、空から相手を襲うの!」
アルマの提案に…
「水の鳥っぽい召喚獣!」
2人は声を揃えて言い、笑いあった。
土魔法で作る召喚獣っぽい"砂の巨人"につぐ新たなイメージが浮かんだ。」




