魔族との契約 2
家に帰るとお母さんと妹が泣きながら出迎えてくれた。
ごめんなさい。とボクは何度も謝る。
お母さんの誕生日だというのに、とんでもない心配をさせてしまった。
どうやらお父さんはボクを探しに出ているらしい。
よっぽど酷い身なりをしているのか
「とにかく、服を着替えましょう」と、お母さんが促す。
妹は、まだひっくひっくと泣いている。
申し訳ない気分でいっぱいになり、ボクも涙ぐむ。
水浴びをして身なりを整えた後、部屋に戻り、
ボクは少しだけど、お母さんの為に取った果物を差し出した。
「お母さん、お誕生日おめでとう」
つやつやとした赤いポポロの実はお母さんが大好きな果物だ。
いや、こんな事を言っている場合でな無いのでは?とも思いつつ、恥ずかしいそうにボクは気持ちを伝えた。
森に入った目的がお母さんの誕生日プレゼントを探す為だったので、自然な流れだったのかもしれない。
「ありがとうね。」お母さんは涙目になりながらボクを抱きしめた。
どんっ!
大きな音が鳴ると共にドアが開きお父さんが帰ってきた。
「マイトは帰ってきたか!?」
悲壮感にあふれた顔が、ボクを見た瞬間に笑顔に変わる。
一気にボクに駆け寄りボクの身体を、ぎゅっと抱きしめてきた。
“きこり”という職業柄、大きな身体をした父は力もある。
(イタイよ…)声を出して言いたいけど、我慢してそのままお父さんのされるがままに身をまかす。
「どこに行っていたんだ!?」と言うお父さんの言葉に対して、森に行っていた事を話し、ボクは謝った。
そして、その時に友達と出会ったという事を伝える。
「ボクの召喚獣だよ。」紹介すると、
ウサギのような姿をした魔族、アルマティアスは丁寧におじぎをして挨拶とする。
「おぉ、その若さで召喚獣を従えるとは、やはりマイトは凄いな」
お父さんの言葉に対し(何故、やはり?)と、若干の違和感を覚えつつ、アルマティアスと一緒に暮らす了解を得た。
「お兄ちゃんも無事だった事だし、早く夕飯を食べましょ。今日は私も手伝ったんだからね!」
妹のセフィアが自信ありそうに胸を張った。
料理上手の母の指導とあれば、さぞかし腕が上がったのだろうな!と、心の中でつぶやいた。
「私もお食事をいただいても良いかしら。」
魔族アルマティアスが言葉を話した事に家族が驚く。
「召喚獣が言葉を話せるのか!?」
お父さんが困惑の気持ちを言葉に表す。
「私は長年生きているから言葉も話せるのよ。」
アルマティアスの話に家族はあっさりと納得した。
この白いウサギのような召喚獣が、まさか魔族だとは思えないのだろう。
ボクは家族に嘘をついている事に対して罪悪感を抱くとともに、絶対にバレないように隠し通さねば!と心に誓い、アルマティアスと目を合わせた。
お母さんの誕生日パーティである今日の夕飯は、いつもより豪華だった。
芋などの穀物類や野菜に加えて、肉も並んでいる。ボクが取ってきた果物も中央に置かれていた。
妹の手伝いは、少しは役に立ったのかな。
美味しい夕飯とおしゃべりの後、ボクは自室へと入った。
今日は疲れたな…とベットに体をゆだねると
「おーーーい、マイトラクスくん」
と、尻尾の長い白ウサギの姿をした魔族、アルマティアスが笑顔で声をかけてきた。
若干、額に青筋がついているのが分かる。
いやいや、せっかく可愛い姿をしているのに勿体ない。
「私に魔力をくれる約束てしょ!」
そうだった、その契約をしたので崖から落ちて瀕死の状態だったボクは助けて貰ったのだった。危うく、このまま寝てしまうところだった。
ちゃんと約束は守らなきゃ。ボクはゆっくりとベットから起き上がるとアルマティアスに向けて手をかざして魔力を放出した。
「…美味しい」
え?美味しい?
魔力って味があるのか?てっきり無味無臭だと思っていたが。。。
「こんなに美味しい魔力は初めてよ!流石ね!」
(何が流石なのか?…魔族の感情はさっぱり分からないな。)
と思いつつ、今日あった日の出来事を思い浮かべつつ眠りについた。