風魔法使いのカミュア
召喚術師を目指すと宣言してから一週間が経過した。
初日はボクの話題で盛り上がったようだけど、二日目からは上級魔法で岩山を粉砕した召喚獣アルマの話題に変わっていた。
上級魔法は王国軍所属の魔法師ぐらいしか使えないという事なので、話題になるのも当然だ。
ただアルマの本性は召喚獣じゃなく、魔族なのでバレないように目立つ行動は控えるべきだった。
なので、あの日からアルマには学園に来るのを控えて貰っている。
先生方までアルマはどこだ?と聞いてきたが「知らない」と答えている。
本当にどこに居るか知らないのだから、嘘は言っていない。
さて、今日は風魔法の演習場に来る日だった。
ボクは特例で各魔法の演習場を日替わりで周っている。
アルマからの提案で、魔法で召喚獣っぽいモノを作る計画だが、土魔法の"砂巨人"以外はまったく想像出来ていない。
隣にアルマが居てくれたら、少しはヒントが浮かんだのかもしれないが、仕方ない。
各演習場を周り、色々と体験する事でヒントを得る事があればと願っている。
ボクはいつものように早めに演習場に来て、端に方に座り魔力を高める訓練を行った。
目を開けると、黒い翼をはためかせた鳥が通り過ぎる。獣に翼が生えていると言った方が正しいか?
「やぁ、マイトだったね。最近、キミの召喚獣を見かけないけど、どうしたんだい?」
美しい装飾が施されたメガネをかけたイケメン、カミュアが話しかけて来た。
「最近、体調が悪いようで、どっかに行っちゃったんだ。」
ボクがそう答えるとカミュアが笑い出した。
「使役する召喚獣の場所が分からないなんて面白い事を言うね。せっかくオレの召喚獣と友達になって貰おうと思って連れてきたのに。」
目の前を飛んでいた黒い翼を持つ何かがカミュアの肩に止まった。
「紹介させて貰うよ。オレの召喚獣、グーイルだ。」
紹介されたグーイルは「キュー」と声を出した。
どうやら話す事は出来ないようだ。
アルマ以外に召喚獣を見た事が無かったボクはグーイルを凝視した。
いや、アルマは本来、魔族だから召喚獣を見るのは初めてという事か。
「召喚術師を目指すなんてキミは変わってるね。召喚獣だけで戦う事なんて難しいから、普通は魔法の補助的役割で召喚獣を使うものだよ。」
ほぉ。。。そうなのか。と、内心は思ったが顔には出さない事にした。
「でも、キミの召喚獣はかなり強いらしいね。オレも見てみたかったよ。」カミュアは笑いながら言った。
「カミュアさんは、召喚獣をどうやって手に入れたのですか?」すごく気になったので、つい聞いてしまった。
「誕生日に両親からプレゼントされたのさ!オレの家は貴族だからね。」
なるほど…そう簡単に手に入るものでは無い雰囲気だな。
「ところで、キミの強い召喚獣は、どうやって手に入れたんだい?」
しまったな、墓穴を掘った…
「森で…たまたま…」
そう答えると、カミュアは驚いた顔をした後、
「キミには幸運の女神様がついている様だね。」
と、貴族っぽい返しを受けた。
〜〜〜〜〜〜〜
風魔法の演習が終わった後、ボクとカミュアは一緒に寮へと向かった。彼も寮に住んでいるらしい。
(貴族と言えども家を出たら寮暮らしなんだな。)
すると、そこへ剣士科と思われる生徒3人が突然現れた。腰に剣を携え、紺色のジャケットに赤色で模様が描かれた制服を着ている。
剣士科の寮は、こことは反対側のハズだが…
「おい、お前!あの時の借りを返させて貰うぞ!」
この声は聞き覚えがある…登校初日にヤエノとやり合っていた奴らだ。
「キミたちは…誰だったかなぁ〜。残念だけどオレは女子生徒の顔しか覚えていないんだ。」
お前と呼ばれたカミュアが適当な答えを返す。
「貴様ぁー」
剣士科の3人が怒り狂っているのが分かる。
「マイトくん、手加減を頼むよ。」サミュアがニコリと微笑む。
いや、相手に聞こえてますけど…
すると、空中に青色の魔法陣が光った。と同時にカミュアの召喚獣、グーイルが飛び出す。
「人数的に不公平だから3対3にさせて貰うよ。」
3人の剣士科生徒が剣を取り出して構えた。
学園で使っている訓練用の剣であると思うが、それでも恐怖を感じる。
「やぁぁぁぁ〜!」
中央に居た大柄な生徒がカミュアに向かい
左右に居た小柄な生徒が、それぞれボクとグーイルに向かい迫ってきた。
グーイルが口から火を放つ。が、相手にでは無くカミュアの前方に向かって放った。
同時にカミュアが風魔法を放つとグーイルの火と合わさり、風に乗った火が一気に3人の剣士科生徒を飲み込んだ。
…凄い。召喚獣と連携を取っている。
その光景を見たボクは、構えただけで何も出来ずに居た。
剣士科の3人は、マントをひるがえした。
「ほぉ、魔法封じのマントか。特に火魔法対して効果が高いようだな。そのような高価な装備を持っているという事は貴族出身かな。」
「あー、オレ達はアーノルド男爵家の親族だ。謝るなら今のうちだぞ。」
「いやいや、謝るなんて勿体無い事はしなくても良いよ。せっかくだし楽しませて貰うとするよ。」カミュアがニヤリと笑って答える。
騒ぎを聞きつけた、何人かの魔法科の寮生が集まってきた。
「風魔法…木の葉の舞!」カミュアが放った木の葉に向けてグーイルが火を放つ。
と、火のついたいくつもの葉が3人に降り注いだ!が、これもマントによって塞がれてしまう。
「さては、オレの事を調べてきたね。面白いよ、キミたち。でも、まだ勉強不足だ。」
カミュアの言葉を無視して3人は剣を構えた。
小柄な2人のウチの1人が盾を構えて走り出す。その直後にもう1人が盾を構えて走る。
そして、そのまた直後に大柄な1人が剣を持って走る。
3人が縦に並んで走る。
「風魔法…突風!」カミュアの放った風魔法により盾を持った小柄な1人が吹き飛んだ。
グオーーー、カミュアの肩に乗ったグーイルが火を放つと直後に走っていたもう1人の小柄な生徒が盾で火を受けて倒れる。
小柄な2人の背後から大柄な生徒が現れ、剣を大きく振りかぶった!
「土魔法…土壁!」ボクの土魔法により、大柄な生徒の剣は吹き飛んだ。
「ほらな、勉強不足だっただろ。」
カミュアはボクの方に向かって左拳を突き出して微笑んだ。
勉強不足も何も…3人居る相手のウチの1人を無視しちゃダメでしょ。
起き上がった3人は、「今日はこのぐらいにしておいてやる。」と、よくある捨て台詞を吐いて去っていった。
周りで見物していた魔法科の寮生たちから拍手が巻き起こる。
「カミュアさん、怪我は無かったですか?」と問うボクに向かい、「さん、は要らないよ。カミュアでいいよマイト。助かったよ、ありがとう。」
カミュアは優しく微笑んだ。
ボクも微笑み返すとともに一つの疑問が大きくなった。
どうしてあの剣士科の生徒達は魔法師の事を嫌うのだろうか…




