堂々と宣言する
「あぁ、昨日の試験は疲れたなぁ」
ボクは目覚めると同時に、独り言を呟いた。
「おかげで昨夜もらった魔力は美味しくなかったわ。」
独り言を呟いたつもりだったがアルマに聞かれていた…居たのか。
昨日の魔法試験では、目立ちまくってしまった。
魔族と契約している事がバレないように、ひっそりとした学園生活を送ろうと考えていた登校初日の出来事だった。
「マイト、もう少し召喚術師っぽくしたらどうかしら?」
アルマの言葉に…そうだった、そう言う設定にしようと話し合って決めたのだったことをボクは思い出した。
「でも…ボクは本来、召喚術師じゃないから、どう立ち振る舞えば良いのか分からないんだよ。」
「確かにそうね。何か案を考えてみるわ。」
うなるアルマの返答に期待をして、ボクは朝食の準備に取り掛かった。
学園生活2日目
今日は歴史の授業から履修しているので、机が沢山並べてある教室へと入った。
魔法科と言えども、常に魔法の練習をする訳ではなく、一般常識の授業もあるのだ。
卒業するには、こういった一般科目の単位も必要となる。
村の学校でも勉強していたが、ここでの授業は村での時よりも内容が濃かった。
特に過去の偉人の話が多くある。
が、ボクが魔族アルマに教わった失われた魔法、光魔法の話は出てこない。
もっと後の授業で出てくるのかなー。
授業中も肩に乗っているアルマを見ても、なんの反応もない。ボクの心を読めているハズなのに…無視か。
逆にアルマの心を読む事が出来ないボクは不公平感を抱いた。
「ちゃんと授業に集中しなさい。」
アルマが尻尾で顔を叩いたくる。このやり取りもだいぶ慣れたな。
昼食の時間となり、ボクは食堂へと向かった。
途中、背後から声がかかる
「おーい、マイトくーん。」
初登校初日に仲良くなったサビアスだ。
「こんにちは。サビアスくんはどこに居たんだい?」
「ボクは数学の授業を受けていたよ。結構、難しいねー」
授業に関しての話をしながら食堂に入った。
食堂は好きな食材を取っていくスタイルで、どれだけ食べようが食費はかからない。
聞くところによると、王国からの支援金で賄われているらしい。
混雑した食堂で空いているテーブルを探していると、ボクの名前を呼ぶ声がした。
この大きな声は…やはりヤエノだ。
赤髪で長身の女生徒が手を振り、周りからの注目が集まる。
「仕方ない…行こう。」ヤエノの知人であるサビアスは、ため息をつきながらヤエノの方に向かっていった。
「イリエさん、ヤエノさん、こんにちは。ご一緒しても良いかな?」
二人が座っているテーブルは、ちょうどあと二人座れたので、ボクはそう声をかけた。
「勿論よ、一緒に食べましょ♪」
イリエが、そう言ってくれたが、
昨日、イリエにモフモフと抱きしめられたアルマは怪訝な顔をした。
「ありがとう、混んでいたから助かったよ」
ボクは不機嫌なアルマを無視して席に着いた。
「サビアス、お母さんは元気?」ヤエノが話を切り出す。
「あぁ、元気にしてるよ。」
父親同士が仲が良いというヤエノとサビアス。
「よく子供の頃に一緒に遊んだなー。あの時は楽しかったよな!」
そう言ったヤエノに対し
「うん、魔法ごっこと言われ火魔法を食らったり、剣士ごっこと言われ棒で叩かれたり。かくれんぼしたら、いつの間にかキミは居なくなったり。とても楽しかったよ…。」
サビアス…大変だったのだね。ボクは涙目になりながら同情した。
「ヤエノのお父さんも、サビアスのお父さんも王国軍所属の魔法師なのよね!」
重い空気を感じたイリエが、急に明るい笑顔となり話題を変える。
「ウチは父親も母親も王国軍所属の魔法師なんだ!」
ヤエノも場の空気を変えるべく両親の話へと切り替えた。
どうやら、自分の楽しかったサビアスとの思い出が、自分だけが楽しかった思い出だった。という事に気づいたらしい。
「ボクはお父さんが軍の魔法師で、お母さんは鍛治職人の娘だよ。」サビアスも話題を変えたかったようで両親の紹介をした。
「私の両親は商人なの、珍しいでしょ。」
イリエの話にサビアスが驚くと共に質問をする。
「失礼な事を言うかもだけど…ご両親のどちらかに魔力があったの?」
「うん、お母さんが貴族の出身でね、水魔法を使う事が出来たの。」
「なるほど」…イリエの返答にサビアスは納得しているようだ。
さて…ボクは何と言うべきだろか…。
イリエ、ヤエノ、サビアスの3人がボクの方を見ている。
だよね、ボクだけが両親の話をしていないよね。
咳払いをした後、ボクは言った。
「ボクのお父さんはキコリでね、お母さんは刺繍と料理が得意なんだ!」
フォークを持ちながら同席している3人は固まる。
もしかしたらボクの両親が王様か何かなのかと想像していたのかもしれない。
「え?魔力を持たない家庭から?」
イリエの言葉に対し。
「そうだよ、ボクの両親はおろか村の誰一人として魔力を持っていなかったよ!」
少し強い口調でボクは話してしまった。
「だとしたら…凄い事だわ」
イリエが言う。
困惑した表情を浮かべるボクの表情を見て、さらに口を開く。
「この学園はね、以前は剣士科の生徒より、魔法科の生徒の方が多かったのよ。
それが、魔法の力を持つ継承者が減ってきた事で、今では逆転してしまったの。」
「魔力は両親のどちらかから受け継ぐものと考えられているから、マイトくんのケースは特別なのよ。」
イリエの言葉にボクは驚いた。
そうだったんだ、魔力がいわゆる遺伝となると、魔族と契約する前から魔法を使えたボクは一体何者なのだろうか?
「剣士科の中では、貴族や剣士の2世でない生徒達を差別する傾向がある。マイトも気をつけてた方が良いかもな。」
ヤエノが伝えてくれた。
「魔法科や薬師科の中では、差別とかは無いのかい?」
「魔法科の生徒は、みんな仲良しよ。薬師科の生徒も人数が少ないからか仲が良いように見えるわ。」
ボクの質問にイリエが答えてくれた。
平穏に過ごしたいな。と、考えていると
ファスマス先生がボク達の前に現れた。
「マイトくん、少し、私の部屋まで来てくれないかな?」
食事は終えていたので、3人と別れボクは先生について行く事になった。
心の中で…なんか嫌な予感がするな。と囁くと、肩に乗ったアルマが相槌を打った。
ファスマス先生の部屋に入ると他の魔法科の3人の先生が集まっていた。
「よく来たね。さぁ、ここに座って。」
3人の先生方が声を揃えて、ボクに座るように促す。
金の装飾が施された立派な赤い椅子にボクは座った。
先生方は、なんだか怖いくらいに笑顔を向けてくる。
「早速だが、キミの伸ばしたい魔法を教えて欲しい。」
「午前中に会議をしていたのだが、口論になってしまってね。本人の意思を尊重しようという事になって、キミを呼んだんだ。」
もう選択しないとならないのか。とボクは困った顔をする。
魔法科4人の先生方は、大きく目を見開いてこちらを見てくる。何かを話したそうだが、誰も口を開かない。
「マイト…これはチャンスじゃないかしら?」
なるほど…ここで宣言をしてしまうか。
アルマと目を合わせ、ボクは頷いた。
椅子から立ち上がり、大きめな声で答えた。
「ボクは…この学園で、最強の召喚術師を目指します!」




