再会
王都に建つオレの銅像。
400年前に魔族と戦い、魔王にトドメを刺したのはオレの光魔法だったが、それも仲間が魔王にダメージを与え続けた事による結果だ。
魔王を倒したのはオレが率いたパーティ”七仙剣”のメンバー7人での成果であり、オレ一人だけ銅像が作られ、名前が現世まで伝えられているのは間違いだと感じる。
「魔王との戦いで命を落とした七仙剣はキミだけだったからね。神聖化されたのよ。」
オレの考えをアルマに伝えると、そういう返事が返ってきた。
「それに七仙剣の誰もがキミを尊敬していたし、銅像を建てる事が決まった時に先頭に立ったのもリズラルとシイラルだったのよ。」
最初、銅像は七仙剣の活動拠点だったデマントの街だけに建てられていたが、後に王都にも建設されたらしい。
ドドドドーーン!
リズラルの生まれ変わりである火魔法使いテルミュアと、盗賊から軍人へと転身した風魔法使いのシイラルが訓練場で放った上級魔法が炸裂する爆発音が鳴り響く。
究極魔法も使えるテルミュアとシイラルだが流石に今の体では連発は出来ないとの事だ。
「テルミュア…お願いがあるんだ。」
オレとアルマは砂漠の街ヤンガノに残るヤエノの指導を依頼してみた。
ヤエノに究極火魔法を伝える事が出来たら大きな戦力アップだ。そしてそれを教える事が出来るのはテルミュアしか居ない。
「いいわよ。私は長期休暇を申請した事が無いから問題ないと思うわ。シイラルも一緒に…良いかしら?」
「勿論、一緒に行こう。シイラルの事は、ラナハン師団長に頼んでみるよ。」
「自分に出来る事はあるかな?」
隣で話を聞いていたシイラルが不安そうな顔をしながら言う。
「ヤンガノの街にはザックアリルの生まれ変わりが居るんだが、まだ記憶を取り戻せていないんだ。手伝ってくれないか?」
「ザックアリルか、それは頼もしい存在だ。」
オレの依頼にシイラルは少し嬉しそうな表情となった。
「あの、私…もっと強くなりたいの。究極魔法が使えるくらいに。」
イリエがシイラルに向かい指導を願い出た。
「水属性の究極魔法か…」
シイラルは首を傾げたが、その後テルミュアと顔を合わせると頷きあった。
「400年前、究極魔法を使える水魔法使いは居なかったので、具体的な魔法イメージを伝えるのは難しい。けど…自分とテルミュアは究極魔法を自ら生み出した経験がある。出来る限りの協力をするよ。」
ラナハン師団長と話をし、テルミュアとシイラルと共に第四魔法師団へと戻るべくシザカンの街へと旅立った。
「乗合馬車で行くのね。」
「お、おぅ…天界を通るのはルール違反だからな。」
アルマは冷たい目でオレを見る。”時空魔法空間に入る感覚が嫌”なのがバレバレだ。
「テルミュアとシイラルはお互いの魔法に触れる事で記憶を取り戻したのね。」
馬車の中でアルマが問い掛ける。ザックアリルの記憶を取り戻す為のヒントを探っているのだろう。
「えぇ、不思議な感覚だったわ。」
「自分も不思議な感じだった。とても暖かく懐かしく…それが頭の中をグルグルと廻ったんだ。」
テルミュアとシイラルがそれぞれ思い出しながら伝えてくれた。
「オレもそうだったな。あのローブを着た時に、とても懐かしい感覚だった。」
ドドドドーーン!
砂漠地帯を通過中、突然大きな爆発音が鳴り響いた。
馬車を引いていた動物が驚いて脚を止める。
少し先に炎が舞っているのが見えた。
慌てて馬車を降り、炎が見えた方へと走る。
といっても砂のおかげで、とても走りにくい。
「あれは…タナホーガ!」
細長い体だが巨大な砂漠に住む獣、タナホーガと魔法師が戦っている姿が見えた。
「ヤエノ!」
エタレナ師団長達と共にヤエノが炎を纏った剣を振りかざしている。
「イリエ!」
そう叫ぶとヤエノは走ってきてイリエに向かい飛びついた。
「良いところに!手伝ってくれ!」
エタレナ師団長が叫ぶ。
と同時に、師団長の召喚獣であるグリルデルジュニアが大きくジャンプしてタナホーガに飛びついた。
ドーーン
大きな砂煙を巻き上げて砂の中から出てきたのは、もう一体のタナホーガだ。
「ヒヒーーン」
馬のような鳴き声がしたかと思った時、ユニコーンの姿をした召喚獣の角から竜巻が放たれた。
魔法師ピスハイムの召喚獣だ。ピンク色の髪を振り乱しながら指示を出す。
そして…さらにもう一体のタナホーガが現れた。
「タナホーガが群れをなして人を襲うという情報で、ここに来ている。マイトラクスとイリエティーナも一体、頼む!」
エタレナ師団長が事情を説明してくれた。
タナホーガは逃げ足が速いので時間をかけて戦うと逃げられてしまう。
そう考えたオレは魔法陣を描き、召喚術を唱えた。
「ヒスイ…混乱の蝶を!」
召喚したヒスイのピンク色の目から無数の赤い蝶が放たれた。
蝶たちは3体のタナホーガに分かれ、頭の周りを巡回している。
「動きが止まったわ。」
エタレナ師団長の言葉にオレは召喚獣たちを一旦引くように伝えた。
タナホーガは混乱しているようで、動きを止めている。
「一気に畳みかけよう。」
オレはアルマ、イリエ、ヤエノ、テルミュア、シイラルに指示を出した。
「光魔法…究極 天弓星霹靂!」
オレとアルマの放った究極光魔法…空中から巨大な弓が舞い降り左側のタナホーガへと突き刺さる。
「火魔法…究極 業炎滅柱陣!」
「風魔法…究極 咆哮神舞旋!」
テルミュアの究極火魔法とシイラルの究極風魔法が発動…龍の形をした風が炎の柱とともに舞い、右側のタナホーガを空中へと吹き飛ばす。
「火魔法…上級 炎帝の双璧!」
「水魔法…上級 水虎の氷槍!」
イリエの頭上で作られた氷の槍とヤエノが両腕から繰り出した2本の炎が中央のタナホーガにぶち当たった。
左側のタナホーガは体の半分が消滅。
右側のタナホーガは煙を上げながら地面へと落下。
中央のタナホーガはゆっくりと地面へ倒れた。
「やったね!」
オレとアルマはハイタッチして勝利を祝うと、ヒスイも懸命に手を伸ばして手を合わせてきた。
「おい…なんだ今のは?」
エタレナ師団長と魔法師団の面々は静まりかえる。
「凄い炎…究極魔法って何なの?」
ヤエノが同じ火魔法使いであるテルミュアを尊敬の眼差しで見つめていた。
「やはり詠唱から発動までの時間が遅いわね。」
アルマがイリエとヤエノに言うが、二人は普通の魔法師が放つ上級魔法とは火力のレベルが違う。
「はじめまして第二魔法師団所属のテルミュアです。」
「同じく…自分はシイラルと言います。」
二人は自己紹介をし、エタレナ師団長と握手を交わした。
「こんな逸材…第二魔法師団に居たかしら?」
不思議そうに問う師団長に対し、最近加入したような魔法師だから。と誤魔化した。
詳しく説明しても理解が難しいだろう。
タナホーガ討伐の作戦を終えた第四魔法師団と共にヤンガノの街へと戻る。
「どの方がザックアリルの生まれ変わりなのかな?」
軍に到着すると早速、テルミュアとシイラルが問い掛けて来た。
「うーん、今は居ないみたいだな。彼女はここの騎士団に所属しているんだ。」
早く会いたいと二人は言うが、会ったところで前世ザックアリルの記憶がないユキアノは困惑するだけだろう。
「ユキアノと一緒に武器屋に行って、赤い鎧と槍は買っておいたぞ。」
ヤエノは鼻高々に言うが、やはり感想はカッコイイな。と言われただけらしい。
「ザックアリルと言えば相棒の赤竜じゃないか?」
シイラルはそう言い、テルミュアと頷きあった。
「実は、すでに味方になってくれている赤竜は居るんだ。」
オレがそう言うと二人は驚いた。
「赤竜を味方に?凄い…引き合わせた事は無いの?」
「会った事はあるけど…あの時は、それどころではない状況だったからな。」
テルミュアに聞かれたので、オレはそう答えた。
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