盗賊団
魔力を暴走させてしまった盗賊カルッセル、洞窟内には荒れ狂う風が巻き起こる。
「カルッセル、深呼吸して!落ち着きなさい!」
アルマが慌てた様子で叫ぶがカルッセルには、その言葉さえ聞こえていない様子だ。
渦巻く風によりカルッセルには近づく事さえ出来ない。
イリエも吹き飛ばされないように必死に岩にしがみついている。
「この風…とても強い…そして懐かしい。」
隣で小さく呟いたテルミュアの言葉をオレは聞き逃さなかった。
「アルマ…シュレインの煙を!」
オレの言葉に従いアルマはシュレインが作り出した"記憶を呼び覚ます煙"を封じた瓶の蓋を開けた。
放たれた白い煙がカルッセルを取り巻く風に乗り周囲に渦巻く。
「わたしが…止める。」
テルミュアはそう呟くと…次は大きな声で叫んだ。
「アルマティアス!回復魔法の準備を!トルナシアは防御壁で守護して!」
「え?アルマティアス?」
アルマは驚きつつもテルミュアの指示に従った。
「カルッセル!正気を取り戻して!!」
「火魔法…究極 炎帝迦具土!」
彼女は叫ぶと同時に究極火魔法を放った。
その火魔法は強烈な魔力を持っていたが、とても優しく感じる。
テルミュアの放った火魔法とカルッセルの体から溢れ出た風が洞窟内で交わる。
ドドドドーン!
「ちょっと…無茶しないでよ。」
オレが展開した防御魔法、土壁の横からイリエが顔を出しながら言った。
アルマが急いでカルッセルに近づき光魔法で治療を施す。
「カルッセル!」
テルミュアも慌てた様子で駆け寄った。
「う…うぅ…」
ゆっくりと目を開けたカルッセルの顔をテルミュアが覗き込む。
「あぁテルミュア…キミはリズラルだね。」
「そうよ…シイラル。」
テルミュアはカルッセルに手を出し…起き上がらせた。
「ふぅ…上手くいったようだな。リズラル、シイラル、久しぶり。」
オレは二人に握手を求めた。
「アルマティアス…トルナシア。」
4人手を合わす姿を見て、イリエが小さく拍手している。
「えっと…イリエさんは誰の生まれ変わりなのかしら?」
テルミュアが問いかけるがアルマが答えた。
「イリエはイリエ、七仙剣じゃ無いわよ。」
「おかしいわね、その強大な魔力。普通の魔法師とは思えないけど…」
リズラルの記憶を取り戻したテルミュアが伝えると、イリエは照れ臭そうにした。
「リズラル、シイラル、魔族が動きはじめている。手を貸して欲しい。」
オレは二人に前世の七仙剣のメンバー全員を見つけた事を伝え、協力を申し出た。
「トルナシア…勿論、手伝うわ。」
リズラルはそう言ってくれたが…シイラルは違った。
「自分は…いくつもの罪を重ねた。罪を償わなければならない。」
真面目な性格のシイラルが何故、盗賊のメンバーに入ってしまったのか…その理由は真面目過ぎたから…だったのかもしれない。
「まずは、洞窟の外に出ようか…」
オレはそう言うとカルッセルの手に縄をかけた。
こうする事によって盗賊団の戦意を削ぎ、またカルッセルの身を守る事に繋がると考えた。
外に出ると、すでに盗賊団の多くが軍によって捕まっていた。
逃げてしまった盗賊も居たようだが深追いはしないようだ。
捕まえた盗賊を王都へと移送する。
テルミュアとカルッセルは、村を離れてから今までの事を伝えあっていた。
テルミュアはカルッセルがずっと村に居たと思い込んでいたようだ。
前世では兄妹だったが、現世では幼馴染みとなった二人。
立場的にお互い笑顔は見せず…複雑な心境である事が伺える。
「カルッセルが牢屋に入れられてしまったら痛いわね。」
「何とかならないかな。」
オレとアルマは小声で話し合った。
王都に着き、詳しく話を聞いた結果、盗賊のリーダーはカルッセルでは無い事が分かった。
この盗賊団は孤児を中心に結成されていたようで、リーダーと呼べるような存在は無かった。
すべてが自由の元に行動していたらしい。
そして…オレは王様に会う事にした。
いつもの謁見部屋では無く、食事の際に同席した。
見た事もないような色とりどりの食事が並ぶ。
「遠慮なく食べてくれ。」
王様からはそう言われたが、前世のトルナシア時代に王様と食事をした事はあるが、数回の事だしその際は仲間も同席していた。
王様と王妃、3人で食事をするのはとても緊張した。
「マイトラクスの方から会いに来てくれるとはな。嬉しいぞ。」
緊張を察し、ほぐそうとしてくれているのだろうか…にこやかに笑う王様。
隣に座る王妃も優しい表情を浮かべる。
「国王様…お願いがあります。」
オレは早々に話を切り出した。
「うむ…そういう事だろうな。」
王様は察していたようで、箸を止め話を聞いてくれた。
「先日、捕まえた盗賊団の中に優秀な逸材がいます。魔族との対決の為に必要な人材です。なんとかならないでしょうか?」
「そのような逸材が盗賊団の中に居たとはな。だが…罪を犯した以上、無罪放免とするのは難しい。」
確かに王様の言う通りだ。
しばらく沈黙の中での食事となった中。
「あなた…」
「うむ…そうだな。」
王様と王妃がひそひそと話をしている。
「少し調整が必要なので今は言えないが、なんとかしよう。」
王様は笑いながら言う。となりの王妃も笑顔だ。
「ありがとうございます。」
きっと、よいアイデアがあるのだろう。オレは詳細も分からないまま礼を伝えた。
翌日、盗賊団に刑が命じられた。
「盗賊団全員に懲役刑!魔法が使える者は軍所属の魔法師団に!魔法が使えない者は軍所属の騎士団に!それぞれ無償にて入団を命ずる!」
第一魔法師団のカッサリル師団長が声高々に叫んだ。
魔法が使える者は…風魔導士シイラルの生まれ変わりであるカルッセルだけだ。
魔法が使えない者は…第一騎士団と第二騎士団に振り分けられた。
そこで無償で剣士として修業が課せられるらしい。
確かに…魔族との対決に備え、戦力の増強は必須だ。
前回の王都防衛戦時に多くの騎士団員を失った軍にとって、この増員は有難い事かもしれない。
元々給料の観念が無い盗賊団からすれば、住む場所、食べる物が与えられた事は喜ばしいと感じられる。
騎士団員になる為の教育は必要だが、良いアイデアだと思った。
「流石、王様だね。」
オレがアルマに言うと、
「王妃の頭が切れるのかも…良い印象を与えておくのが得策ね。」
アルマは自分の意見を付け加えた。
「はじめまして…今日から第二魔法師団に加わらせてもらうシイラルです!」
カルッサルは以前の名前を捨てて前世の名前である”シイラル”を名乗った。
テルミュアと同じ第二魔法師団に所属する事が出来、嬉しそうに笑うシイラル。
「シイラル…嬉しそうだね。」
「うん…生き生きとしているわ。テルミュアも明るくなったわね。」
オレの言葉にイリエが返した。
「シイラルの事はテルミュアに任せておけば大丈夫そうね。」
アルマは頷きながら言う。
第二魔法師団の中には、盗賊出身であるシイラルに対し否定的な考えを持つ魔法師も居た。
が…
「風魔法…究極 咆哮神舞旋!」
龍を形作る風が訓練場で暴れ回った。
否定的な考えを持ってシイラルの事を見ていた魔法師は腰を抜かして、その場に座り込む。
「火魔法…究極 業炎滅柱陣!」
何本もの柱が天に向かい立ち、炎が舞い上がる。
リズラル…現世のテルミュアが得意とする究極火魔法が訓練場に放たれる。
リズラル、シイラルコンビが放つ究極魔法の饗宴の再現だ。
もう、第二魔法団の面々は口をポカンと開け、その光景を見守るしかなかった
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