魔族との契約 1
う……
イタイ……イタイ……
身体中がイタイ……
重いまぶたをやっとの事で開けてみると、辺りは暗闇に包まれていた。
どうしたのだったかな……なんだか頭も痛い…
なんとなく血が出ているのが分かる。
そうだ…
ボクは、お母さんの誕生日に美味しい果物をあげたいと思い、家族に内緒で一人で森に来たんだ。
そして、足を踏み外しちゃって、
崖を転げ落ちて…
安全な森と言われているから油断しちゃったか。
ここはどこなんだろう?
どのくらい時間が経ったのだろう?
お母さん、お父さん、心配しているかな。
妹はどうしているだろう。
ボクは、このまま死んじゃうのかな。
ダメだ…
まぶたが重い……寒い…
寝たら終わっちゃう。
なんとなく、そう思うけど目を開けていられない。
「キミ……キミ……」
優しい声が聞こえる。どこから聞こえているのかな?
がんばって薄目を空けてみるも暗闇しか見えない。
誰かが近づいてきたような気配も感じられない。
ただ、ボクを呼ぶような声だけが聞こえた。
いや、聞こえたような気がしただけかも。
夢の中で呼ばれたのか現実なのか、もう…なんだか分からない。
「このままだと死んじゃうよ。
私と契約したら生き残る事が出来るけど、どうする?」
え…?
先程よりはっきりと声は聞こえたが、周りに気配は感じない。
目を開けてみたいが、もう開けることも出来ない。
(あなたは誰??)
もう声を出す事も出来ないので、心の中で答える。
「私は魔族。魔族のアルマティアス。私ならキミを救う事が出来る。信じるか信じないかはキミ次第。
でも……このままだとキミの命は持たないわよ。」
魔族!?
ボクたち人族と敵対する魔族がどうしてボクを助けるって言うんだ?ウソだ…ウソに違いない
でも……イタイ。
身体中が……イタイ。
骨が折れているとか分からないけど、とにかくイタイ。
もう、お母さん、お父さん、妹に会えないのかな…
嫌だ…そんなの嫌だ!
心の中で叫ぶ。
「どうする?私と契約する?魔族である私と契約するのは怖い?
そうね…契約は、毎日キミの魔力を私にちょうだい。
それを約束してくれたら、私はキミを助けてあげる。」
もう…まぶたを開ける事が出来ないので魔族の姿を見る事も出来ない。
まだやりたい事、沢山あるのに……死ぬなんて嫌だ!
たとえ魔族なんかと契約したとしても僕は生きたい。
心の中で葛藤したが、ボクの心は折れた。
(契約を……交わします。)
ボクは力を振り絞って声に出した。
いや、声に出ていたかは分からない。けど…その魔族は確かに、
「契約を交わします」と、答えた。
優しい光に包まれた後、
ボクは重いまぶたを開ける事が出来た。
「おはよう、これからよろしくね♬」
目を開いて見た、初めて見る魔族、
それは尻尾は長いが白いウサギのような姿をしていた。
「これからキミと一緒に過ごすのだから、魔族の姿じゃマズイでしょ。この姿…召喚獣としてキミのそばに居てあげるわ。
約束通り、毎日 私に魔力を提供してね♬」
優しく微笑む魔族。
本当に魔族なのかな?疑いたくなるような姿をしている。
でも…確かに身体に痛みは無い。
まったく無いという事は無いが、嘘のように体は回復している。
召喚獣に変身しているって言ってたな。
とは言え、この尻尾の長いウサギみたいなのが魔族なのか。。。
動揺する中、とりあえずボクは魔族に向かい直して、お礼の言葉を口にした。
「魔族さん、助けてくれてありがとう。
ところで貴方のお名前は何でしたっけ?」
「いえいえ、これはウィンウィンな関係よ。魔力の供給をよろしくネ。私の名前はアルマティアスよ。」
ん??…どうしてボクに魔力がある事を知っているんだ?村で魔力を持っているのはボクぐらいなのに。不思議に思う暇もなく、魔族は言葉を続けた。
「あと…魔族と契約している事がバレると、キミの身の安全は保証出来ないから気をつけてね♬」
確かにそうだ。
法律とか難しい事は分からないけど、ボクたち人族と敵対する魔族と契約を結んでいるなんて事がバレたら王国軍に捕まってしまうかもしれない。
そんな事になってら、お母さん、お父さんに会えない所では無い。
ひっそりと平和に暮らしている両親にも迷惑をかけてしまいかねない。
魔族に向かいゆっくりと頷くと、ボクの頭に飛び乗った。
「あっちに行くと道があるわ。」
示された方向に向かい、ゆっくりと歩き出した。
これがボクと魔族アルマティアスと歩く長い道のりの始まりだった。
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