方向と推理と確信
「ほい!」
ドン!
「お、おう」
大猿を収穫したのと、日が暮れる手前だったのもあり、荷物を保管している民家に戻っていた
そこからは色々なものを作り出した
猿の毛を手入れし、毛布を
肉も余すことなくバラし、塩漬けも作り保存食も
そして臓器は乾燥させて木の根などと合わせて、朝には薬を作れる状況に
もはやサバイバルをしているという感覚は無かった
「さっ!いざゴハン!」
クルはガタガタのテーブルだが、まだ使えたのでそのまま使って料理を並べた
ルードはゴソゴソしていた
「おっとと、これは鮮度が命だからな。ほら」
少し歪な容器だが並々と注がれた液体
「ん?ワイン?ぜいたくすぎちゃうのもねー、とか言いつつ頑張ったし飲んじゃうー♪」
「うわー身体がぽかぽかするーていうかあっつい」
「あんたもワイン?」
「あんた、も?たしかに俺はここの地下樽で見つけたワインだけど」
「え?わたしは?」
「2人で酔っ払う訳にはいかないだろ。クルのは大猿の血だよ」
「おい!」
「大丈夫だよ、毒素はないどころか眠気なんて近寄らないくらいの滋養があるぞ」
「うぉおおおお、たしかにみなぎるけど!」
「ここが安全かまだ分からないからな、特に初日の今日は」
-真夜中-
「ルード、起きてる?」
「ん?」
「白昼夢病の話の続き!てかホント全く眠れないんだけど」
「ん、ああ、そだなー…これ実際には俺もよく分からないんだよ」
ルードは手を見つめながらのんびりと応えた
「だが、確信はある。デバイスはまだ存在してる。恐らくあの雪山」
クルは黙りこくっていた
「恐らくトレース技術はこの中においては完璧だ。けど、持ち出せないアイテムがあるのも、デバイス類が一つ残らず回収されているのもおかしいだろ?それはトレースしたものを自由にできる空間は今の技術はこの中が精一杯。そして、その取りこぼしがあるとしたら、雪山」
ルードは続けた
「ここには野生の動物の死体もしっかりと当時のままセットされていた。人間もな。だとしたら雪山で遭難した人間のデバイスがそもそもなかったものとして最も取りこぼしている可能性が高い」
クルはようやく口を開いた
「…デバイス自体は自分で位置を教える発信機みたいなものよ?もしあるとしたら故障してるだろうし、それも使えないデバイスなんて手に入れても持ち出せないだろうし、意味なんて」
「意味はある。そのためにミッションは3日以内に終わらせる。そしてデバイスの捜索と修理に4日充てる」
クルは笑った
「はーあんたがそういうならそうなんでしょうね。まあ目的は変わったけど、いい暇つぶしになりそうだわ」