いざ実践へ
「やばっ、忘れてた」
「あーあ、話はまた気が向いたらな」
白衣の女性の表情は険しかった
「ルード、あなたは食事の摂生を課したはずだけど、昼食は?」
ルードと呼ばれた少年はばつが悪そうな顔で答えた
「シチューとブレッドとスクランブルエッグ…」
「固形物はもうこの時期から控えなさいと伝えたはずだけど?」
「クルは?」
クルと呼ばれた少女は飄々としていた
「エナジーゼリーとビーフテイストのスープよ」
「生まれたときから点滴で十分の人間とは幸福を感じるものが違うんだよ」
白衣の女性の表情は険しいままだった
「ルード、自身で摂生出来ないのならメディカルルームで手伝いましょうか?」
ルードの表情は一変した
「いや、先生言い訳してすみませんでした。」
「よろしい。積み荷の関係上、滞在期間のほとんどは固形物を食べられないのだから。特にルード、あなただって探査経験者でも今回みたいな超少数での地球探査は初でしょ」
「分かってるよ先生。だから今日が食べ納めってやつ」
ルードは手すりに寄りかかった
「前回よりも状況が悪化してたら食べ物の確保なんて出来ないだろうし」
先生と呼ばれた人物はため息をついた
「…まあ採取が終われば、有害か分かる簡易キットがあるから頑張って食べられる固形物を探しなさいな」
「それとクル、貴女は筋肉の量の保持は適正だけど、環境下における適切な体温変化が遅いわね」
「ぐっ…」
「反射的な体温上下だけではダメ。意識でも操る力を培うのよ」
「わ、私は言い訳しませんから。分かりまーした」
「とにかくメディカルルームに行くわよ、胃の中の物も摘出してあげるわ。さっ」
「げっ」
ルードはあからさまに嫌な顔をした
先生と呼ばれていた女医は振り返るとハッとした表情で足を止めた
「お、これは助け舟か、どうなのか…」
「ルンナ先生、お二人をお借りしても?」
「ケイ第二補佐…例のですか?」
「そうだね、特にクルは実践経験は多くさせないといけないからね」
「…分かりました。通常通りのメディカルチェックは済ませてあります。そちらの作戦を優先で構いません」
「ありがとう、恩にきるよ」