覚醒するのは殺戮の心
この話で序章は最後です!
「いたぞ、あの魔女だ!」
「殺せ!」
「リルさんを傷つけたあの魔女を八つ裂きにしろ!」
僕を見た騎士の連中は皆、罵詈雑言を放ち殺意に満ちていたが。
僕は言葉を喋る肉の塊にしか見えなかった。殺意と狂気に心を囚われた時点で人ではなく、獣なのだ。そんな害獣を野放しにしておけば後からが面倒だ。
「決めた、間違っているのは世界だ。全員殺す。」
僕は冷酷無比な声音で言った。クラリスの心臓を食らった瞬間、僕も獣となったのだ。獣の間違いは獣が正す。
目をつぶり、植物と金属の魔方陣を配合した複合魔法を作成した。
思いの他魔法の扱い方が分かりやすくなり。手に取るように魔法を練った。
「出来た。」
そう言うとおもむろに、騎士の方に歩みを進めた。槍の射的距離にわざわざ自分から入った雑魚だと騎士は勘違いしたのだろう。だが、僕は止まっているような槍をそっとよけて、騎士の胴体に手をそっと触れた。その瞬間、火と水の魔法を一点に集中させた。
「えっ、、、」
騎士の腰から上は爆発し、跡形も無くなった。
全ての騎士が腰を抜かしたり、動揺していた。だが、ここからが本番なのだ。
腰から上が吹き飛んだ騎士の死体から芽が発芽した。勢いよく成長して桜の木になった。
「仲間から発芽した桜に、切り刻まれるといい。」
満開になった瞬間に、風の魔法を放った。
そうすると、桜は勢いよく舞い、騎士の生命を刈り取って行った。
15名は出血多量で数十分も掛からず死に至り。
26名は重軽傷で虫の息。
39名は逃亡しようとしたが、結界を張って逃げられなくして、ほとんどが死亡。
とりあえず余興が終わった。正直見ていてなにも思わなくなった。
残った騎士は心に深い傷を与えられたはずだ。
周りを見ると、血の霧が漂っていた。ほとんどが血を出し、失禁し、気絶し、死に至るこの場を支配しているのは僕だった。
とりあえず、この場所が邪魔だと思い、消す事にした、、、跡形も無く。
だが、脳裏にこんな事も浮かんだ。このままここを消し飛ばせば、この場所に入れられた魔女や、忌まわしいと迫害されて来た人達の生命はどうなる?
無論、死ぬだろう。罪もない、世界から嫌われるだけで殺されるのは理不尽だと思った。
そう思うと、行動に移した。まず、牢獄にいる人を一人残らず、ランダムに転移させた。かなりの負担だったのか、鼻血を少し出してしまった。
だが、全員の転送が終わり、後は屍と、戦えない騎士だけだ。
頭の中でイメージをした、全属性を少しずつ含んだ魔方陣を用意し、それを放った。
目の前が、虹色の光に照らされ、消失した。かなり大規模の爆風だったのか、近くの森の木葉がほとんど飛ばされた。
それと共に、代償が僕の体を蝕んだ。せっかく復元した腕がぼろぼろに崩れた。
そして、少し紫がかった鼻血が大量に出てきた。
そして、理解が追い付いた、やはり僕は人間からかけ離れた魔女になっているという理解だ。
正直怖かった、自分が力に飲まれて罪の無い人々を殺めてしまうことが。
魔法を酷使するたび、体が限界を迎えて崩壊し、治してを繰り返すのも。
でも、必ず世界を変えると、クラリスと約束をしたのだから。
僕に任せて、旅立ったクラリスの願いと僕自身の願いを叶える為に。
そして僕は、北方にあるエルフ領地の森へと向かい、監獄から姿を消した。
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馬の走る音が、監獄に向かっていた。
馬の上に乗っていたのは、顔を覆面で隠した物達だった。
そうすると、目の前が虹色の光と強風に煽られた。
「くっ、総員隊列を乱すな!急げ!急いで監獄に向かうぞ!」
そうやって全速力で走る馬の力にかかれば、数分も掛からず監獄に着いた。
「なんだ、これは。」
覆面を着た物達は、全員が驚き、動揺していた。
そこにあったはずの監獄は、焼け野原になっていた。近くからは、人肉の焦げた匂いと、焼けた死体が転がっていた。
「総員、生存確認をしろ!」
辺りをくまなく探したが、生存者はどこにも見当たらない。
「くそ!後一歩遅かったか。」
覆面を地面に投げつけたのは、耳が長く青髪の男だった。
―――――序章 魔女になった少年 完――――――
見ていただき本当にありがとうございます!
いやぁ、序章が終わって次は一章です!
正直、序章で一度切り上げて新年から投稿するのも良かったのですが、創作が楽しく、趣味の範囲でやらさせていただきます!