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最果ての魔女 ~魔女となった少年の時を超えた復讐の旅~  作者: くぼってぃー
エルフの森と目指した英雄
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突破口への賭け

「──はっ、はっ……もう一回だリュウメイ」


 先程受けた訳の分からない痛みの記憶がイヴァンを蝕んでいるが、それでも無謀かつ無意味に挑戦しようとする。

 前回、死闘を繰り広げたアルテミスに受けた肉体的な苦痛は、痛みこそましになったものの完全に疲労を取り除く事は困難を極めた。


「はぁ、何で敗北したあんたが話の主導権を握ろうとしてるの? ウチに不利(ハンデ)を貰ったあんたに興味も薄れた……命は取らへんから早いとこ帰るがよろし」


 リュウメイは最初に見せたあの顔に戻り、氷で出来た寝具に横たわる。

 彼女から溢れ出した殺気は瞬く間に消え去って行き、イヴァンに対して興味を完全に無くしたリュウメイは再び長い眠りに着こうと──


「──なら、この鬼ごっこの攻略法を見つけたと言うのならどうする?」

「……今、なんやて?」


 もちろん、今のは(ブラフ)であり、僕がこれまでの経験から身に付けた話術の一つでもある。

 僕は、良く騙される事があったがそのほとんどは、僕にとって有益な物もしくは興味を示す物である。

 人は、自分にとって好都合かつ、現実味を帯びた話に食い付きやすい。そして、相手を惹き付ける事が出来れば、後は少しずつ罠に嵌めていけばいい。


「この遊戯には、不可解な点がいくつかある。 一つは鬼ごっこにとって貴女の提示したハンデが致命的過ぎる点だ」

「────」


 リュウメイは押し黙り、僕の話に傾聴する。

 

「そやな、確かにその通りやこの遊戯の根幹となる目で相手を見つけ出し追いかける。ウチは負けが確定するほどのハンデを背負っていたのに、ものの数秒であんたに勝った。確かに可笑しい話やねぇ」


「そう、つまり相手が確実に勝てる程のハンデを背負って勝つという事は、異常なまでの自信がある人か只の馬鹿なのか。──それともハンデを物ともしない確実に勝てる方法があるのかのどれか」


「──素晴らしいわ。あんたさんの事を期待外れと言った事を詫びさせて貰うわ」


 先程までの死んだ目からは想像がつかないほど目がギラギラしたリュウメイは、先程以上の感情の高ぶりと、殺意を露にしていた。


「改めて、『魂の支配人』リュウメイがあんたの無謀な再戦を認めるわ。──宜しくな、()()()と同じ力を秘めた魔女さん」


 リュウメイの言う事に深い意味はないようだか『あの方?』というフレーズが少しイヴァンの中で引っ掛かったが、出任せで言っていた攻略法も少しずつではあるが糸口が見えて来たのでそちらに集中をすることにした。

 

「──それじゃあ、遊戯スタートや」


 イヴァンは、再び目を瞑ったリュウメイから遠く離れるように全速力で走り思考を張り巡らす余裕を作ろうとする。


「……九……十……じゃあ、見つけたるわ魔女さん」


 リュウメイは目を瞑ったままであったが、こちらの位置を正確に射止め追いかけてくる。

 氷の壁は、まるで見えているかのようにスルリと走り抜け、カウントが終わってから五秒後にはイヴァンと数十メートル位の距離にリュウメイは追い付いてくる。


「──嘘だろ……あれだけの距離があったのに、もうここまで来たのか」

「おや、走っていてもウチからは振り切れへんよ? もしかしてあんたさんは、ウチを欺こうとでも考えてはったの?」


 彼女は的確にこちらの意図を読み、こちらへと近づいてくる。


「だとしたら、今度は半分の魂を消させてもらいましょか」

「──っ!」


 『魂の支配人』と名乗っていた程だ、相手の魂を奪いとるなど造作も無いことだろう。捕まれば、魂を削り取られ先程の激痛を感じさせられる事など目に見えている。

 そんな恐怖を余所に彼女は、走り抜けついにはイヴァンに後少しで手の届く所まで近づいて来ていた。


「──さぁ、魔女さんどうするの?」




※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


──時刻はイヴァンがアルテミスを倒した数刻後


「──やっぱり空気が美味しいね、エルフの里を守る森林の近くってのは」


 長身で、全身黄金と宝石がちりばめられた鎧を着た金髪の男がそこに立っていた。

 彼の身なりは何処から見たとしても容姿端麗の神のもたらした奇跡に近しい美貌を持つ健康的でなに不自由の無い生活をしている事を感じ取れるものであった。


「とりあえず……おーい、宮廷魔導師達出番が来たからお願いね」


 男が身振りと共に怠そうな口調で後ろにいる法衣を着た者達を呼びつける。

 法衣を着た者は、半数以上が顔立ちが良い女であり、中でも赤い法衣を着た魔導師長は、男に負けず劣らずの美貌を持つものであった。


「──とりあえず、目の前にある木邪魔だから燃やして」

「了解いたしました、『剣聖』レグス・ギレイガ様」


 宮廷魔導師達はそれぞれ、炎の魔方陣に魔力を最大限に近しい程注ぎ始める。

 その姿は、まるで何かに怯え、生殺与奪権を握りしめられているような恐怖を露にする表情である。


「「「極滅火玉(デルガ・フレイム)!!」」」


 魔方陣から放たれる魔法は、どれも極大の威力と火力を秘めており、火玉は一つに集められ、森を燃やし尽く──


「「──何で!?」」

「「何故木に近づいた炎が打ち消されるの!?」」


 魔導師達は、疑問と怯えに全員が取り乱していた。

 魔法が行使出来ないだけで、ほぼ全ての魔導師が世界の終わりのような表情と叫びで、阿鼻叫喚の地獄と化してしまった。


「──うん、いけないね……」


 長身の男は少しも笑みと余裕を崩さないまま魔導師達を見ている。

 彼の近くにいた魔導師長は、周りにいる魔導師達よりかは、取り乱していなかったが、明らかに顔色が悪くなっていた。


「も、申し訳ございません! 今すぐに魔導師達にもう一度魔法を行使させますので……」

「──いや、もう必要ないよ」


 長身の男は先程の場所から数歩前に歩き、腰にある異形の剣に手を掛ける。

 その剣の柄には独特の飾りと古い文字が描かれており、剣の異常さに拍車をかけていた。


「──じゃあ、さようなら」

「────えっ?」


 それは、刹那の斬撃であった。

 長身の男が剣を鞘から思いっきり抜き出す。すると、その先にいた魔導師達は上半身と下半身が分離し、奥にある森林の木々は軒並み削り取られていた。

 魔導師全員が切られた事を自覚出来ずにおり、自らの決定された死を自覚するのに三秒程かかっていた。


「──よし、じゃあ騎士君達はあそこに散らばった綺麗な女の死に体をいくつか拾って来て」

「「はっ!」」


 騎士達は黙々と目の前の男が殺した魔導師達の顔立ちを確認して、良ければ持っていた袋に入れ、男や顔が判別出来ない死体は放り投げる。


「ある程度、可愛い女は手に入れたし、王からの命令だ急ぐぞ」

「「了解しました!」」

「あっ、そうだ! エルフの中でかなりの美女がいたら捕まえて俺の前に連れて来い」

「「はっ!」」



「そうだな、よし! ──その他のエルフは犯しても殺しても構わないぞ」



──この長身の男キライ。

どうもくぼってぃーです。

さぁ、2章も佳境に入りました!

この先どのような展開になるのか書いている私もワクワクしてます!

作品が良いと思ったら評価やブックマークを宜しくお願いいたします!

(モチベーションに繋がります!!)

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