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最果ての魔女 ~魔女となった少年の時を超えた復讐の旅~  作者: くぼってぃー
エルフの森と目指した英雄
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魂の支配人

……すみません遅れ過ぎました

「──なに、ちょっとした『遊戯』や気にする事はない」



 リュウメイの放つオーラは、本人を主張する程の倦怠感に負けず劣らずの殺気を混じらせる力があり、その場を完全に手中に納める程の技量と恐怖を植え付けさせた。



「『遊戯』って……一体何をするんだ?」



 どちらにしてもリュウメイは化け物という事は、分かっているならば戦闘を避けて先程の傷を治癒するのに徹した方が何かと都合が良い。それならリュウメイの言う『遊戯』をした方が確実に次の階層へと進む事が出来る。



「──じゃあ、鬼ごっこをウチとしてもらいましょか」



 リュウメイは遊びの種目を宣言した後、氷によって作られた横長の椅子から立ち上がり、鈍りきった体を伸ばして準備を始めていた。

 動きを見ても、久しぶりの運動なのか分からないが、あらゆる関節から鈍い音を立てて構えていた。



「鬼ごっこ? 貴女のしたい遊びは鬼ごっこなのか?」



 竜種は『危険』を求める事が多い為にもっと、スリルがある遊びをするのかと思っていたが身構えていた自分が情けなく感じてしまった。



「そうや、ウチは久しぶりの運動ってのもあるし、最近気分が優れないから簡単に楽しめたら良いと思って鬼ごっこにしたんよ」



 先程からの準備運動を見て明らかに体を動かしていない事は、分かっていたので早く次の階層に行く事ばかりを考えていたが、相変わらずリュウメイの顔からは、倦怠感と殺意だけが感じ取れていた。



「──じゃあ、始めよか。『魂の支配人(ソウル・プリズナー)』リュウメイの名において『秩序(ラース)』を使いこの場に宣言する。この『遊戯』は死人の出ない物とし、これを破る物は何人たりとも魂を焼ききられ、()()()へと誘われる事を禁ずる。 また、『(ルール)』に背いた場合は、身体に対しての罰則を与える」



 リュウメイは、自らの『秩序』を使い魔方陣に対して『契約の秩序』を使用する。

 リュウメイは、鬼ごっこで自らが死ぬ事は無いように保険を掛けたのか、それともイヴァンに早く死なれては困るのかどちらかであったが、それを知るのはリュウメイただ一人であった。



「これで、この場でのあらゆる『殺生』という概念は禁止されたから気をつけるがよろし。」

「ああ、分かった。それじゃあ、始めようか、『秩序』に乗っ取った鬼ごっこを」

「ええ、始めましょか鬼ごっこ……」



 リュウメイは始めて不敵な少し笑みを浮かべ、指を軽く鳴らし階層全体に響き渡らせる。

 指から発せられた音は空間を徐々に凍結させて行き、最終的には数百メートル以上に渡った床をほぼ全て凍土に染め上げた。

 凍土に染められた床からは壁が現れ、階層は迷路の様な形状へと変化を遂げてぉく。



「これで、見栄えも良くなった。ウチは久しぶりに楽しめる事を期待してるよ」

「あぁ、やっぱり魔女になった今なら分かる気がする。僕も体全体がピリピリする程の興奮と、絶望感を感じるよ」

「そう、それは良かった。 ウチが探して捕まえるから、一分間の間逃げ切る事が出来たらあんたの勝ち。 そやな、ハンデとして目を(つぶ)ってあんたを探したるわ」



 場の空気が変わり過ぎて、スライムは気を失っているが一分間逃げ切った後、ひっぱたいて起こしてやろうと考えた。

 ハンデもあるし、この勝負は直ぐに勝敗を決するはずと考えたイヴァンは、必死に身を隠しながら逃げ切ることだけを考えていた。



「それじゃ、『遊戯』スタート。十秒後に捕まえに行くから、隠れるなり走り続けて振り切るなり、好きなの選んでや」



 目を瞑ったリュウメイは不敵な笑みを崩さずにイヴァンに言う。

 しかし、すでにイヴァンは迷路を走り抜け奥の方にある縦穴のような所に隠れていた。



「──九……十……じゃあ、探しに行くで」



 僕とリュウメイの距離はおおよそ数百メートルあり、普通に探しても一分間という僅かな時間では間違いなく勝負は決してしまう。そんな無理難題に近しいルールを設定したのだから勝算があるはず、『遊戯』が終了するまではこの縦穴の中で待機していた方が──



「──見ぃつけた」



 それは一瞬の事であった。

 イヴァンが隠れている縦穴をリュウメイは目を瞑ったままの状態で探し当てた。普通ならば奇跡を信じる程の確率を平然とこなしイヴァンを約十一秒という規格外の早さで見つけ出したのであった。



「……なっ! ガアァァァァッッッ!」



 それは意識が完全に焼ききれてしまう程の激痛であった。

 肉体的な疲労を伴う傷や外傷の痛みを軽々しく越え脳みそが煮えたぎる位の業火にその身を賭すに等しい物である。

 痛みとは肉体の危険を知らせる為に命令される感覚であるが、肉体に関しての外傷は見受けられず、ゆっくりと意識が剥奪されて──



「──あんたの力と工夫はこんな物か」



 意識の終わりを迎える事は無く、数秒前まで我が身を焼いていた痛みはあっさりと消えていった。

 全身からは冷や汗が流れ出し、痛みの壮絶さをひしひしと伝える物であったが、当人は痛みに対する記憶が嘘のように消えていった。



「……つまらんわ」



 リュウメイは、今までに見せた顔の中でも一際不機嫌そうな顔を見せつつ『空間移動(ディア・ポータル)』を起動させて、イヴァンと共にスライムのいる最初の地点へと戻る。



「正直、期待外れもええとこや! これじゃあいつまでも経ってもここを通すわけにはいかんわ」



 リュウメイの不機嫌そうな顔からは怒りの表情が露になり、イヴァンは恐怖すらも感じてしまう程の殺気であった。

 リュウメイの怒りに触れた理由は自分の不甲斐なさにもあった。

 隠れていれば見つかる事の無い相手と良く錯覚できた物であった。イヴァンは自分の愚かしさを呪い続けるだろう。



 

──そう、この鬼ごっこの攻略方法を見つけるまでは






どうも、くぼってぃーです……遅れてすみません。

理由は修学旅行が終わり次第話しますのでお待ちください。

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