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最果ての魔女 ~魔女となった少年の時を超えた復讐の旅~  作者: くぼってぃー
エルフの森と目指した英雄
24/27

停止する理と改心の砲撃

今回はバトル描写が多めです。


──金剛鉄(オリハルゴン)は現存する金属素材では最強格と言われる程の硬度、そして加工する際の柔軟性は匠でも喉から手が出るほどの品であった。

 

─────────────────────────────────────


──第一階層──


 スライムはその身軽さと柔軟性で神殿にある宝物や素材を物色していた。


「──────!(イヴァンこれって……!)」


 スライムが壁の素材に重視しているのを見て壁をよく観察する。すると、少しではあるが金剛鉄が含まれている事に気がつく。

 本来であればこのように混ぜ物として使うべきでは無いが、魔物等がいるとなれば話は別である。


「金剛鉄か……壁に混ぜ込まれているし、取り出すのは難しいな……」


「────!(どうやら私の出番が来たようだね!)」


 自信を持つスライムの顔を眺めていると、おもむろに壁へとくっついたのである。壁からは金剛鉄と思われるキラキラ光る粒がスライムの体へと吸われて行った。


「えっ!? ちょ、スライム何やって……」


「────!(うーんっ、ぺっ!)」


 スライムが少しの汗をかきながら震える。それと同時に粒であった金剛鉄はスライムの体内の中心に集まっていく。そしてスライムからは金剛鉄の塊が排出された。


「これは……あんな小さな金剛鉄をここまでの大粒に集めるなんて」


「────? (誉めてもらって……良いんだよ?)」


 スライムは少し息を切らしながら話始める。かなり体力の消費が激しいのだろうがすぐにスライムは体制を不安定な液状から固体に戻した。


「これで、とりあえず仮一つは返したね」


「─────。(そんな……結構頑張ったのに。イヴァンのバカ、仮は全部返済ね)」


「この野郎! 調子に乗るな!」


 調子に乗って有頂天になっているスライムに秘伝のグリグリと本気のパンチを繰り出してやった。


────────────────────────────────────


──まさか金剛鉄が此所で役に立つとは思っていなかった。この戦況を変えるのはさっき入手した金剛鉄とモンスターを焼いた時に偶然的に出来た烈花、そして里に訪れた際に向けられた棒であった。


「スライム! 金剛鉄は筒状に加工する事は可能か?」


「─────!(多分できる! でもこの量だと長い物は作れないよ!)」


「それで良い! 烈花はこちらに渡してくれ!」


『なにやら面白そうな事をするみたいだけど邪魔をさせて貰うよ!』


 アルテミスが杖を掲げる。そうすると細々とした骨身からは予想が出来ない程のパワーで空を殴る。そこから出た真空波はスライムにめがけて穿たれる。

 しかし、その真空波はスライムに当たる直前でイヴァンが相殺する。


「──くっ!」


 拳が空を切る素振りでこの威力。本気で身体強化を重ねられたら全てが破壊されかねない程のパワーであったがなんとかスライムへの攻撃を遮断した。


『はっはっは! どうやら俺をもっと楽しませてくれるみたいだね!』


「─────!(イヴァン! 烈花の方は準備が出来たよ!)」


「よし! 今すぐ僕に渡してくれ!」


 後方へと飛翔するイヴァンはスライムから烈花を受け取り強く握りしめる。すると列花はゆっくりと赤い光を放ちながら熱を高めていく。


「─────!(金剛鉄の加工には少し時間がかかりそう! 持ちこたえて!)」


「わかった! そっちは何があっても加工する手を止めないで!」


 イヴァンは自らに肉体防御と治癒を掛ける。しかし、その魔方陣の生成を始める前にアルテミスは拳で真空波を作り出す。そしてそれはイヴァンの身体を容赦なく切りつける。


「ぐっ! あっ……かはっ!」


『言ったはずだ。邪魔させて貰うと!』


 何度も空を切りつけいたぶるようにイヴァンを切り裂く。限り無い暴力と言って良いほどの攻撃であったがそれでもイヴァンは希望の炎を目に輝かせていた。


『それで終わりならさっさと倒れれば良いよ! 君がクラリス様の権能を所持していたのだから期待していたのだ! だがそれも面目期待はずれな物だったようだ!』


 諦めろ、倒れてしまえという甘美な言葉をアルテミスは放つ。期待に添えるかどうかはイヴァン次第である。それでも挫ける事は出来ない、友との約束があるから、その約束さえ違えてしまうのなら彼と自らが望まない結果を残してしまう。


「約束……したんだ……」


『どんな約束だろうが知らん! お前は負けて俺は永遠の退屈と憂鬱が確定しているのだからな!』


「彼との……最初で……最後の約束。これが違えてしまえば……彼に見せられる面が無くなる……」


『ほざけ! お前の力量はもう知れているのだからいい加減諦めて死ね!』


「だから! 最後くらい運命に抗ってみせる……それしか出来ないんだ!」


 アルテミスは嫌気が差したのかイヴァンに近づき殴り続ける。地面には出血と体液、そして汗が流れ出している。それでもイヴァンは諦めずにアルテミスの攻撃を受け続ける。


──意識が飛びかけた瞬間であった。


「──────!(イヴァン! 金剛鉄の加工が完了したよ!)」


 スライムは金剛鉄の棒をイヴァンへと投げつける。そして死にかけていたイヴァンは狂喜とも言える笑みで金剛鉄の棒を受けとる。

 イヴァンは棒を持ちながら超高速で移動する。その早さは先程とは攻撃を受け続けた者の動きでは無かった。


『何をしても無駄な事! 体力が尽きた瞬間お前達の完全なる敗北が決まるのだ!』


 アルテミスは勝ち誇ったかのように笑みを浮かべながら怒号を響かせていたが、イヴァンは相も変わらず高速に移動を続ける。


「──それはどうかな」


 イヴァンは天井近くまで浮いており、アルテミスとスライムを眺めていた。その姿は気高い女性のような容姿であったが、空間が少しずつ歪んでいくのをスライムは感じた。


『空に逃げたなら真空波は届かないとでも思ったのか!? それなら間抜けにも程があるぞ!』


 アルテミスが拳を振り上げて今までに無いほどの威力が籠った真空波を繰り出す。当たれば間違いなく身体が切断される程の絶大な威力を持った一撃であった。


 だが──。


──ボスン!


 イヴァンの目の前まで進んだ真空波は鈍い音を立て、その進撃を止めたのであった。その姿にアルテミスは「ありえない!」という顔をしながら目を丸くしていた。


『何故だ……何故当たらん!?』


 アルテミスは何度も空を切り裂き、真空波を作り出している。しかしそれもイヴァンにはかすり傷すら負わせる事も無く音を立て消えていく。


『はぁはぁ……くそ! 何故だ俺は本気で真空波を作り出しているはずだ!』


「もう少し目を凝らして見てみたら?」


 そう言うとイヴァンの周りに目を集中させたアルテミスは驚愕する。


『まさか……空気か? 空気を固めたのか!?』


「ご名答。 周囲にあった空気を固め、それを漂わせてるんだ」


 イヴァンは、高速移動する際に生じる空気の圧を固めて球体にした。そうすることで最強の盾を作っていたのだ。


「──だが、本番はここからだ……」


 イヴァンは冷や汗をかきながら不適な笑みを浮かべる。そして握っている拳は炎を纏い赤いオーラがはち切れんばかりに凝縮されている。


『その光……もしや列花に魔力を収縮させたのか?』


「そう、烈花は本来魔力を吸収してそれを炎に変換する花だからな……」


 イヴァンが手のひらを開けると大粒の球体が乗っていた。その球体はイヴァンの手のひらを黒焦げにするほどの高熱とオーラを押さえきれない程の絶大な出力を連想させる物である。

 イヴァンは金剛鉄で作られた筒に、烈花で作られた球体を押し込む。金剛鉄の筒はイヴァンの魔力を吸収し続けた結果強大な熱を持ち、溶岩さえ凌ぐほどの熱さになっていた。


『それを俺に放つつもりか? 言ったはずだお前には使えない秩序(ラース)の力が私に有ることを! それを踏まえての愚行か?』


 アルテミスの持つ秩序ははっきり言って反則級の物である。しかしそれは秩序が使えない者の場合であった。今のイヴァンには心に通じる道を代償とした『秩序』の構築を可能にさせる技量があった。

 イヴァンは銃身をアルテミスの頭に合わせて起爆用の空気の塊を金剛鉄の中に詰め込んだ。熱が反応して一気に温度上昇が加速していく。


「──食らえ……魔力式(ファイアゼル)加速砲弾(テルミット)!」


 イヴァン自身が反動でぶっ飛んでしまうほどの威力を持った弾丸は全てを貫こうと前進を続ける。だが──


──ギュイイン


 途中で『秩序』の壁が弾のいく末を止めるのである。その真実は周りにいる全ての物が絶望する敗北が決定した瞬間であった……





秩序(ラース)静止する(クロノウェア)刹那の理(モーメント)……」



 イヴァンがそう言い放つと『秩序』の術式や全ての身体強化魔法が刹那の間のみ世の理から外れる。そして、理から外れた『秩序』はその効力を失う。


『馬鹿なっ! お前は『秩序』が使えないばず! 何故だ何故なのだ!』


 イヴァンが放つ弾丸がアルテミスの眉間を貫通させ、漂った空気の塊が連鎖的な爆発を起こす。その炎は全てを肺へと導く程の威力を持ち、アルテミスの断末魔と共に火力を増して行った。


「せめて安らかに眠れ……アルテミス」


─────────────────────────────────────


『熱い! 身体が焼ける! 痛い痛い痛い痛い! 辛い辛い辛い辛い!』


 炎の中でアルテミスはその身をバタバタとしながら喘いでいた。生への執着によってかろうじてアルテミスの命は繋がれていたが時間の問題でもあった。


『くそっ! あの魔女のせいだ! クラリス様から頂いた権能を行使しても勝てなかった! 何故なのだ! 俺が最弱だからか!?』


 身震いしながらも炎をさ迷うがそろそろ生命の終わりを迎えつつあるアルテミスであった。


──もうゆっくり休め……アルテミス


『その声……まさか!』


 死にかけのアルテミスであったが、その声を聞きつけると身体から元気が涌き出る程の回復力を見せた。


『クラリス様! なんと、よくご無事で。俺は先程侮って魔女風情に遅れを取りましたが必ず倒して見せます! 貴方様の名誉にかけて』


 先程まで痛みで苦しみ死にかけの姿をさらしていたアルテミスの目はギラギラと生気に満ち溢れていた。


「──アルテミス……」


『はい! クラリス様何かご不満でもありましたか? あの魔女はクラリス様を衰弱させ恐らく殺した風に思ったのでしょうが、クラリス様が此所にいるという事は貴方様が帰還したという事で……』


「──アルテミス!」


 先程の穏和な口調や態度から一転してかなり厳しい口調でアルテミスに怒りを向けた。


「──アルテミス……君は良く働いた……だが働き過ぎだ少し休め」


『わっ……分かりました』


 そしてアルテミスは眠る。死んだような眠りにつきはじめる。彼の肉体は少しずつ燃えて灰に帰して行き。ついには全てが塵になって消えていった。



──彼は最後まで弱いながらも忠実にやってくれていた愛する部下だよ。



こんにちは、くぼってぃーです!

今回のお話、アルテミスとイヴァンの戦いはいかがでしたか?

今日は少し投稿時刻が早いですが特に理由はありません!

※もしかしたら今日はもう一本投稿するかも……まぁ書け次第ですけどね。


追記 アルテミアからアルテミスに改名させて貰いましたすみません。

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