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94 魂喰らい(ソウルイーター)と魂の救済者(ソウルセイバー)

 多くの人の命を奪った魔剣魂喰らい(ソウルイーター)、それは盗賊ボスだった『アジト』が持っていた恐怖の象徴である。

 邪神に捧げる為にこの剣で斬られて死んだ者は死してなお魂を呪縛される魔剣だった。

 しかしその剣はもう二度と呪われた力を使う事は無い。

 何故ならエリアと私たち全員の魔力でレザレクションを使った事により、魔剣は浄化されたからだ。


「ユ……カ……」

「エリア! もういい、休んでるんだ」


 エリアは私の腕の中に倒れ込む形で眠ってしまった。

 ルームがその姿を見て何とも微妙な複雑な顔をしていた、なにか不満な事があったのだろうか……。


「ルーム? 一体どうしたんだ?」

「なんでもありませんわ! ユカ様はエリア様の事をお世話しててくださいませっ!!」


 やはりルームが不機嫌だ、後で何か彼女が喜ぶものを渡してあげよう。

 ルームから少し離れた場所にいたホームは先ほどの剣を見ていた。


「ユカ様、これは?」

「多分……魂喰らい(ソウルイーター)だね」

「え?」


 魂喰らい(ソウルイーター)は元々漆黒の刀身だった、しかし今目の前に転がっている一振りの剣は純白の刀身を光らせていた。


「綺麗……」

「ユカ様……これ触っても大丈夫でしょうか?」

「う……うん、多分もう大丈夫だよ」


 ホームは地面に転がっていた純白の刀身の剣を拾い上げた。


「! これは!」


 ホームは純白の刀身の剣を見つめていた。


「凄い……吸い込まれそうな剣だ」


 吸い込まれそうという表現は間違っていないだろう、現にこの剣は幾多の魂を啜ってきた魔剣である。


「だが! これは魔剣だ! 多くの人を殺めた剣だったんだ」


 ホームは騎士として剣の素晴らしさは認めつつもこの剣を手にすると自身もアジトのような殺人鬼になってしまうのではという不安を感じていたのだろう。


「ホーム、これはもうエリアがレザレクションで浄化してくれたんだ、魔剣じゃないよ」

「ユカ様、それはそうですが……」


 この剣を使うべきか、それとも封印するべきか。

 私には遺跡の剣(エクスキサーチ)があるのでこの剣は必要ないが、今一番悩んでいるのは先祖伝来の剣を折ってしまったホームである。

 レジデンス家に代々伝わる剣、あの剣は折れたとはいえその辺りで簡単に手に入るものではない、価値でいえばSクラスといえよう。

 そういう事から考えるとホームが喉から手が出るほど剣が欲しいのも納得である。


「ホームさん……皆さんが言っています。貴方にこの剣を使ってほしいと」

「エリアは浄化された魂達の声を聞いたらしい。その声でこの剣を正しく使ってほしいと願われたのだそうだ」

「ユカ様……見習い騎士の僕がこの剣を使うだけの資格があると思いますか?」

「問題ないよ、ホームなら正しく使ってくれる」


 ホームはまだ悩んでいた。

 そして……すこし考えたホームの中で結論が出たようだ。


「ユカ様! 僕決めました、この剣を使います!!」

「ホーム、決心したんだね」

「はい、確かにこの剣はかつて幾多の魂を奪ってきた魔剣です、しかしそれならボクが使う事でそれ以上の多くの人々の命を救ってあげたい!」


 ホームは力強い決心を目で見せていた。

 そしてホームはぐっと力強く握った純白の剣を振るった、ビュンと澄んだ音が辺りに響いた。


「凄い剣だ……これが……魂喰らい(ソウルイーター)が僕の剣になるのか」

「ホーム。その魂喰らい(ソウルイーター)だけど、もうその名前はその剣にふさわしくないと思うんだ。君が新たな名前を付けてみたらどうかな」

「そうですね、僕が名前を……(ソウル)……の救済者(セイバー)はどうかな?」

「いい名前だ!」

「そうですね! これから多くの人達の命を助ける剣、魂の救済者(ソウルセイバー)! これが僕の剣だ!」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 後の時代の伝説に語られる、救世主と共に旅をした剣聖と称えられし英雄『ホーム・レジデンス大公』彼が使っていた愛剣『魂の救済者(ソウルセイバー)』は幾多の人々の命を救い、英雄ホームの名と共に人々に語り継がれたのだ。

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