934 次に向かうべきは……?
結局僕のスキルの正体って何なのだろうか?
ソウイチロウさんが言うには、原子という小さな粒で世界は出来ていて、その原子変換でその場所に物を作り出す力、そしてボクが見た事のある物を再現できるというのが一番答えに近いんだろうけど。
それでボクの見ている方向に作る事が出来るので、ボクが横を向いているならその横の方にマップチェンジで壁のように地面を造れるという話だ。
なるほど、それだと今までの不思議な使い方が説明できる。
ボク達が高い闇と呼ばれる人工島アルカディアで巨大な鏡を壊してしまった時、ボクはマップチェンジのスキルでその鏡を直す事が出来た。
しかもその時は気が付いてなかったが、あの時、ボクは地面とは別の方向を向いていたような気がする。
つまり、このスキルを大魔女エントラ様のいう重力を切り替える魔法と組み合わせると、高い塔でも地面を歩くように移動する事が出来、その方向に地面を造れるという事か。
これが使いこなせれば、地面を極端にせり上げる事無く、壁を両面に作る事も出来る。
以前側面を高くして敵を挟み込んで倒したやり方をもっと簡単に再現できるって事か。
ボク達は今までに魔将軍や魔族の大軍勢、古代ゴルガ文明の破壊兵器タルカスやバロール、ウルティマ・ザインといった強敵を倒してきた。
だがこれから戦いはもっと激化する可能性が高い、そうなると今までのようなやり方では通用しない場合も出てくるだろう。
その際にボクのマップチェンジスキルが危機を切り拓く事もあるはずだ。
現に今まででも、ボクのスキルで難敵撃破のきっかけを作った事が何度もあった。
よし、それじゃあやり方も分かった事だし、そろそろ準備を始めよう。
ボクはヘックスの村の人達に挨拶をし、次の日飛行艇グランナスカで村を飛び立った。
村の人達は新たな守り神になった黒竜王ヘックスとの別れを名残惜しんでいたが、ヘックスを大魔女エントラ様がクローンという魔法で作った分身と、三か所の山に張った魔力結界が村を守ってくれるだろう。
さあ、ヘックスの為にも早く魔王を倒し、この村に戻れるようにしよう。
「行くぞ、みんな。目的地は……どこだっけ?」
みんながズッコケてしまった……まあそうだよな、
「ユカ! なに馬鹿言ってるのかねェ! こういう場合は一度行った場所に帰るのがセオリーじゃないのかねェ!」
「うむ、そうじゃ。闇雲に動くよりは、一度行った場所を再度訪れて話を聞くのが基本じゃ」
「おいおいおい、オレはボケだと思ったぜー、まさか素でそんな事言うなんてよー」
「まあまあ、そんなに気にする事じゃないからさぁ、それよりどこに行くか決めようよぉ」
うう、みんなの視線が冷たい。
『まあ自業自得だな、考えなしに動こうとするとこうなる』
『ソウイチロウさんはどこに行けばいいか分かってたんですか!』
『まあ、シナリオ的にはな、この場合は下手に最初に行った場所よりは、少し経って訪れた場所に行くのが鉄則だろうな』
『という事は、どこに行けば……』
ソウイチロウさんが言うには、最初に行った場所では無く、という言い方だった。
つまり、この飛行艇グランナスカで砂漠の国ディザードやザッハーク神国に行く前に立ち寄った場所。
となると、ボルケーノ様の家か!
「ごめんごめん、みんな、思い出したよ。これからどこに行くかと言えば、ボルケーノ様の家だ」
「まあ、そうなると思ってたねェ、分かってたんじゃないかねェ。それとも……もう一人のアドバイスかねェ」
ギクッ……大魔女エントラ様にはお見通しだったみたいだ。
「まあそう突いてやるでないわい、薄々は気付いておったようじゃしな。では、行ってみるかのう」
「そうですわ、そこでボルケーノ様のお話を聞かないと」
「僕もそう思います、ボルケーノ様でしたら今後どうすればいいか、教えてくれると思います」
よし、これで行動が決まった。
さあ、それではボルケーノ様の家に向かおう、グランナスカ、発進!




