928 ディザードの宴
これでディザードの水問題は解決するだろう。
砂漠の中にあり、水に事欠く国だったディザード、それは川が無かったからだといえる。
だが禁断の山からボクのマップチェンジで一直線に作られた大河は水を滔々と湛えながらどんどん下流に進んで行っている。
ボクは飛行艇グランナスカを低速で低空飛行させながらマップチェンジスキルを使い続け、どんどん大河を推し進めているわけだ。
もしこれを人が工事で掘り進めようとしたら、何百人使って何十年かかるかといったところだ。
だがボクの持つこのスキルは天変地異を起こすと言っても良いようなスキルなので、これくらいの事は容易にできる。
改めて考えてもとんでもないスキルなんだなと自分で思うくらいだ。
『まあこのスキルは普通のこの世界の人が持っていても全く使いこなせないまま人生が終わってたものだろうけどな』
『そうですね、ソウイチロウさんの発想と機転が無ければボクもこの能力が人助けになるなんて気が付かないままだったと思います』
そう、今のボクは前世での異世界の住人だったソウイチロウさんという人と意識を共有している。
だからボクの考えている事は彼と意識を共有しているという状態だ。
最初にこの床貼りと言われていたハズレスキルを発想の転換でモンスター退治に使ったのはソウイチロウさんのおかげだといえるだろう。
その後いろいろあったが、ボクはそのスキルの使い方を彼と共有する事で数万の魔族の大群と向かい合い、そして今は伝説の古代文明最強兵器すら倒す事が出来た。
そのおかげでかなりレベルアップしたスキルを使えているから魔力も威力も桁外れのものになっている。
そのスキルを使ってボクは今マップチェンジをしながら禁断の山から砂漠の国ディザードまで向かっているわけだ。
ボクが大きな岩山で閉じ込めた為、禁断の山にいた凶悪なモンスターは山の壁を抜けようとすれば必然的に大河の中に入らざるを得なくなる。
だが、あの山にいた大型モンスターはどれも泳ぎが得意なタイプではないので、水に入れば溺死してしまうというわけだ。
だから水を飲みながら大型モンスターが川を下ってくるという事態はまずあり得ないだろう。
それにボクは何か所かわざと大河の所に岩壁を作り、そこに空いた穴からまた水が流れ出るようにしておいた。
これなら図体のデカいモンスターは岩壁に阻まれたまま先に進めず諦めるかその場で溺死する。
まあ言ってしまえばかなりえげつないやり方かもしれないが、それでも砂漠の国ディザードの人達がモンスターの大群に襲われる事よりはよほどマシだろう。
飛行艇グランナスカは一日かけて禁断の山から砂漠の国ディザードまで戻ってきた。
「な、何だアレは?」
「あれは……救世主様、ユカ様だ!」
ボク達がディザードに到着すると、国中の人がボク達を歓迎してくれた。
さて、その期待に応えてあげよう。
「この場所の砂地を大きな湖にチェンジ!!」
ボクがマップチェンジのスキルを使うと、そこには滔々と水を湛えた綺麗な湖が姿を見せた。
「この湖まで遠くの山から河を引いてきました。これでもうこの国が水不足で苦しむ事は無くなるでしょう」
ボクがそう言うと、国中の人達が歓喜の声を上げた。
そしてその日から数日間、街をあげてのお祭り騒ぎが行われた。
なにやらボクがこのディザードの国に戻ってきた日を記念日にするとか何とか領主様に言われたけど、何だかむず痒いな……。
まあこの国でやる事も落ち着いたし、さて次は分離したパーティーの大魔女エントラ様や黒竜王ヘックス達と合流して魔王を倒す準備かな。
数日にわたる宴の後、ボク達は飛行艇グランナスカを飛ばし、砂漠の国ディザードを離れた。
さあ、次の冒険へ出発だ!
飛行艇グランナスカは砂漠の国ディザードを後にし、どんどん北の方を目指して飛び続けた。
久々に更新できました。
実は新作をネオページで始める準備の為に更新が止まっていました。
これがネオページでスタートした新作です。
異世界ゴーレムカンパニー
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こちらもどうぞよろしくお願い致します。




