927 モンスターの水飲み場
さて、水源の確保に向かおう。
なんだか自作自演をしているようで後ろめたい気分はあるが、このままディザードの人達が水を際限無く使い続けていれば確実に枯渇してしまう。
そうなれば待っているのは水を巡った争い、その延長線上にあるのはディザードの滅亡だ。
そんな事態にならないようにするためには、この荒療治が必要だったわけだ。
幸い水を手に入れたと思っていたディザードの国民達はまだそれほど際限無く水を使う生活になっていなかったので今ならまだ間に合う。
ボク達は飛行艇グランナスカで、ディザードから遠くに見える山を目指した。
どうやらディザードの人達にはその山は神の山、輝く山と呼ばれているらしい。
そこは、あまりにも遠くにあるが見えている場所、一度行けば生きては帰れない場所だとこの国の人達は言っている。
つまりはここからずっと遠くにある山がこの場所まで通じていないので道や川がないのだ。
だが大きな山という事は間違いなく雪が降り水が確保できる場所だという事だ。
ボクがこの街にマップチェンジで作った湖は水は有るが水源が無い。
つまり一度この水を使い切ってしまうと新たに水は確保できないわけだ。
それなのにこの水が潤沢にいつまでも有ると思い続けて水を好き放題に使う生活に慣れてしまう、そうなると一度楽で楽しい方に慣れてしまった人間は元の辛いキツイ生活に戻るのが困難だ。
だからあえてボクはこの街の新たな水瓶になるはずだった湖をモンスターのせいに見せかけて消す事にした。
ボクが新たな水源を確保するまで今ある水でこの国の人に生活してもらう、それが出来たなら今後水に困らない生活になったとしても水の無い時の生活を思い出して気を引き締められるはずだ。
ディザードから遠く離れた神の山から川を作れば、この国の人達が今後二度と水不足で苦しむ事は無くなるだろう。
それは砂漠の民による侵略の阻止にもなるのだ。
実際、グランド帝国は幾度となく砂漠の国ディザードの侵攻を受けた事がある。
それは水を求めてディザードの民が豊かな地を手に入れようとしていたからだ。
だが水不足さえ無くなればこのディザードの国民が外部に攻め込む理由が無くなる。
その意味でもボクが今やろうとしている事は大いに意味のある事なんだ。
飛行艇グランナスカは砂漠の国ディザードから1日で神の山の麓に到着した。
この近辺には人間は誰もいない。
ここにいるのは土着のモンスターくらいだ。
ボク達はその神の山の麓に降り立つと、いきり立った辺りの巨大な土着モンスターと戦った。
普通の人間ならとても勝ち目のなさそうなA級、B級モンスターだが、幾たびのもの死闘を潜り抜けてきたボク達の敵ではなかった。
相手に勝てないと思ったモンスター達は退散し、ボク達が土着のモンスターを一掃すると、その近くには彼らの水場にしていた場所があった。
そこでまだ多くのモンスターが水を飲んでいたが、コイツらをここから出しさえしなければ別にこの場所はこのモンスター達がそのまま居てもいいわけだ。
そしてボクのスキルならそれも可能、つまりこの場所を巨大な土壁で覆いつつ、川の水だけを土壁の外になるようにすればいいわけだ。
「ここから見える地平線の先までの地面を大きな河にチェンジ!」
ボクのマップチェンジスキルは地平線の向こうまでの荒野を真っ直ぐな一本の大河に変化させた。
そして驚いていたモンスターをルームさんが全員眠らすとボク達は素早くその場所を離れた。
そしてモンスターが見えなくなった遠い場所からボクは手をかざし、マップチェンジスキルで巨大な土壁を作った。
「河の両側の土地を巨大な土壁にチェンジ!」
すると、巨大な土壁は河を囲むように作られ、河以外からはモンスターが外に出れなくなった。
これでモンスターが土壁の外に出てくる危険性が無くなったわけだ。




