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926 再びの水不足

 領主に何度も頭を下げられたボクは、盛大に歓迎された。

 大量に用意された料理は食べきれない程の量でボク達は休みながら少しずつ食事することにした。


 食事の間色々な人に訪ねられたのは、遺跡内での事だった。

 だが下手にウルティマ・ザインや機械竜、鉄巨人といったバケモノの話をするのも住民を怯えさせるだけなので、あの遺跡が古代文明の産物でやたらと罠の多い場所でモンスターが住み着いていた程度の話にしておいた。


 まあ、サンドイーターがもう出現しないことくらいは伝えても良かったかもしれないが、下手に油断していてモンスターに襲われる事を考えると、まだサンドイーターのような凶悪なモンスターはいると思わせておいた方が良いのかもしれない。


 この砂漠の国ディザードはそんな危険と隣り合わせだったのが国の兵士達の強い理由だったとも言える。


「ユカ様、これ美味しいですわ」

「そうだね、結構辛いけどコレは美味しいね」


 本来砂漠の地の食べ物は、果物や少しの香辛料くらいはあるが、水を大量に必要とするような辛い食事はあまり好まれない。

 だがボクがマップチェンジで作った湖、池は滔々と水を湛え、この土地が水に困る事はないくらいに潤沢な水がある。

 だから今までは敬遠されていた辛い食べ物も料理の選択肢の一つとして増やす事が出来たのだろう。

 辛いものは殺菌作用があるので長持ちするとも言われている。


「さあどんどん食べてください、食事はいくらでも用意しますから」


 上機嫌の領主はボク達にどんどん食事を提供してくれているが、今は良くてもこんなペースで食事を用意していたらそのうち食糧不足が起きてもおかしくない。

 だからボクはある事を考えた。


 宴は夜遅くまで続き、湖の近くには最低限の警備しかいなかった。

 その警備兵も酒を飲んで眠りこけていたくらいだ。


 だから僕は誰にも気付かれる事無く、考えを実行に移した。


「この場所にある湖を砂にチェンジ!」


 アレだけ大きかった湖は一瞬で元の砂地に戻った。

 この人達にはもう一度脅威を感じて身を引き締めてもらわないと。



 案の定、次の日宮殿は大騒ぎになっていた。

 それまで使えていた水は断水制限で最低限の水を使うしかない生活に逆戻りだ。

 そして領主はボクを呼び出し、怒りの表情で叫んだ。


「一体どうなっておる!? このままではこの国は干からびて滅びてしまうぞ」

「領主様、ボクが原因を探ってみます、これはひょっとすると何かのモンスターの仕業かと。ボク達がその原因を突き止めて解決して見せます」

「う、うむ……だが国がこの状態になってしまってはお前達に恩賞を渡すわけにはいかんぞ、それでも成し遂げてくれるというのか……」

「はい、領主様、その代わり一つだけ約束してください」


 そう、ここでボクは領主やこの国の人達を相手に忠告をすることにしたのだ。


「約束、とな。それは一体何なのじゃ?」

「はい、領主様。ボク達が水を取り戻せたら、水はみんなで分け合い、無駄遣いをせずにきちんと蓄えていざという時の危機に備えるように国民全員が心がけてください」


 そう、この水をわざと使えないようにしたのはいきなり水に困らなくなったディザードの人達にもう一度水の貴重さを感じ取ってもらう為だ。


「う、うむ。わかった。今回の事で儂らはもう懲りた。元の砂漠の民の生活に相応しいつつましい生活に戻すとしよう」

「そこまでやる必要は無いです。あくまでもみんなが水を巡って争わず、全員で分け合えるくらいに出来ればそれで良いんです」


 砂漠の民は領主様の御触れで水を巡っての争いや無駄遣いを失くす事で反省したようだ。

 さあ、それじゃあ本当にこの国が水に困ることの無いように、ボクがマップチェンジで作っただけの湖の水ではない本格的な水路を確保する為に山に向かってみよう。

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