925 遺跡の跡地には
◆◇◆
ボク達は遺跡の奥深くで古代兵器、ウルティマ・ザインを倒した。
その際に手に入れた円盤が何なのか、まだわからない。
だがこれを大魔女エントラ様なりボルケーノ様なりに見せればこれが何なのかは分かるだろうが、とにかくそのためにはこの遺跡の外に出なくては。
幸い異空間からの出口は閉じられていないのでボク達はその場所から元の遺跡の地下六十階に移動出来た。
ここから一階までワープ床を使えば移動できるかもしれないが、下手に何かの罠でも働いてしまっていると、移動先が石の中というとんでもないオチがあるかもしれない。
ボクなら石の中に閉じ込められても外に出る事は出来るかもしれないが、エリアさんとがそんな事になったらとても助け出せるとは思えない。
そう考えると、やはりここは無理をせず、階段の残っている限り上に向かって戻った方が良さそうだ。
それにもし階段が崩れていて上の階に戻れなくても、ボクのスキルであるマップチェンジで床の高さをチェンジすれば穴の上の部分まで戻るのは可能だ。
「ユカ様。僕達は上に戻れるんですよね」
「そうだね、もうこの遺跡には敵はいないんだ」
どうやらボク達がウルティマ・ザインを倒した事で、この遺跡の中にいたモンスターは全部姿を消したようだ。
ウルティマ・ザインの核はモンスターを生み出す力もあったらしい。
だからそのウルティマ・ザインが倒された事で、この遺跡の中のモンスター発生装置が停止したらしい。
これで砂漠のサンドイーター等ももう二度と現れる事は無いだろう。
だが、この遺跡をそのまま残しておくと砂漠の盗賊や外にいるモンスターが住み着いてしまう危険性も高い。
何故ならこの遺跡の防衛機能、モンスター発生機能といったものが全て停止したので、今までこの場所を見つける事の出来なかった盗賊や土着のモンスターでもここに簡単に来る事が出来るようになってしまうからだ。
そうなるとせっかく遺跡から生み出されていたモンスターがいなくなったのに、砂漠の国ディザードが再び外部の脅威に襲われてしまう事になる。
そこでボクはこの遺跡を人の目につかないようにする事にしようと考えた。
「ユカ様、何を考えているのですか?」
「あ、ああ。早くここから外に出たいなと思ってたんだ」
「その通りですわ、早くこんな場所から外に出たいですわ」
口には出していないが、ホームさん、ルームさん、エリアさん、全員がもうヘトヘトだった。
アレだけの強敵との連戦を続けたんだ、そりゃあ仕方ない。
ボク達は遺跡の五十階、鉄巨人の居たコロシアムに到着すると、そこから遺跡の外にワープ床で脱出した。
幸い、罠で上のフロアの構成が変わったという事は無かったようだ。
また、入口の場所は簡単な構造だったので、下手に場所を変えるという罠を作れなかったらしい。
ボク達は遺跡の外に出て、少し高い禿山の上に到着した。
そこからボクは古代遺跡の入り口に向かい、マップチェンジのスキルを使用した。
すると、遺跡の中でウルティマ・ザインを倒して手に入れた円盤が光り出し、ボクに凄い力が漲ってきた。
凄い! この力……今までのスキルとは比べ物にならない!!
「遺跡の入り口を……巨大な湖にチェンジ!!」
ボクがマップチェンジのスキルを使うと、遺跡の有った場所に巨大な湖が作られ、かつての遺跡は湖の底に沈んだ。
これでもうモンスターや盗賊達があの遺跡を根城にする事も無くなるだろう。
ボク達は巨大な湖を後にし、砂漠の国ディザード目指して飛行艇グランナスカを飛ばした。
そしてディザードに着いたボク達は、その土地の領主に会い、新たな湖の事を伝えた。
「な、なんと……砂漠の遺跡が湖に……」
ボク達の報告を聞いた領主は驚いていたが、そのすぐ後にとても喜んでいた。
「ありがとうございます、これで水を巡っての争いがようやく終わる事になりそうです。救世主様、本当に、本当にありがとうございました」
ボクは何度も何度も領主に頭を下げられ、少し困惑してしまった。




