91 報われぬ魂達の浄化
ロボとブランカを手厚く弔った私達は一旦商隊のキャンプで過ごす事にした。
「みんな、盗賊の住処を一通り調べたら今度こそ戻るよ」
「了解しました!」
「承知致しましたわ」
「……うん」
私達と商隊、元人質の女の子や子供達はみんなで食事をして和気あいあいと語り合う事ができた。
「私達はこのまま商隊のお世話になりたいと思います」
「ぼくはおうちに帰りたいです」
「アタシ、行くあてもないし町に着いたら住み込みで働こうかなー」
いろいろな人たちがいた。しかしこの盗賊の住処にはみんな二度と戻ってきたくないのだけはみんなの共通の気持ちだった。
「でも……妹がまだあそこに……」
「僕の友達も……」
「親友の……せめて形見だけでも持って帰ってあげたい……」
そう……私達が助ける事が出来たのは今まだ残っていた人達なのだ。
私達が来る前に慰み者にされたまま、または嗜虐目的や邪神の生贄で殺された人達の魂はまだあの盗賊の住処に残ったままなのだ。
「……みんな、もう少しだけここでやる事がある。手伝ってくれるかな?」
「ユカ……私でないとできない事が……あります」
「僕も無念な人たちをせめて葬ってあげたい……」
私達はみんなを残し、盗賊の住処に向かった。
◆
宝物庫や邪神の祭壇はもう見たが、私達はまだこの廃神殿跡の全部の部屋を見たわけではなかった。
盗賊の住処にはまだ私達の知らない場所に血の錆び付いた痕のついた扉があった。
ギイィ
重い扉を開いた私達は言葉を失った。
「酷い……」
「こんな事が……許せない」
「私……これはそのままにしておけませんわ!」
「命の冒涜だ!」
そこにあったのは無造作に捨てられたバラバラの死体置き場だった。
中には歯型のついた焼かれたまま腐った肉等もあり、相当おぞましい光景が広がっていた。
「ユカ様……この部屋、焼いてしまってもよろしいでしょうか?」
「ルーム……頼む」
私達は哀れな死体を全て焼く事で、これらを埋めて墓を作る事にした。
「ユカ……この人達、とても悲しくてつらい魂が残っています」
「エリア……この人達を助けてあげられる?」
「うん……やってみる」
エリアはどんどん焼けていく死体置き場の魂に向け、祈りをささげた。
「聖なる力よ……無残に命を奪われた悲しき魂に浄化と救済を与えたまえ!……レザレクション!!」
エリアのレザレクションは辺り一面を包み込み、炎の中からはどす黒い煙の中から白く輝く魂がいくつも天に昇って行った。
「凄い……これは歴代の大僧正や法王、大司教でも使えない力だ……」
「「「「アリガトウ…… アリガトウ…… コレデカエレル…… オカアサン」」」」
浄化された魂はそれぞれが思う気持ちを伝えながら……空高く消えていった。
そして、その奇跡は一柱の骨すら残さず、死体置き場だった場所には辺り一面の花畑が広がっていた。
「奇跡ですわ……エリア様の起こした奇跡」
「そうだね、僕達は奇跡を目の前で見たのかもね」
レジデンス兄妹は魂の浄化による奇跡を目の前で見たのだった。
「ユカ様! そういえばもう一つそのままにできない物があります!!」
「ホーム? いったいどうしたんだ?」
「とにかくこちらへ来てください!」
そう言うとホームは私とアジトが激戦を繰り広げた魔法陣跡の泥沼の前に来てくれと私を連れてきた。
「ユカ様、アレです! アレには997の魂が!」
ホームが指さした先には魔剣魂喰らいが転がっていた。
この剣は魂を喰らう呪われた魔剣だ。
アジトがこの剣で999の魂を屠ったのだ。
「ユカ……私があの剣を浄化する!」
「エリア……それは危険だからやめた方がいい!!」
「いいえ、私でないと出来ないの……」
エリアの決意は固い物だった。私達がやめろと言っても聞かないであろう。
エリアは強く魂喰らいを睨むとその指先を剣に触れようとしていた。
「エリア……」