916 隕石対邪神竜
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大魔女エントラの魔力が天空高くに放たれた。
「グハハハハハ、どこを狙っておる、その程度の魔法、こけおどしにもならんわ!」
「どうやら神を気取るトカゲにはこの後の展開がまるでわからないみたいだねェ。さあ、流星よ、天を貫き炎の矢となりて一面に降り注げ! メテオ……フォール!!」
「な、何だこれはぁ!?」
邪神竜ザッハークが叫んだ。
流石の邪神竜も大魔女エントラの超絶究極魔法は想定出来なかったようだ。
邪神竜ザッハーク目掛け、天空から幾多の大小の無数の流星が降り注いだ。
「ギャァァァァアッッ! な、なんだ、この夥しい数の石礫はぁぁ??」
邪神竜ザッハークの再生力をもってしても、この大魔女エントラによる降り注ぐメテオフォールの魔法の前には再生が追いついていない。
治そうとするその度に焼けただれた隕石に体を削り取られるからだ。
「な、何なのよ、この桁外れの魔力は、コレ……お姉様よりも上じゃないの……」
ダークリッチのアナやブーコ達は自分達が以前圧倒的に敗れた大魔女エントラの力を目の当たりにし、今は彼女が敵でない事に安堵した。
魔将軍アビスは世界最強の魔力の持ち主だ。
しかし大魔女エントラはそれに少し劣るものの、魔力を使いこなすスキルでは世界最強と言える。
その彼女が魔力で呼び寄せた流星は邪神竜ザッハークを徹底的に打ち据えた。
「バ……バカな。こんなこと……が?」
「どうやら流石の邪神様もこの魔法の前にはまるで手も足も出なかったようだねェ」
「し、信じられん。まさか我がここまで……」
大魔女エントラの魔法の前にはいくら神を名乗る邪竜ですら太刀打ちできなかったようだ。
「さあ、お仕置きの時間はまだコレからだからねェ!」
「わ、わかった。お前をみくびったことを謝る、だから、この降り注ぐ流星をどうにかしてくれ!」
「おや、神を名乗っていたくせに随分と情けない態度だねェ。まだお仕置きが足りないみたいだねェ!!」
降り注ぐ流星は数を増し、そして大魔女エントラの魔力はその流星を一つの巨大なものとし、邪神竜の上に降り注いだ。
「や、やめろ! こんな事をすればこの大地すら砕け散るぞ!!」
「おや、アンタ邪神のくせにそんな事気にするんだねェ、まぁそんな事アンタには関係ないけどねェ!!」
大魔女エントラが不適な笑いを見せる。
邪神竜ザッハークは大魔女エントラの行動がまるで想像がつかないようだ。
彼女は本当にこの土地ごと邪神竜ザッハークを打ち滅ぼそうとしているのだろうか?
「や、やめろ。やめてくれ。いや、やめてください。ウワァァッ!!」
隕石群から逃げ惑う邪神竜ザッハークだったが、大魔女エントラはそれを逃さない。
「おや、どこに逃げようというのかねェ? もうアンタに逃げ場所なんて無いからねェ」
そう言うと大魔女エントラは魔法で地面に巨大な魔法陣を作った。
そして魔法陣の上にいた邪神竜ザッハークがどこかに転移させられた。
「コレは異界門のゲートの亜流、この魔法陣からアンタは逃れる事はできないからねェ!!」
「わ、我が悪かった。だから、助けてくれ! いや、助けてくださいぃぃぃ!!」
「ダメだねェ、アンタはそう言ってどれだけの命を弄んできたのかねェ、そのゲートは一方通行。一度送られたら妾以外には決して元には戻せないからねェ、永遠の苦痛を味わい続けるんだねェ!!」
なんと、大魔女エントラの魔力で呼び寄せた流星は魔法陣の中に次々と吸い込まれた。
その為、地面には何一つとして流星が降り注ぐ事は無く、山は無傷のままだ。
「異界門よ、閉じよ!!」
大魔女エントラが杖を高く掲げると、全ての流星が魔法陣の中に吸い込まれ、そして最後には魔法陣が姿を消した。
こうしてこの地域で信仰されていた邪神竜ザッハークは降り注ぐ流星ごと二度と戻る事の出来ない異界に閉じ込められたのだ。




