915 神に仇なす者達
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ダークリッチ・アナのダークネスフレアが邪神竜ザッハークを直撃した。
黒い爆発が連鎖し、いくつもの黒い火炎となって邪神竜を覆い尽くす。
この魔力で放たれた魔法は、普通のモンスターならば骨すら残さずに焼き尽くされてしまうだろう。
だが、その魔法は邪神竜ザッハークにはまるで効果がなく、足止めにもなっていない。
「んー? 何かやったのか? 我の鱗が焦げてしまったではないか」
「そ、そんな。わたしのダークネスフレアが! まるで効果無いというの??」
自らの魔力に絶対の自信を持っていたダークリッチのアナは、ダークネスフレアが邪神竜ザッハークに全く効果がなかった事に驚愕した。
「アナ、危ない!」
「キャアッ!」
邪神竜ザッハークの尻尾の一撃を喰らおうとしたアナを助けたのはバンパイアロードのブーコだった。
「ブーコ、貴女……」
「勘違いしないで、今はアイツと戦うのに一人でも欠けられたら困るのよ!」
優れた身体能力を誇るバンパイアロードは、邪神竜ザッハークの攻撃から友人を助け出した。
「ここはワタシに任せて!」
「トゥルゥー!」
「今は歪みあってる場合じゃないのよね、さあお願い、お下僕! アイツを食い殺して!
ビーストマスターのトゥルゥーが呼び出したのはベヒモスだった。
SSクラスの彼女はSクラスのモンスターを何なく呼び寄せる事ができる。
Sクラスはベヒモスやエルダードラゴンといった神話級のモンスターだ。
だが、邪神竜ザッハークはベヒモスの突進を食いながら高笑いしている。
「グハハハハハ! 空をかけて突進の出来る獣か、面白い。だが、この程度の獣ふぜいで我に傷一つ与えられると思っていたのか!」
なんと、邪神竜ザッハークはベヒモスの頭を鷲掴みにし、その右手だけで頭部を引きちぎった。
そしてその頭をトゥルゥー目掛けて投げつけたのだ。
「ヒッ、ヒイイイッ!」
「トゥルゥー、ちょっとその子借りるわね」
頭部だけになったベヒモスをダークリッチのアナは魔法をかける事でアンデッドとして再生させた。
「一度死んだならもう死ぬ事はないからね、死んでも戦い続ける事が出来るのよ!」
「フン、小細工を。それで我に傷をつけられると思っているのか」
アンデッド化したベヒモスが邪神竜ザッハークに噛み付いた。
「ぬ? 何だ、コレは?」
「アンデッド化したベヒモスには呪いの牙があるのよ。この牙で噛み砕かれて弱体化するがいいわ!」
「ほう、少しは考えたようだな。だが!」
邪神竜ザッハークはベヒモスゾンビに噛み付かれた箇所を噛みちぎった。
すると、噛みちぎられた場所は瞬く間に再生し、邪神竜ザッハークは元の姿に戻った。
「な、何なのよ……コレ」
「フン、キサマらは自分達が強いと思い込んでいたようだが、神に挑むには力不足だったとようやく思い知ったようだな!」
魔将軍アビスの眷属であるアナ達は邪神竜ザッハークの圧倒的な力の差の前に何一つ出来なかった。
「偉そうに言ってるけど、アンタさっきのヤツになすすべもなくやられてたじゃないかねェ。何? 自分より弱い相手にだけ偉そうにしてるのかねェ、神が聞いて呆れるねェ」
「な、何だと! 我を愚弄するか! 貴様は誰だ!」
大魔女エントラは杖を高く掲げ、魔法を唱えた。
「さあ、そこの神を気取るトカゲに絶対の魔法を見せてあげようかねェ!!」
大魔女エントラの目が光った。
彼女の周りには魔力が満ち溢れ、それは誰が見てもわかるほどだ。
「アンタ達、危険だから後ろに下がってるんだねェ!」
この後に何が起こるかがわかったアナ達は大魔女エントラの指示通りに彼女の後ろに下がった。
「えんとら、あまり本気を出さんでくれよ。ワシの結界も絶対ではないからのう」
「そうは言っても手加減なんて出来ないからねェ、どうにか耐えてくれないかねェ」
大魔女エントラは魔力を天空高くに放った。
すると、空の星々の欠片が彼女の魔力で引き寄せられた!




