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914 お互い争っている場合じゃない

◆◆◆


 ダークリッチ・アナの魔法が少女ワタゲを包み込んだ。


「キ、キサマ!? 何をする?」


 いきなりの行動に黒竜王ヘックスが叫んだ。

 だが、それを制止したのはなんと大魔女エントラだった。


「ヘックス、少し落ち着くんだねェ」

「コレが落ち着いていられるか! アイツはいきなり俺様のワタゲを魔法で攻撃したのだぞ! ザッハークの前にアイツを殺してやるっ!」

「だから落ち着くんだだってばねェ」


 何故大魔女エントラが黒竜王ヘックスを制止したのか?

 それは、この後ようやく分かったようだ。


「あ、あれ? コレ……どうなってるの?」

「ワタゲッ!」


 なんと、ワタゲの周りを黒い魔法の塊が覆っている。

 どうやらこの魔法はダークリッチのアナがかけたもののようだ。


「だから足手まといにここにいられたら困るから、全ての魔力を吸収する魔法の球を作ったのよ。アレは中から攻撃する事は出来ないけど、外からの力は全て魔力に変えて吸収するから」


 ダークリッチ・アナの行動にヘックスが唖然としている。


「だから言ったんだねェ、少し落ち着くように」


「す、すまない。どうも取り乱してしまったようだな」


 その様子を見ていた邪神竜ザッハークが手を広げて黒い魔力をワタゲに叩きつけた!


「何をしたかは知らんが、余興は終わりだ。我の力で全て消え去るがいい。まずは一番弱そうなキサマからだ!


「ワタゲェェ!!」


 黒竜王ヘックスが叫ぶも、邪神竜ザッハークの魔法はワタゲの入った魔力球を直撃した。


「キャァァァッ! あれ? なんともないの?」

「な、何故だ!? 我の魔力を無効化したというのか!」


 邪神竜ザッハークはありえないといった表情だ。


「へぇ、なかなかやるじゃないかねェ、使い方間違えなきゃいいんだけどねェ」


 大魔女エントラはダークリッチ・アナの魔法に感心していた。


「コレで足を引っ張るヤツがいないから本気出せるでしょ、お姉様を苦しめたアンタの魔力、シャクだけど認めざるを得ないわ。その魔力であの邪神を倒してよ!」

「おやおや、ずいぶんと虫のいい話だねェ、(わらわ)にアレと戦えというのかねェ?」

「何よ、勝てる自信ないの?」


 挑発的な態度のアナに対して大魔女エントラが余裕の表情を見せた。


「いや、問題は無いけどねェ、でも……アンタ達にも手伝ってもらわないとねェ」

「わかったわ、それで何をすればいいのよ」

「そうねェ、とりあえず、アイツを足止めして釘付けにするくらいは出来るでしょう。それを頼むねェ」


 大魔女エントラがダークリッチ・アナ達に頼んだのは、魔力を溜めて魔法を発動するまでの足止めだった。


「のう、えんとら。ワシはどうすればいいんのじゃ?」

「そうねェ、アンタはあの邪神竜の攻撃が周りに飛び散らないように結界を作ってくれないかねェ」

「承知した」


 龍神イオリはドラゴンの姿に戻り、その魔力でザッハーク神教の総本山の地域を魔力結界で包み込んだ。

 この結界のおかげで邪神竜ザッハークの攻撃が周囲に被害をもたらさないように出来るのだ。


「エントラ! 俺様はどうすればいいのだ?」

「そうねェ、クロスケはワタゲちゃんを守りつつあのザッハークに攻撃をお願いするかねェ」

「わかった、ワタゲはあの魔力球があれば守る事は出来そうだ」


 こうして、大魔女エントラ達とダークリッチ・アナ達による臨時の共同戦線が張られた。


「フン、有象無象がいくら束になろうとこの神であるザッハーク、我に敵うはずもあるまい! まとめて全員屠ってくれるわ!」


 邪神竜ザッハークの魔力球がダークリッチ・アナに放たれた。

 だが直撃したはずの魔力は彼女のマントや髪に吸収され、その右手に怪しい紫の光が集まっている。


「フフフ、闇の魔力はわたしの得意技。お姉さまにもらったこの絶大な魔力、アナタにお見舞いしてあげるわ! ダークネスフレアッ!!」


 ダークリッチ・アナの黒い魔法が邪神竜ザッハークに直撃した!

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