912 蘇った邪神
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「あ、そうそう。せっかくイベントのある場所に来たのに、ボスを用意していないと拍子抜けだからねェ、だからとっておきのボスを用意してあげるよォ!」
「な、何なのかねェ、アレは!?」
元の世界に先に戻っていたバグスはザッハーク神教の総本山の一番上に浮かんだまま、何か手を高く上げていた。
「さて、ここでダンジョンマップ83にフラグを構築、そこでボス124を登場させて、オートバトル。レベル想定は95……ってとこかなァ」
バグスが大魔女エントラ達には理解出来ない謎の言葉を羅列している。
だがバグスが何かとんでもない事をやらかそうとしている事だけは事実だ。
「さァ、シナリオを面白くしてくれよォ、出ろ。邪神竜ザッハーク!!」
なんと、バグスが召喚したのは、昔に黒竜王ヘックスと地を割る激戦を繰り広げた邪神竜ザッハークだった!!
「我を…呼んだ者は誰だ? まどろんでおった我を起こすとは、よほど命がいらないようだな……」
「おやァ? そんなこと言っていいのかなァ、ボクは君の存在を一瞬で0にする事も出来るんだよォ……」
バグスが闇の奥底まで通じているかのような目で邪神竜ザッハークを睨んだ。
その気迫に流石の邪神竜も怯んでしまう。
「わ、わかった。それで、我にどうしろというのだ? まさかお前の下僕になれと言うのか?」
「いや、ボクはキミみたいな下僕は必要無いからねェ、キミを制御するより好き放題に暴れるのを見ている方がよほど楽しいんだよォ」
バグスは享楽的な破壊者であり、世界を混乱させるのが目的だ。
だから下手に部下や下僕を作り、その面倒を見るのが嫌らしい。
「大勢のバカの面倒を見ても、後で裏切られるくらいならねェ。好き放題にやらせて自滅する姿を見ている方がよほど楽しいんだヨォ!!」
どうやらバグスは転生前は大勢の部下を使いこなす立場にいたらしい、だがその部下に裏切られた事でもう誰一人として信用していないようだ。
「唯一ボクが信頼できたとするなら……ユカ。いや創一郎か、だが、まあそれも今となってはどうでもいいかなァ、だって、壊す方が作るより楽しいって知ってしまえば苦労して作るなんて行動、馬鹿馬鹿しくてやってられなくなるんだよォ!」
そう叫ぶとバグスは邪神竜ザッハークに何か手を加えた。
「キサマ? 一体何をした??」
「たいした事じゃないよォ。単にキミがアイツらを30ターン以内に倒せないと消滅するようにフラグを立てただけさァ」
「な。わ、我が消滅だと!?」
バグスはニヤニヤ笑いながら邪神竜ザッハークを見ている。
「まァその分キミにはハンデをあげるよ。ここにいるキミを信望していたバカな連中を全部取り込めば少しはステータスアップするだろォ」
そう言ったバグスはザッハーク神教の総本山の全て、いや、この国の信徒達から黒い気体を集めて邪神竜ザッハークに注ぎ込んだ。
「さァ、これでレベル99、これなら勝てるだろォ、そこにいる女達をキミの力でねじ伏せてみるんだねェ」
「グオオオオオォォ! こ、これはなんという力だ! コレなら負けるわけがない!」
邪神竜ザッハークはみなぎる力を実感していた。
そして、その手を上げ、バグス目掛けて黒いエネルギーの塊を放った!
「なんだとォ! ボクを裏切るのかァ!」
「力さえ手に入ればこちらのものだ。さあ、貴様そこ我に忠誠を誓うなら生かしておいてやるぞ。この力を与えてくれた礼としてな!」
だが、邪神竜ザッハークの攻撃はバグスに達当たらなかった。
「何故だ? アレを避けられるわけがない」
「バカだなァ、あの程度、数値をいじれば避ける必要も無いのにィ」
「なんだと、どういう事だ!」
「数値にマイナスをつけてやるだけで、ホラ」
なんと、邪神竜ザッハークの放った攻撃は、自らの後方から彼を直撃した!




