表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

902/944

892 巫女ワタゲ

◆◆◆


 ワタゲはザッハーク神教の総本山で信徒と神官達に連れられ、山の中腹に向かっていた。

 彼女の首には大魔女エントラからもらったお守りがかけられているが、それは服の上からは見えなくなっている。


 このお守りは、大魔女エントラがワタゲに渡した物で、それには邪悪な魔力を一切受け付けない高レベルの破邪の魔力が宿っている。

 それなので、ワタゲはこの魔将軍アビスの支配する総本山の中でも正気を保っていられるのだ。


 ワタゲは辺りの様子がおかしい事にまだ気が付いていない。

 実はザッハーク神教の人間は全て、既にアンデッドになっているのだ。


「さあ、巫女になられる方は……こちらへお越しください……」


 虚ろな目をした神官がワタゲを参道に連れて行った。

 彼等は何か怪しげな文言を唱えながら杖をついて総本山の中腹を目指している。

 ワタゲはそんな彼等に輿に乗せられ、どんどんと山の上の方に向かっていた。


 山の上に向かうにつれ、ワタゲの中にある不安がどんどんと大きくなっている。


 ――わたし、一体どうなるの?――


 ワタゲは恐ろしくなり、思わずヘックスの事を呼んでいた。


「クロちゃん……助けて……」


 ここに来るまでは巫女になるのは名誉だと思っていたワタゲとその家族だったが、大魔女エントラに貰った破邪のお守りの力でこの山の実体がわかってしまっているワタゲには恐怖しかなかった。

 もしここで大魔女エントラのお守りが無ければ、彼女もアンデッドの神官達に引き連れられ、何の疑問も抱かないまま知らず知らずにアンデッドや魔族の仲間入りをしていたであろう。


「怖いよ……助けて……」


 しかし輿に載せられたワタゲはそこから降りるわけにもいかない。

 もし下手にこんな所で降りたらそれこそ神への冒涜と見なされ命は無いだろう……。


 つまり、ワタゲはここから動く事すらできなかった。

 彼女は輿の上で恐怖を感じながら泣く事しか出来ていない。

 今、彼女を助け出せるものは誰一人としていないのだ。


 この山は教団の関係者、巫女しか入る事が出来ない。

 だから家族もここには入る事が許されていないのだ。

 だからワタゲは誰にすがる事も出来ず、なすがままにされるだけしかない。


 この後山の中腹についてどうなるのか、それは誰一人としてワタゲに教えてくれるわけでもない。

 彼女は残酷な運命を受け入れるしかなかった。

 信徒達はどんどん山のほうに歩いて行き、もうすぐ目的の場所についてしまう。


 そこでワタゲに待つ運命は一体何なのだろうか。

 洗礼という形での洗脳をされてしまうのか、それとも神への生贄にささげられてしまうのか……。

 どの形だとしてもワタゲに待つのは不幸な未来だけだ。


「い……イヤ……帰りたい、帰りたい……」


 彼女はもう精神的に意図が張り詰めたような状況で、これ以上何かがあればもう元には戻れなくなってしまう、そんな状況だ。

 彼女が精神的に壊れてしまうのは時間の問題だと思われた。


 ――だが、そんな彼女を追いかける小さな黒い姿があった!


「ワタゲェェェェ! 俺様が助け出してやるからなぁぁ」


 押し寄せるアンデッドの信徒をねじ伏せながらワタゲの参列を追いかけるのはヘックスだった。

 彼は押し寄せるハイレベルのアンデッドを次々と打ち倒しながらワタゲを目指した。

 ここでワタゲを助け出せなければもう二度と彼女に会う事は出来ない。


 ヘックスを動かしているのはそんな思いだった。

 ワタゲはかつて彼の愛した少女フワフワの生まれ変わりだ。

 もしここで彼女を手放してしまえば、もう二度と会う事は出来ない。


 その想いこそが彼を突き動かした。

 グール、リビングデッド、ワイト、リッチといったアンデッドを次々と爪で引き裂き、炎で焼き尽くし、ヘックスはワタゲを追いかけた。


 今度こそ、彼女を手放すものか!

 そしてついにヘックスの前にワタゲの参列の最後尾が見えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「面白い!」「続き読みたい!」など思った方は、ぜひブックマーク、下の評価を5つ星よろしくお願いします! していただいたら作者のモチベーションも上がりますので、更新が早くなるかもしれません! ぜひよろしくお願いします!

ゆーたん(たけのこ派)

別作品です、こちらもどうぞよろしくお願いします。

魔族の男がポンコツ女に振り回されるギャグです

魔王軍最強触手幹部 左遷先の不毛の地で困窮する食糧事情を解決、なし崩しに出来たハーレムで本土に逆襲大作戦!!

双子が姉妹の令嬢として再度生まれて人生を入れ替えてやり直す話です

運命のゆりかご・生き別れの双子令嬢は猫に導かれ互いの人生をやり直す

改心したワガママ令嬢が人生をやり直す話です。

ワガママ令嬢は挫けない 〜傾国の悪妃として処刑されましたが、今度こそ誰もに愛されるよう努力します〜

ロボアニメネタ始めました。

子供の頃見ていた合体巨大ロボアニメの超絶不人気外道悪役に転生してしまったエンジニアの俺が生き延びる為に!?

ダンジョン配信でミミックが悪人を退治する話です。

社会のゴミ箱DQNイーター 元ラストダンジョン裏ボスつよつよピザ好きミミックが移動先のダンジョンでよわよわヒーロー仮面配信者と世直し配信!

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ