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887 乗合馬車の中では……

◆◆◆


 ここからザッハーク神教の本拠地までまだもう少しかかりそうだ。

 大魔女エントラ達はこの状況を把握し、教団がすでに魔将軍アビスの手に落ちている事を感じた。


『アイツ、また何か企んでいるみたいだねェ』

『そうじゃな。あの女、手下と教団を乗っ取ったと考えた方がいいじゃろうな』


 聖地巡礼に向かう馬車の中では会話を聞かれてはあまり良く無さそうだと二人は魔法で言葉を出さずにやり取りをしていた。


 側から見るとただ何かのカードで遊んでいるようにしか見えない。


「ぬお、なぜここでこのかあどが出るのじゃ?」

「アンタ、表情に出るからねェ、それじゃいくらやっても(わらわ)には勝てないからねェ……」

「くっ! もう一度勝負じゃ!」


 横で子供達が笑っている。

 先程のアンデッドとの戦いは馬車にいるエントラ達以外の全員から記憶を魔法で消しておいたようだ。


 それなので馬車の中の客達は総本山への聖地巡礼での穏やかな馬車の旅を楽しんでいるように感じている。


 実際には大魔女エントラ、龍神イオリ、大海賊カイリ、その妹で植物使いのマイル、獣使いのフロアとその妻である戦士サラサ、それに聖狼族の双子シートとシーツ、そして弱体化したとはいえS級のモンスター程度なら瞬時に葬れる黒竜王ヘックス。


 これだけのレベル60以上の面々が揃っているのでS級モンスターのゾンビマスターくらいまでなら余裕で倒せる。

 本来ならS級モンスターのゾンビマスターはレベル30後半のA級冒険者が数十名束になってかかってようやく多くの犠牲を出して倒せる程度の強敵だ。


 それだけの厄介なモンスターを使いこなせるのは魔将軍アビスの眷属であるアナ、ブーコ、トゥルーの三人だが、彼女達の出したモンスターは大魔女エントラ達の前にその尽くが打ち倒されているのだ。

 だがそれだけの戦闘があっても馬車の中にはその様子が伝わらないように大魔女エントラと龍神イオリが芝居をしてカードゲームで勝負をしているといったところだろう。


「おねーちゃん弱いー」

「ぬう、まさか四連敗とはのう……そろそろワシも本気を出すとするかのう」

「だから何度やっても無駄だってねェ、アンタ……顔に全部カードが何か出てるからねェ」

「ふん、そう思っておるのも今のうちじゃ、ワシの本気を見せてやろう」


 大人げの無い二人の対決が続いている。

 その中で龍神イオリはカードゲームに勝つためにある方法を使うことにしたようだ……。


「これでワシの勝ちじゃ、ほれ、手札を見てみい」

「え? 何で? 確かに道化師のカードを持っていたはずなのに……おかしいねェ」

「ふふふ、ワシが本気を出せばこんなもんじゃ」


 何かカードに違和感を感じた大魔女エントラは、おかしいと思ったカードに触れ、魔力で何かを探っていた。

 そして……どうやら龍神イオリのインチキを見破ったようだ。


「アンタ、そこまでして勝ちたいのかねェ……まさかこんな方法でやってくるとは思わなかったねェ」

「ななな、何を言っておるのじゃ。ワシは何もやましい事はしておらぬぞ」

「そう、やましい事はしていないのねェ、それじゃあそこにあるカードは何かしらねェ?」

「な、何の事じゃ? ワシは何も持っておらぬぞ、ほれ、このとおり手には何も無いわい」


 大魔女エントラは指を弾き、龍神イオリの尻尾に電撃を与えた。


「ヒィッ、な、何をするんじゃ」

「確かに手にはカードを持ってなかったみたいだけど、尻尾でそこに居る女の子にカードを手渡すなんてそんな初歩的なインチキをするとはねェ、そこまでして勝ちたかったのかねェ?」


 つまり、龍神イオリは手元に残っていたはずのカードを手ではなく尻尾を使い後ろにいた少女に手渡して気付かれないままに手札を全部失くしていたというわけだ。


「お姉ちゃん、だから止めようって言ったのに」

「ワシだって、ワシだって一度は勝ちたかったんじゃぁあー」


 馬車の中はいたって平和そのものである……。

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