表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

88/944

86 消える命 咲く命

 アジトが魔法陣のサイズの底無し沼に完全に沈み込むのにそう時間はかからなかった。

 そして人造地震の瓦礫も邪神像も全てが底なし沼の中に沈み……辺りは静寂だけが残った。


「やった……アジトを……倒した」

「ユカ様……やり……ました……ね」

「……もう、嫌です……わ」


 私を含め、全員が疲労困憊で誰一人動けなかった。

 その中でも、最も状況が悪かったのが銀狼王・ロボとブランカだった。


「俺ももう……動けない。銀……狼……王よ、すまない」

「グル………ル……ル(もう……いい)」


 ロボの命は風前の灯火、ブランカは死を待つだけで横たわったまま荒く呼吸をしていた。

 その時、ワープ床からマイルさんが戻ってきたのだ!


「みんな! 無事!? さっき凄い地震があったから心配になって戻ってきたよ!」

「マイル……さん」

「ユカ! 盗賊は倒したんだね!」

「うん……でももう動けない……よ」

「待ってて! 盗賊のお宝ならハイポーションやエーテル、エリクサーがあるかもしれない!」


 マイルさんは盗賊の宝物庫に向かった。

 そして少ししてマイルさんは両手いっぱいのポーションやマジックポーション等を持ってきてくれた。


「マイルさん、ありがとう」

「感謝します」

「有難うございます…です、わ」


 マイルさんのおかげでどうにかみんなハイポーションやマジックポーションで最低限動ける程度の体力を回復させる事が出来た。


「でも……ロボとブランカが……」

「命の恩人に何もしてあげられないなんて……僕は嫌です!」

(わたくし)も……せめて美味しい最高級のビーフくらいご馳走してあげたいですわ」

「私が……レザレクションが使えないから……」

「エリア……君が悪いんじゃないよ」


 ロボとブランカはもう寝ているだけでも息が荒く苦しそうだった。


「マイルさん、植物に詳しい貴女なら何かこの中に使える物は無いのですか!?」

「ユカ……わかった! すぐ調べるよ!」


 マイルさんは宝物庫から持ってきた宝の中から虹色に輝く美しい実を取り出した。


「これよ! これこそが奇跡の実!」

「奇跡の実?」

「食べた者に一度だけ奇跡を起こせる木の実よ」

「ではそれをロボとブランカに!」

「……残念だけど実は一つだけなのよ」

「二つに切って使えないかな?」

「残念だけどそれだと効力は消えるわ‥…」


 奇跡の実を与える事が出来るのは一匹だけ、それをどうできるのか。


「ユカさん……ブランカが命を引き取ったよ……」


 ブランカはもう動かなかった。そして私達はロボに奇跡の実を与えたのだ。

 これで……奇跡が起こる事を祈る!


「グルルル……ううううう。」

「ロボ!?」

「我の……言葉が分かるのか……」

「これが奇跡なのか……」


 奇跡の実がロボに起こした奇跡は最後に私達と話す力だった。


「いい……我には過ぎたる奇跡だ……」

「これ以上しゃべるな!」

「我はもう死ぬ……それは変えられぬ……定めだ……。だが、一つだけ……頼みたい事があ……る」

「誇り高き銀狼王よ、俺がその願いを聞こう!」

「感謝する……森の民よ」


 銀狼王は最後の力で私達に願いを伝えようとしていた。


「ブランカはもう……逝った……か、だが……妻の中……には……新たな……命」

「銀狼王、わかった。もうしゃべるな!」

「ブランカさんには赤ちゃんがいるんですね! 分かりました、ボク達が……育てます!」

「銀狼王よ、誇り高き銀狼の子。俺が引き受けた! 安心して眠るがよい」

「感謝……す……る。我……の毛皮……持って行くが……良い。ブラン……カ、我も……すぐ……行く……ぞ…………」


 そして、銀狼王・ロボは妻ブランカの隣で永久の眠りについた。


「フロアさん! ブランカさんのお腹を!」

「わかった! ユカさん、頼む!」


 私は遺跡の剣(エクスキサーチ)で赤ん坊に傷がつかないように薄皮を切る形でブランカの腹部を切った。

 そしてフロアさんがその中に手を入れて赤ちゃんの狼を取り出した!


「ユカ! 赤ちゃんが!!」


 腹部から取り出されたのは双子の赤ん坊の狼で、二匹は静かに寝息を立てていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「面白い!」「続き読みたい!」など思った方は、ぜひブックマーク、下の評価を5つ星よろしくお願いします! していただいたら作者のモチベーションも上がりますので、更新が早くなるかもしれません! ぜひよろしくお願いします!

ゆーたん(たけのこ派)

別作品です、こちらもどうぞよろしくお願いします。

魔族の男がポンコツ女に振り回されるギャグです

魔王軍最強触手幹部 左遷先の不毛の地で困窮する食糧事情を解決、なし崩しに出来たハーレムで本土に逆襲大作戦!!

双子が姉妹の令嬢として再度生まれて人生を入れ替えてやり直す話です

運命のゆりかご・生き別れの双子令嬢は猫に導かれ互いの人生をやり直す

改心したワガママ令嬢が人生をやり直す話です。

ワガママ令嬢は挫けない 〜傾国の悪妃として処刑されましたが、今度こそ誰もに愛されるよう努力します〜

ロボアニメネタ始めました。

子供の頃見ていた合体巨大ロボアニメの超絶不人気外道悪役に転生してしまったエンジニアの俺が生き延びる為に!?

ダンジョン配信でミミックが悪人を退治する話です。

社会のゴミ箱DQNイーター 元ラストダンジョン裏ボスつよつよピザ好きミミックが移動先のダンジョンでよわよわヒーロー仮面配信者と世直し配信!

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ