856 二手に分かれて行動しよう
ボク達は村から脱出し、飛行艇グランナスカで空に飛び上がった。
「ユカ様、何という村だったんでしょうか! 僕、あんな目に遭ったのは初めてです」
「仕方ないよ。あの村はザッハークを信仰しているんだから……」
「そんな邪神を信仰する村、焼き払ってしまった方が世界の為ですわ!」
みんながかなり頭に来ているのは話を聞いていてわかる。
ルームさんなんて本気で魔法で村を吹き飛ばしたい気持ちのようだ。
「うーむ、俺様が本気を出せばあの山くらい一瞬で吹き飛ばせるのだがな。そうすればあのザッハークのヤツも俺様に怯えて出て来やしないはずだ」
黒竜王ヘックスは弱体化していて正解だと思う。
もし本気の彼がブレスを吐いたら山が吹き飛ぶどころかこの国すら吹き飛ぶ。
「しかしどうも解せないねェ。ユカ、妾達が休んでいる間に一体何があったのかねェ」
ボクは大魔女エントラ様達に呪われた老婆の話や、邪神ザッハークの手下の男の話をした。
「成程ねェ。つまり、ユカは良い事をしたけど、村人達はユカがいながら何故長老の老婆が命を落とさなければいけなかったのかと怒っている。でもその老婆は呪いを解いてもらい、恋人の元で命を絶った、そしてその魂がユカとエリアちゃんに宝石の在り処を教えたってわけだねェ」
流石は大魔女エントラ様だ、話をすぐに理解してくれた。
「でもその宝石、それほど村の宝みたいに扱われていたなら何かの力がありそうだねェ。妾に少し貸してくれないかねェ」
ボクが宝石を手渡すと、大魔女エントラ様は鑑定魔法で宝石の鑑定を始めた。
宝石が激しく光り輝く!
「……うん、コレは何かの魔法式が刻み込まれた古代の宝石だねェ。どこかで使う可能性は十分にありそうだねェ」
大魔女エントラ様はボクが受け取ったこの宝石が何かの際に役に立つアイテムだと言っている。
でもこれ一体何の役に立つのだろうか……。
ボク達は飛行艇グランナスカで空を飛び続け、森の上を飛んでいた。
そしてまた村があるのを発見した。
「あの村に降りてみようか」
「私は嫌ですわ、どうせ私達は招かざれる客なのですから!」
あーあ、ルームさんがへそを曲げちゃったよ。
仕方ない、彼女は降りない形で考えよう。
この国は邪神ザッハークを国の神として信仰している。
だから下手に創世神クーリエ・エイータを信仰しているホームさん達やエリアさんはこの国にいない方が良さそうだ。
なのでこの国の事を調べるのは、フロアさんサラサさん、大魔女エントラ様とアンさん、カイリさんとマイルさんの兄妹、それにシートとシーツの二人、最後に黒竜王ヘックスという事になるだろうな。
ボクやエリアさん、ホームさんとルームさんはもう一つの国である砂漠の国ディザードに向かう事になる。
「エントラ様、この国の事はお願いしますね」
「わかったからねェ。まあ、何か有れば魔力通話で連絡するからねェ」
「わかりました」
『ユカ。聞こえるかねェ、今テストしてるけど』
『はい、聞こえます。大丈夫です』
コレで離れていても大魔女エントラ様とボクは会話が可能だ。
「ユカ様、さっさとこんな国離れてしまいましょう!」
「わかったよ、ルームさん」
ボク達は大魔女エントラ様にこのチームのことを任せ、砂漠の国ディザードに向かう事にした。
「行くよ、グランナスカ、発進!」
ボク達を乗せた飛行艇グランナスカは、ザッハーク神国を離れ、遠方にある砂漠の国ディザードを目指した。
さて、砂漠の国ディザードには一体何があるのだろうか?
グランナスカは悠々と大空を飛び、ボク達は大きなオアシスのある街を見つけた。
あの街に行ってみよう。
ボク達はグランナスカを着陸させ、砂漠を歩いてオアシスのある街に到着した。
ボク達が街に入ると辺りはすっかり夜になっていた。




