855 村人を傷つけないように
ボクとエリアさんが見ている前で少女は自ら溶岩に飛び込んでしまった。
結局命は助けられなかったが、死んだ後の二人がボク達に話しかけてきた。
『ありがとう。優しい旅人よ。僕はこの山で命を失いました。それ以来彼女の事がずっと気がかりで……ここで彼女の事を考えていたのです』
『坊や、わしは命と引き換えに本当に大事なものを手に入れる事が出来たのじゃ。わしの事を悔やむ必要は無い。コレはわしの望んだ事なのじゃ……』
『お前……しばらく見ない間にお婆さんのような喋り方になったんだな』
『バカをお言いでないよ、あれから何十年経っていると思っているんだい!』
ボクとエリアさんに二人の言葉が聞こえてくる。
『旅人よ、僕達はあなた達にお礼をしたい。あの家がまだ残っているなら……僕の部屋だった場所に婚儀の際に使うはずだった物があるはず。この子が無くして無い限りそれは残っている』
『アレの事? わしはアレが未練になっていて、あれ以来お前さんの部屋には入っておらんのじゃ。当時のままになっておるわい、安心しろ』
『そうか、それなら安心したよ。さあ、優しい旅人よ、僕の部屋にある宝を持って行ってくれ……もう、僕達には必要のない物なのだから……』
一体何の事を言っているのだろうか。
でもお礼にくれるというならそれを受け取らせてもらおう。
『さあ、僕達はもう行くことにするよ。さあ、お前……行こうか』
『はい、あなた……』
そして、光の中に二人の恋人たちは消えていった。
さあ、村に戻ろう。
ボク達が村に戻ると、村人達がいきなりボク達を囲んだ!
「おばば様をどこにやった! 答えろ!」
「か、彼女が……山に行きたいと言ったので連れて行ったんです」
「それで、何故おばば様はここにおらんのだ! もしや、捨てて来たとかいったら絶対に許さんぞ!!」
あの老婆、実はこの村ではかなり慕われた人物だったんだな。
本人は呪われて孤独だったと言っていたけど、これほどまでに村人が彼女を大事に思っていたなんて……。
「彼女は……火山に身を投げました」
これしか言いようがないんだから、仕方ない。
ボク達は村人達に追いかけ回された挙句、彼女の家だった場所に逃げ込んだ。
そこでカギを閉めたボク達は彼女の言っていた旦那さんの部屋に入り、ボク達にくれると言っていた物を探した。
そこにあったのは……何かの宝石だった。
コレは一体何なのだろう?
確かに綺麗で首飾りのような形をしているので、婚姻用に使われる物だったのは見てわかる。
ボクはそれを手に入れ、その部屋を離れた。
家を囲んでいる群衆は完全に頭に血が上り、ボク達を許さないみたいだ。
このままではどうやって外に出れば良いのだろうか……。
今ここにいるのはボクとエリアさんだ、でも戦えるのはボクだけ。
あんな群衆程度ならボクが本気出さなくても一気に切り抜けるのは可能だけど、それでは村人達に犠牲者が多数出てしまう。
だから下手に手を出すわけにもいかないので、ボクは地下室に飛び降り、マップチェンジを使った。
「この地面を溶岩にチェンジ!」
これでもし井戸水の所まで穴を開けることが出来ればそこから地下を通って外に出られる。
ボクは流れた溶岩が空けた穴を少しずつ普通の地面に戻し、井戸まで溶かし進めた。
――やった、井戸の水脈に到着した!――
ボクはそのまま井戸の空洞を通り、村の外の崖から外に出る事が出来た。
さあ、村に戻ってみんなを連れて脱出だ!
ボクとエリアさんは村の外れの家にいた仲間全員に声をかけ、この村を離れる事にした。
その際にわざと親切にしてくれたおばさんに少しキツイ態度で外に逃げ出した。
こうしておけばあのおばさんがボク達のせいで村八分になる事は無いだろう。
みんなは何だか不満そうな態度だったが、後で詳しく説明しよう。
ボク達は村から脱出し、飛行艇グランナスカに向かった。




