853 明かされた事実
ボクはエリアさんの魔力のおかげで、死んだ男の言葉を聞けていたがまあ何とも酷い内容だった。
『こんなとこでくたぼるなんて、それにオレのかけた呪いが解かれたというのかよ!? テメェら……一体何者だ?』
「お前こそなんだ! なぜ彼女を襲った!?」
『幸せそうだったからだよ、オレが国を追い出されて死にかけてたどり着いたこの村で、一番幸せそうにしているやつを見かけたから襲って寝取ってやろうとしたんだよ……まさかそれで返り討ちにされるなんて、死んでも死に切れねえ、だから死ぬまで解けない呪いをかけてやったんだよ』
なんという身勝手なやつだ!
あの老婆になった女性はこんなヤツのために苦しめられたというのか!
ボクはコイツの骸骨を思いっきり蹴り飛ばした。
『オレに触れたな、てめえも呪ってやる。一生苦しめてやるからな!」
だが何も起きなかった。
コイツ、何をしようとしたのだろう?
『な、何でだよ!? 何でオレの呪いが……?』
そうか、コイツのレベルはボクよりよほど下だからなのだろう。
それなら呪いが意味をなさないのも当然だ。
「エリアさん、浄化の魔法をお願いします」
「ユカ、わかりました」
エリアさんが浄化の光を照らすと骸骨が苦しみ出した。
『や、やめてくれ! たすけてくれ。オレは消えたくない……。頼む、何でも話すから』
この骸骨、アリアさんの魔力に恐れをなしたらしい。
「何でも、か。それならお前の知っている事を全部話してもらおうか!」
『へ、へへ。わかりましたよ。旦那……』
典型的な小物だ。
弱いと思った相手には当たり散らし、強いと感じた相手には媚びる。
まあこんなヤツに比べたらボクは世界最強レベルの黒竜王や機械の破壊神を倒した強さなのでコイツ程度の強さではボクに全く勝てるわけが無い。
「まず、お前は一体誰だ?」
『オレは……ただの名も無い旅人だ。国から逃げた際に名前は捨てた』
「ふざけるな、そんな言い訳が通用するか! ボクはお前をすぐにでも消す事が出来るんだぞ!」
『ヒイイ、プリズンです。オレはプリズン……男爵の三男坊だった、だがオレは国から追い出されたんだ!』
男爵だって、という事はコイツは悪徳貴族の一人だったわけか。
「プリズン、お前はなぜ国を追い出されたんだ」
『ヒイイッ、オレは女に手を出した、だがその相手が貴族の愛人だったのでオレは命からがら逃げて来たんだ』
コイツ、マジでどうしようもないな。
「お前は国から追い出されたと言っていたが、その国はどこだ?」
『もう無い国だ、名前を言っても多分知らないだろうよ。それで国を追い出されたオレは邪神ダハーカの信徒の仲間になり、村を滅ぼす為の命令を実行しようとした。その際に行き倒れの旅人のフリをしてこの村に入り込んだんだ』
「邪神……邪神の名前はグリエータではないのか?」
「あの……言いにくい話ですが、この世界の邪神はダハーカです。ヤツは三つの姿と名前を持っています。それが、ザッハーク、ダハーカ、そして魔王ゾーンなのです」
ボクの説明を聞いた元老婆の少女が頭を抱えている。
「そんな、わしらはザッハーク神の為に日々祈っておった。その神こそが邪神だったなんて……」
彼女にはとても信じられないだろう。
しかしそれが事実だとして受け入れられるのだろうか。
『これでオレの知っている話は全部だ。さあ、もうオレを見逃してくれ』
「そんなワケ行くわけないだろ! お前はここで消えるんだ!」
『ヒイイィッ』
ボクは新生エクスキサーチで男の骸骨を切り裂いた。
このオリハルコンの剣、聖なる属性も備えているので、普通に斬っただけで浄化の力になる。
『ギャァアアアッ! 苦しいぃいい!』
「消え去れ、邪神の手下め!」
ボクが新生エクスキサーチで骸骨を砕くと、粉々になった骸骨は光の中に消滅した。
こんなヤツにエリアさんの浄化の力なんて勿体ない!




