852 死人の声
ボクはエリアさんの力がどんなものか知っている。
だが、流石に若返りの力が有るとは聞いていない。
コレは若返りをスキルで与えたのではなく、もっと別の要因なのだろう。
つまり、ボクの目の前にいた老婆が若い少女になったのは、若返りではなく、与えられていた呪いを解いた事で、呪われる前の状態に戻ったと言える。
「こ、これは……わしになにがおきたのじゃ?」
老婆だった少女は、あまりの信じられない事に驚いている。
そして、鏡を見た少女は、思わず鏡に手を付けた。
「これは、わしが結婚式をするはずだった時の……信じられん。一体どうなっておるのじゃ??」
「実は、黙っていましたが……ここにいるエリアさんは呪いを解く神の力を持っています。エリアさんが、貴女にかかっていた呪いを解いたので貴女は呪いを受ける前の姿に戻ったというわけです」
「信じられんが、信じるしかなさそうじゃ……無い! わしの呪いを受けた痣が体のどこにも無い!!」
彼女をそう言って自身の豊かなおっぱいを見て驚いていた。
どうやら元はわからないが、呪いの刻印がそこに刻まれてしまっていたのだろう。
「おお、神の奇跡じゃ。ザッハーク様、感謝致しますぞ……」
「あの、大変言いにくい事なのですが、いいですか……?」
「なんじゃ、ひょっとしてワシに愛の告白でもしようというのか? まあ若い頃のわしは村中で一番の美人と言われておったからなぁ」
「そうじゃありません。アリアさんの力はザッハークではなく、創世神、クーリエ・エイータの力なんです」
それを聞いた少女は驚いていた。
「な、どういう事じゃ? わしは邪神の信徒になった代償として呪いを解いてもらったというのか??」
「違います! いいですか、よく聞いてください」
ボクは、この世界を作ったのが創世神クーリエ・エイータであり、反対に世界を滅ぼそうとしているのが邪神ザッハークだと彼女に伝えた。
「信じられん。そんな事、それではわしの人生はなんじゃったというのじゃ?? 敬虔なザッハーク様の信徒として長い間生き続けてきたというのに、わしが間違ってあったというのか??」
まあ長年信じ続けてきたものが間違いだったなんて言われたらそりゃこうもなるだろう。
「本当にこの世界を作ったのは創世神クーリエ・エイータなんです。ザッハークはその世界を奪おうとした邪神なんです」
「やめてくれ、わしの頭が痛くなってくる……」
少女はまだ信じられないようだ。
——そうだ、確かエリアさんなら死者と会話できるはず!——
彼女を襲おうとして刺された男、コイツなら何かを知っているかも知れない。
「エリアさん、お願いがあるんだけど」
「何ですか?」
ボクはエリアさんに倉庫で白骨になっていた男と会話してもらおうと考えた。
ボクは少女とエリアさんを倉庫に連れて行き、白骨死体の前に立ってもらった。
死体は死後数十年経っているが、それでもここにその魂が残っているのだろうか?
「貴方は、何故殺されたのですか?」
エリアさんが死体に話しかけた。
『オレを殺したのは、そこにいる女だ……だが、何故ソイツが昔のままの姿なんだ!?』
これはエリアさんの力なのか。
ボクが彼女に触れている間、ボクにもこの死んだ男の声が聞こえてきた。
『よくもオレを殺しやがったな。新婚の男を寝取ってやるチャンスだったのに……まあその後火山を爆破させて証拠を溶岩で流してしまえばオレは何事もなく国に帰れたはずだった……』
その殺された男、どうしようもないクズだったんだな。
こんなヤツを殺してしまった事で呪われた彼女が可哀想すぎる……。
『それなのに、オレの呪いを解きやがった! てめえら、何だよ!? あの火山の爆発まで食い止めやがって、おかげで生贄を捧げる事でオレが復活する事が出来なくなってしまったじゃねえか!!』
コイツ、マジで生かしておいてはいけないクズだったんだな。




