848 押し寄せる溶岩
ボク達はどうにか魔法で火山のふもとの村に戻ってきた。
当然ながら村の人達はボク達に驚いている。
それもそうだろう、見た目のみすぼらしいボロボロのボク達がいきなり全力を出した姿を見たわけだから。
「あ、アンタら一体……、まあいいさ、さっさとこの村を出ていきなさい、ここはアンタらにはもう関係ない場所だからね」
「おばさん、それはどういう意味ですか!?」
「よそ者はさっさとこの村を出て、あたしゃ怒って言ってるのよ、そんなこともわからないのかい?」
昨日まで優しく接してくれたおばさんや村の人がボク達を必死で追い出そうとしている。
「まったく、余所者が現れた上、山に登ったからついに山神様が怒ったのじゃ。その忌々しい余所者をさっさと追い出せ!!」
長老かそれに準ずると思われる老婆がボク達に出て行けと叫んでいる。
これは彼女達の本心なのだろうか?
ボク達は子供に聞いてみる事にした。
「ねえ、なんでキミ達は逃げないの?」
「うちらはこの山のおかげで生きてこれた。その山神様が怒るならその怒りに身を任せるのは良き村人の義務なんです。貴方達のような余所者にはわからないでしょうけど……」
なんという事だ、この村では火災や噴火に巻き込まれてもそれで滅びるのは運命だと思っているようだ!
ボク達は昨日の夜この村の人達に少ない収穫の中から食事を出してもらいもてなしてもらった。
それなのに何もせずこの村が滅びて村人達が全員死ぬのを指を咥えて見ているなんて出来るわけがない!!
火山の爆発は村から見てもすぐにわかるレベルで大噴煙を上げている。
もうすでに噴火の噴石が村の家に落ちては火災を起こしている。
この村の建物は石よりも木で出来ている建物が多いので火災必須だ。
「エントラ様、ルームさん、アンさん、この火災を食い止めてもらえますか?」
「わかったから、好きにしてもらうからねェ!」
「私も困っている人を見殺しには出来ませんわ」
「ミクニの雨と雲を司るワシにかかればあの程度の火なぞ涼風に過ぎぬわい」
水や冷風を使いこなす最強の魔法の使い手が三人いる、これなら村の火災はどうにか食い止められそうだ。
だけど、山からはすごい勢いで溶岩と灼熱の土石流が押し寄せている!
このままあれが村に到着してしまえばこの村はひとたまりも無く全滅だ!
ボクは火災の救助をみんなに任せ、ボクだけの出来る事をしようと土石流の方に向かった。
「あ、坊や。悪いことは言わないからお逃げなさい」
「おばさん、ボクがあの災害を食い止めてみせます! みんなと避難してください!」
おばさんはボクの目の気迫に押されたのかそれ以上は言葉を話さなかった。
ボクは走って山の方を目指した。
——そう、ボクだけの使えるスキルでこの村の人達を助けてみせる!!——
ボクは大きくてを掲げると大きな声で叫んだ!
「目の前の地面を巨大な土壁にチェンジ! そしてこの手前の地面を深い溝にチェンジ!!」
ドガァァァアンッ!!
村に押し寄せる寸前だった溶岩と土石流はボクの作り出した巨大な土壁に阻まれ、二つに分かれて村の周りに作られた溝に流れ、そのまま海に向かう川の方に流れていった……。
良かった、間に合った……。
ボクはマップチェンジのスキルを使い、溶岩と土石流の押し寄せる村を救った。
本当は隠さなければいけなかったスキルだけど、人を助けるためなら仕方ない。
ボクは村の人達から奇異の目で見られた。
だけど後悔はしていない。
目の前で大勢の人達の命が失われる姿を見る方がボクにはよほど辛かったからだ。
ボク達はその後も魔法を使い、村の火事を消してボクは泉を村の中にマップチェンジで作り、被災した人達を助けた。
「……おぬしら、本当は難民では無いな、ここに来た本当のことを言え!」
長老らしい老婆がボク達に高圧的に質問をしてきた。




