846 嫌な予感のする山
ボク達全員が大魔女エントラ様の魔法で、城の前にこんな姿の連中が現れたら追い返されそうな見た目になった。
全員が擦り切れてボロボロの服装だ。
そして肌も荒れたようなゴワゴワした感じになっている。
実際は見た目だけで中身は何も変わっていない。
だが難民として逃れてきたという形に見せるために全員がこのような姿になっているのだ。
「さて、これで問題はなさそうだねェ。それじゃあそろそろ出ようかねェ」
「ユカ様、お気をつけて」
ボク達はゴーティ伯爵に見送られ、城を出た。
飛行艇グランナスカに乗ったボク達はグランド帝国を離れ、まずはザッハーク神国に向かう事にした。
この国は蛇の神ザッハークを信仰する異国家だ。
ここの国ではむしろ邪神としてグリエーダが忌み嫌われる存在だと言われている。
所が変われば信仰対象も変わるものだな。
ボク達は飛行艇グランナスカを森林の中に隠し、近くの村か町を探した。
すると、木で出来た家がいくつもある村が近くに見つかった。
「おんや、アンタらはだれかね?」
「ボク達は、グランドから逃げてきました。あの国では貴族がやりたい放題で……ボク達は命からがら逃げてきました」
「おんやまー、そりゃあ大変だったねぇ。まあ.うちにおいで。何か食わせてやるでさ」
国は違ってもここの人が悪人というわけではなさそうだ。
ボク達はおばさんに家に呼んでもらい、食事を食べさせてもらった。
この料理は肉の串焼きと野菜の煮込んだスープで、匂いは独特のものだった。
「さ、何も無いけどお食べ。本当ならそろそろザッハーク様の祭りが始まるはずなんだけどね、今年は凶作でなかなか食べるものが手に入らないから……今あるそれで勘弁してちょうだいね」
おばさんはボク達に料理を出してもてなしてくれた。
「あの、ザッハーク様って何ですか?」
「あら、アンタ達。ザッハーク様を知らないって事はよそ者だね。ザッハーク様はこの世界を作った神。邪神グリエーダのせいで今はお隠れになっているけどね。いつかザッハーク様がよみがえり邪神を打ち倒すと言われている伝説を再現したのが祭りなんだよ。だけど今年は中止かね」
どうやらこの国ではクーリエ・エイータが邪神でザッハークが正しい神だと思われているようだ。
まあ所変わればなので、ボク達がクーリエ・エイータの関係者だとは絶対に言わない方が良さそうだ。
「アンタ達、すごい格好だけどどうしたんだい?」
「すみません、ボク達、隣の国の貴族の仕打ちに耐えきれなくて逃げてきたんです……」
「そうかいそうかい、辛い目にあったんだね。まあここは何も無い村だけど、ゆっくりしていきなさい」
「おばさん、ありがとうございます」
ボク達がおばさんと話をしていると地面がいきなり揺れ出した!!
「うわっ!」
「キャアッ」
「地震だ、みんな何かに捉まれっ」
ボク達は地震をどうにか耐え抜いた。
「ふう、久々だね.ここはたまに地震が起きるけど!あまり気にしないでね。地震が起きるだけだから落ちてくる岩だけ気をつければ死ぬ事はないから」
どうやらこの村の人達はこの地震に慣れているらしい。
聞いた話だと三日に一度は地震が来るそうなので、誰も驚かないんだそうだ。
むしろ驚くのはよそ者くらいなんだと……。
——でもボクは何か嫌な予感がした。——
この地震、普通のものでは無い。
この村の人は大したことがないと言っているが、何か凄く恐ろしい事が起きる気がする。
「すみません、あの村の裏にある大きな山は何ですか?」
「ああ、アレがザッハーク様を祀る山じゃ。ザッハーク様はあの山からいつもあたしらを見ておる。だからこの村は安泰なんじゃ」
いや、あの山は何かもっととてつもない何かがある。
『ユカ、何か感じるか?』
『はい、ソウイチロウさん。あの山には何かとてつもない物があります!』
ボク達は村の人を助ける為にあの山に登る事にした。




