844 ボルケーノ様の絵
ボク達はボルケーノ様の家を出て二手に別れる事にした。
片方は森林の国と言われているザッハーク神国、もう片方は砂漠の国ディザードだ。
ザッハーク神国は蛇の神を祀る宗教国家。
そしてディザードは砂漠に存在する国、遺跡群が多く存在する場所だ。
公爵派貴族によるゴルガ文明の遺跡発掘はこのディザードとの国境付近で行われていたので、ここは紛争の絶えない地域だとも言われている。
つまりどちらもグランド帝国からすると敵国と言えるだろう。
だがこのグランド帝国にいたとしてもグランド皇帝が世界征服の野望を企んでいる。
ボク達は確かに救国の英雄と言える。
だが、もしあのグランド皇帝が野望に燃えて軍を繰り出せば、ボク達は彼にとって邪魔者にしかならない。
だからボク達はここにいるわけにはいかない。
それよりはザッハーク神国、砂漠の国ディザードでできる事、わかる事を探した方がいい。
ボク達は次に何をするべきか、ボルケーノ様はそこまでは教えてくれなかった。
知らないのか教えてくれないかわからないが、この先はボク達がどうにかしないといけないようだ。
「これを持っていきなさい、路銀の足しにはなるぢゃろう」
そう言ってボルケーノ様は絵を渡してくれた。
「これは?」
「儂の描いた絵ぢゃ。売ればそこそこの値段にはなるわい」
それを聞いたホームさんとルームさんが驚いていた。
「ボルケーノ様の絵だって!? それ、下手すれば城が一つ買えるレベルの物ですよ!!」
「そんな大したもんぢゃないわい。若い頃糊口を凌ぐのに描いた物が残っておっただけぢゃて」
「それじゃあ尚更ですよっ! 若い頃のボルケーノ様の絵なんて今じゃ価値が上がりすぎてて欲しがる貴族は山ほどいるんですから!!」
そんな凄いもの貰ってしまっていいのだろうか……。
「あんなもんでよければいくらでも持ってけ、儂の若気の至りぢゃ」
「いくらでも、って……そんな、もらえませんよ」
「欲のないやつぢゃのう。だがもし反対にこれをくれときた奴には一切くれてやるつもりはないけどな。はっはっは」
ボクは流石に絵を二枚ももらうわけにはいかないと思い、一枚だけ受け取ってその場を離れる事にした。
「ボルケーノ様、ありがとうございます」
「なーに、あの美味いシチューの代価ぢゃて。また来る時はあの匂いを嗅がせてくれ、そしたらこの扉を開けてやるからのう」
ボルケーノ様はよほど母さんのシチューが気に入ったようだ。
まああの絵が母さんのシチューの対価って、母さんのシチューは芸術家の絵に匹敵するほどのものなのか。
「わかりました、また母さんのシチューを持ってここに来ます」
「待っておるからのー、あ、そうそう、ゴーティのヤツにもよろしくなー」
そういえばボルケーノ様はゴーティ伯爵の師匠でもあったんだよな。
「わかりました、父上にもボルケーノ様が元気だったとお伝えしておきます」
「頼んだぞー」
ボク達は手を振り、再び森の中に戻った。
森の中は入り口に戻されるのは一瞬で、出口からはすぐにトラップのおかげで飛行艇グランナスカのある場所に到着した。
とりあえず一旦ゴーティ伯爵のいる城に戻ろう。
ボク達は飛行艇グランナスカに乗り、空に飛び上がった。
次の目的地はゴーティ伯爵の城だ。
この絵を持って運ぶわけにもいかないので彼に預かってもらう事にしよう。
飛行艇グランナスカは南に向かい、そこからゴーティ伯爵の城を目指した。
さて、次に向かうのがザッハーク神国と砂漠の国ディザードだ。
ゴーティ伯爵なら何か知っているかもしれない。
さて、ボルケーノ様に会えた事を彼に伝えないと。
僕たちの乗る飛行艇グランナスカはゴーティ伯爵の城に到着した。
そして伯爵にボルケーノ様の絵を手渡すと、彼はとても喜んでいた。
その絵は若き日のゴーティ伯爵とヴェッソーさんの絵だったのだ。
多分ボルケーノ様はボクがこの絵を売らないとわかっててこの絵を渡したのだろう。




