843 ザッハーク神国と砂漠の国ディザード
しかしまさか、あの世界最強と言われた黒竜王ヘックスがこんな形で弱体化するなんて……。
「こらー、俺様を元の姿に戻せ!!」
「だから無理なもんは無理ぢゃといっておるぢゃろうが。どうしても元の姿に戻りたければ、魔力を蓄える事ぢゃな」
「だったらその魔力を俺様に食わせろ! そうすれば元に戻れるのだろう」
だが元に戻らない方が本音ボク達には助かるんだが……。
「仕方ないのう、それじゃあワシの知る限りのヒントをやろう。お主らはこの国の外に出るがいいぢゃろう。そしてザッハーク神国か、砂漠の国ディザードに行くがよい、そこに何かおぬしらの求めるものがあるはずぢゃ」
ザッハーク神国、蛇の神ザッハークを信仰すると言われているが、どうやら黒竜王ヘックスが昔戦った相手がそのザッハークだと聞いたので、間違いなくボク達の敵だとも言えるだろう。
それとは別のディザードという国、ボクは名前も知らなかった場所だ。
砂漠の国というだけに巨大な砂漠の中にあるのだろうか……。
まあいくら砂漠の中でもボクのスキルがあれば水は確保可能だし、エントラ様の力なら食べ物を異空間に腐らないように保存する事も出来る。
その上、ボク達には飛行艇グランナスカがあるので、そんな砂漠でも飛んでいけるはずだ。
「みんな、それじゃあ行くとしたらどちらの方が良いと思う?」
「そうねェ。とりあえずは……砂漠の国に行った方が良いんじゃないかねェ」
「俺様はザッハークに行くべきだと思う。かつて俺様が倒したザッハークが神として信仰されている国があるとは、気になるではないか」
ボク達の意見は真っ二つに分かれてしまった。
ディザード王国に向かうべきだという意見と、ザッハーク神国に向かうべきだという意見。
どちらも正しいとも言えるし間違っているとも言える。
「ボルケーノ様、ボク達はどちらに行けばいいのでしょうか?」
「うーむ、儂が決める事ぢゃないのぢゃがなぁ。まあどうしても行きたければ、どちらも行ってみればいいのではないのか?」
そりゃそうだが、どちらもに行くとして……どうすれば。
「でもどちらもに行くって言われても、どうやって」
「そんなの簡単ぢゃろうが。片方の場所でそこに行くパーティーだけ降ろして残りは別の場所に向かえば良いだけぢゃろうて。お前さんらは全員一緒でないと動けんのか?」
まあそう言われればそうだ。
それじゃあチーム分けをする必要がありそうだ。
「わかりました、それじゃあボク達は二手に分かれて行動してみる事にします」
「待て、エリアちゃんはザッハークにはいかん方が良いぢゃろうて。あの国では邪神と言われているのがグリエータと呼ばれておる。世界を破壊した邪神の名前としてのう……」
一体どういう事だ!? エリアさんの半身であるクーリエ・エイータが邪神扱い??
「そ、そんな……」
「まあ所変われば……というやつぢゃな。だからエリアちゃんは砂漠の国ディザードに向かった方が良さそうだ」
「それなら俺達もザッハークには向かわない方が良いのか? 俺達の村ではザッハークこそが邪神と言われていたくらいだ」
フロアさんやサラサさん、それに黒竜王ヘックスにとっての敵が邪神ザッハークというわけだ。
「いや、むしろお前さん達はザッハーク神国に向かった方が良いぢゃろうて。ザッハーク、ダハーカ。これらは同じモノと儂は睨んでおる、それに復活するかと言われておる魔王ゾーン、これらの情報がまだ儂には憶測でしかないんぢゃよ。それをもし調べてきて貰えるならここに戻って来た時、素晴らしい物をお前さん達にやろう」
どうやらボルケーノ様にとってもザッハークは敵のようだ。
「この国を乗っ取ろうとした悪徳貴族どもはザッハーク神国と組んでおったようぢゃ。儂が命を狙われたのもそいつ等の手下ぢゃからな……」
なるほど、それでボルケーノ様はあの入り口のトラップを仕掛ける必要があったわけか。




