83 遺跡の剣(エクスキサーチ)VS魂喰らい(ソウルイーター)
「銀狼王!」
「グルルル……(森の民よ……)」
「無茶だ! それ以上動くな!」
「グゥウ(否)」
フロアさんがロボに無理をしないようにたしなめていた、しかしロボはそれでも動けないホームを守りその前に雄々しく立っている。
「最高の魂だ! この深み……このコク、今まで屠った中でも最高のモノよ!」
「グルルルルルグガァアア!(貴様に簡単にくれてやるほど我の命は安くはない!)」
「流石は長年生きた古狼よ! 邪神の捧げものにはふさわしいわ!」
アジトが魂喰らいを構えた、奴のターゲットはホームからロボに変わったようだ。
「だが……オレは美味しい物は最後にいただく主義なんでな! お前は後回しだ!」
アジトは剣先の向きを動けないルームの方に変えた。
「女魔導士……お前はこのオレを焼き尽くそうとしたな……! なぁに、それを怒ってはいない。それよりもそれだけ高貴な意思と魂だ。さぞ素晴らしい育ち方をしたのだろう!」
「わ……私に何を!?」
「それだけ綺麗な色の魂だ! 先程のクソ不味いソークツとドークツの口直しをさせてもらおうか!!」
最悪だ! アジトの標的は魔力切れの上、体力も限界で動けないルームに移った!
「い……嫌……嫌ですわ……。こちらに……来ないで」
「素晴らしい! その怯えた表情。魂の色が鮮やかに揺らいでさぞ食い応えがあろう!」
私のいる位置からルームの位置は少し遠い。
更にアジトが必殺技を撃つ前に彼女を助けるにはタイミングが足りない。
だからとマップチェンジで奴を倒すには情報量が少なすぎて危険だ!
「ルーム!」
「ユカ……様。助けて……」
ルームは普段の自信家な態度は微塵も見えず、ただの怯えた無力な女の子になっていた。
「私に……ルームさんを助ける力があれば……良かったのに」
エリアはレザレクションスキル以外で使える戦闘系スキルは全く持っていない。
「俺は無力だ! 動物がいないと何もできないのか!?」
フロアさんも打つ手がない、銀狼王もホームを守るだけで精いっぱいだ。
「ルーム……ボクが君を守る!」
しかし、私にもどうすればあのアジトを倒せるのかが何も思いつかない。
奴は骨片、下手すれば一かけらの細胞からすら復活できるのだ。
だが、ルームを襲わせるわけにはいかない、今戦えるのは私だけしかいないのだ!
「アジト! ボクが相手だ! かかってこい!」
「ああ、お前の相手はしてやるよ! だが先にこの女の魂を食らってからだ!」
ダメだ! 挑発も通用しない。このまま私達はルームがアジトに魂を喰われるのを見ているだけしかできないのか!
「さあ! お前の魂を喰わせろォォォ!」
ルームに魂喰らいが振り下ろされた!
「キャアアアア!!!」
ズシュッ!!
魂喰らいが肉を切り裂く音の直後……一瞬の沈黙があった。
その時私の目の前に映ったものは!
「クウウウウウウウウウ」
ルームの身体を守ろうとその白き巨体を前面にさらけ出したブランカの最後の姿だった!
「ガオオオオオオオン(ブランカァァァァ)」
なんと、銀狼王とブランカは私達を守る為に自らの命を投げ打ったのだ!
「うーぬ。これも想定外だったが……これはこれで美味い魂だ!」
「貴様……許さん! ボクが相手だ!」
私は考えるよりも先に飛び出していた! そして遺跡の剣でアジトを滅多切りにしていた!
「ガッ! グオッ! ゴハァッ!」
遺跡の剣はアジトの全身をいとも容易く切り刻んでいた、しかしアジトの回復力は斬られた直後にその傷を回復させていたのでいつまでも決着がつかない。
「ほう、オレの魂喰らいとまともに戦える剣があるとはな!」
「ボクの剣はお前のモノとは背負っている重さが違うんだ!!」
「面白い! 貴様のその魂、その剣を叩き折って喰らってくれるわ!!!」
「この遺跡の剣はお前ごときの魔剣では折れはしない!」
そして私とアジトの二人だけの血戦が始まった!!