839 家の中に入る方法
とりあえずどうにか家に入らないと。
しかしボルケーノ様らしい人はボク達をこの家の中に入れてくれるつもりはなさそうだ。
「ああ面倒くさい! こんな扉、蹴破ってしまえばよかろう!」
黒竜王ヘックスが案の定入り口を蹴っ飛ばそうとした。
だが、扉に触れた瞬間、地面が穴が開いた!
「フン、こんな落とし穴程度で俺様が落ちるとでも思ったか!」
ガンッッ!!
黒竜王ヘックスは上から落ちてきた攻撃を喰らい、穴の中に落ちてしまった。
しかも、この攻撃……相手の能力を吸い取る魔石で出来ていたらしく、身体に触れ続けている限り魔力を吸い取られ続けるようで、黒竜王ヘックスは小さなトカゲくらいのサイズになってしまった。
「コラー! 俺様を元の姿に戻せー!!」
どうやら力押しでこの扉を開けるのはダメそうだ。
扉に触れた瞬間下に穴が開き、それを避けようとしたら上から魔力吸収石が落ちてきて魔力を吸い取られた上小さくされてる攻撃を喰らってしまうようだ。
これだけのセキュリティがあればそりゃあ安心して暮らせるだろうけど、どうやって扉を開けるか、それが問題だ。
扉を押すのが無理なら、別の方法があるのかも。
「ユカ様、俺がやってみます。この扉、押してダメなら引いてみましょう!」
オリハルコンの鞭の先端に矢を付け、サラサさんが弓を引いた。
今度はどうにか扉に矢が刺さったので、フロアさんとサラサさんは扉を開こうと思いっきりオリハルコンの鞭を引っ張り、それにシートとシーツも協力した。
だが扉は全く開く気配を見せず、思いっきり引っ張ったフロアさん達は引っ張った力の分反対に反動で引っ張られ、全員が落とし穴に落ちてしまった。
「仕方ないねぇ、それならこれでどうかなぁ? あの扉って植物なのよね、それなら植物を成長させて扉を自ら破ってもらうわぁ」
今度はマイルさんが植物の習性を利用し、扉の木を成長させてぶち破ろうとした。
確かに蔓は生えてきたが、扉の外に生えた蔓は暴走し、マイルさんを絡め取って落とし穴の中に放り込んでしまった。
――押してもダメ、引いてもダメ、搦め手もダメ。――
ボルケーノ様は何があってもこの扉を開く気は無いのだろうか。
「えーい、わざわざ扉から入る必要ないだろーがよー。それならむしろ窓から入って内側から扉を開ければ扉を開けたという事にならないのかよー?」
今度はカイリさんが槍を使ってジャンプして窓から中に入ろうとした。
だが窓を蹴破ろうとした時、透明の窓はぶよぶよのスライムの様になり、カイリさんは窓にくっついてしまった。
「仕方ないのう、ワシが助けてやろう」
「すまねー、ドジッったー」
アンさんが飛び上がって窓に取り込まれたカイリさんを引きはがそうとしたが……今度はアンさんも窓のスライムに身体を取り込まれてしまったようだ。
「なんじゃこれはぁー!? たわけ、このスライムどこを触っておる??」
結局、アンさんも捕まってしまった。
大魔女エントラ様、ルームさんはマジックキャンセラーのせいで全く役に立たない、エリアさんは出来る事が無い。
残ったのはボクだけか……でもここで扉を開けないで窓から入ろうとしてもスライムに取り込まれる、力ずくも魔法も使えない。
マジックキャンセラーのせいでスキルも使えないとなると、どうやってあの中に入ればいいのだろうか?
『ユカ、中に入れないなら中から出てきて貰えばどうだ?』
『ソウイチロウさん?? それはどういう事ですか?』
『そうだな、ボルケーノ様に外に出てきて貰おうという事だ。例えば家の中から出て来ざるを得ない何かを外で用意するとか……』
そうは言ってもどうすればボルケーノ様を家の外に出す事が出来るんだ?
家の中を火事にして外に出て来るとかにしても、窓から火を投げ入れようとしてもあのスライムの窓に弾かれる……。
さて、どうやったらボルケーノ様を外に連れ出す事が出来るのだろうか?




