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832 決死隊の結集?

 あっけない結果だった。

 あれだけ民衆を苦しめ続けたテリトリー公爵は、悪魔に魂を売り王都に攻め込もうとした。


 だが、ボク達がそれを食い止め、数万のアンデッドと魔族を倒し、テリトリー公爵もボクが倒した。


 さあ、この国の脅威が無くなったのでこれをグランド皇帝に報告に行こう。


 ボク達はアンデッド達が一体もいなくなったことを確認し、その場を離れる事にした。


 ——おっと、その前に。


「この土地に作った二つの土壁を元の地面にチェンジ!!」


 ボクは横に迫り出した土壁を元の平らな地面に戻した。

 流石に地形を変えたままにしておくと地図を元に旅する人が混乱するし、あんな狭い地形を残したままにしたら、弱い冒険者や旅人には反対にモンスターに追い詰められて殺されかねない。


 今のボク達の強さは世界のイレギュラーと言えるレベルなんだ。


 だからボク達には余裕で倒せたテリトリー公爵とアンデッドや魔族の大軍勢だが、以前の魔族と人間の南方での大決戦くらいのレベルだったら数千、数万人の人間の犠牲者を出してようやく勝てるレベルの敵だったのかもしれない……。


 つまり、ボク達は高い闇、ソウイチロウさんのいう宇宙空間であのバロールと戦った事で大幅なレベルアップしたと言える。


 あの怪物と戦ったおかげでオリハルコンも手に入ったわけだし、その前にアルカディアに行った事で飛行艇グランナスカを手に入れる事も出来た。


 ハッキリ言ってしまえば、この地上で既にボク達に勝てる奴なんているとすれば魔王か魔将軍、もしくは封印された古代兵器くらいだろう。


 下手すればボク達自身が世界の脅威と見られて敵視されかねない。

 あの魔将軍アビスならそのやり方をやってきてもおかしく無い。


 そう考えると、グランド皇帝を味方につけておいた方がいい、ソウイチロウさんがボクにそう伝えてくれた。


『ユカ、世界で大切な事は自身が強くなることもだが、それよりも仲間、特に後ろ盾を手に入れておく事なんだ』

『ソウイチロウさん、それがこの世界だとグランド皇帝に従っておく事なんですか?』

『そうだな。この国がユカ達の敵になる事は無くなるだろう。それに先程悪徳貴族の首魁を倒したからグランド皇帝も喜んで後ろ盾になってくれるだろうな』


 なるほど、やはり人生の経験者としてソウイチロウさんのアドバイスは的確だと思う。


 ボクはみんなに伝え、一度王都に戻る事にした。


「みんな、テリトリー公爵とアンデッドの大軍勢を倒した事をグランド皇帝に伝えに行こう!」

「そうですわね、わかりましたわ。ユカ様」

「そうだねェ、確かにそれを伝えないとここに無駄な軍勢を連れてくる事になりかねないねェ、下手すりゃもう準備してるかもねェ」


 もしそうだとしたら時間と人員の無駄になってしまう!

 それは早く止めないと!


 ボク達は飛行艇グランナスカに乗り込み、王都に向かった。

 どうやらもうすでに軍勢を結集して防衛しようとしていたようだ。

 ボク達は飛行艇グランナスカを低空飛行させ、中庭に着陸した。

 そして中から出てきたボクは軍勢の隊長に話をした。


「あ、貴方は……ユカ様! ご、ご苦労様ですっ!」

「隊長さん、この軍勢は何ですか?」

「これは、テリトリー公爵領に発生したアンデッドからこの国を守る為の決死隊です! ユカ様達こそ、こんなに早いお帰りとは、偵察ご苦労様です。それで、敵の軍勢はどれ程の数がいましたか?」

「もういないですよ」

「えっ!?」


 隊長さんの困惑も当然だろう。

 偵察に出たと思ったはずのボクが敵はいなかったと言ったわけだから。


「ボク達が全部倒しましたから、もう皆さんが出る必要は無くなりました。ボク達はその事を皇帝陛下にお伝えする為に戻ってきたのです」


 決死隊の隊長はボクの報告を聞いて唖然としていた。

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