831 クズは死んでも治らない
テリトリー公爵だった魔神が吠えた。
全身が真っ黒で、目だけが赤い。
大きさは人喰いクマを三倍ほど上回る大きさで、その背中には大きな翼が生えていた。
「何だ……あの化け物」
「人間を捨てるとあそこまで醜くなるのねェ」
「ダマレ、キサマラ……コウキナワシヲ、グロウスルト……ユルサンゾ……」
テリトリー公爵の成れの果てはこんな姿に成り果てても自らを高貴な存在だと思い込んでいるらしい。
既に理性も失い見た目もケダモノでしかないのに、安っぽいプライドにしがみつく姿は哀れとしかいえない。
テリトリー公爵の魔神は大きく吠え、口から炎を吐き出した。
通常の軍隊くらいなら一瞬で数千人が消し炭になるレベルの攻撃だ。
だが、その程度の炎、ルームさんのバリアフィールドの魔法で塞がれ、アンさんの喝の一息で吹き飛ばした!
「ナゼダ!? ナゼキカン??」
テリトリー公爵の魔神が吐いた炎はボク達相手には涼風にもならなかった。
ボク達が強すぎるのか、相手が弱いのか、答えとしてはどちらも正解だ。
今のボク達の強さは魔王すら倒せるレベルだ。
伝説の大魔女に加え、世界最強と呼ばれた黒竜王までもが仲間になり、最低でもこのパーティーのレベルが50以下がいない。
通常レベル40なんて人間はもう英雄どころか伝説クラスの世界でこの強さだ。
ボク達がどれだけの死闘を乗り越えて来たのかという証明ともいえる。
それに比べればあのテリトリー公爵の魔神はせいぜいレベル60前後、魔将軍相手に戦ってた時に比べれば余裕で勝てる相手だ。
「コノ、バケモノメ! キサマラサエ、イナケレバッ!!」
テリトリー公爵の魔神はボク達目掛け、炎と雷と吹雪の魔法を連発してきた。
本来ならこれだけの魔力を使いこなせる怪物なんて、街が壊滅するどころか国が傾くレベルだ。
だが、世界が終わるかもしれないレベルの破壊の機械神や暴走した黒竜王に比べればこの程度、相手にもならない。
コイツくらいならボク一人で倒せるくらいだ。
「みんな、手を出さないでくれ。コイツの狙いはボク一人なんだ」
「ユカ……キゾクノチツジョニドロヲヌルタイザイニンメッ! シネッ! シネッ! シンジマエッッ!!」
テリトリー公爵の魔神は手に集めた黒い闇のエネルギーを巨大な玉にしてボクにぶつけようとした。
それならこちらもやられる前にやってやる!
「アイツの足元を光の魔法陣にチェンジ!」
「グゲェエエエアアアアアアッッ!!!!」
どうやら効果は覿面のようだ。
テリトリー公爵は既に人間ではない。
魔族に魂まで売り渡したクズだ。
どうせコイツは死んだとしても改心しないだろう。
それなら完全に消滅させてやる!
「テリトリー公爵の足元の高さを天に届くまでチェンジ!」
「グワァアアアッ!!」
一気に突き上げられた地面に寄って空に叩きあげられたテリトリー公爵は、先程の光の魔法陣で浄化されしまい翼も使えずに空高くに舞い上げられた。
「ウ、ウゴケン!?」
そしてそのまま地面に凄まじい速度で落下し、ボクはその下に新生エクスキサーチを突き立てて待ち構えた。
「ヤ、ヤメロッ! ヤメテクレェェェェェェ!」
予測可能回避不可能。
テリトリー公爵の魔神は地面で待ち受けるボクの剣の真上から落下してきた。
ヤツはもう避ける事どころか身体を動かす事すらできない。
ズザシュッッ!!
落下してきたテリトリー公爵の魔神は、ボクの新生エクスキサーチの根元深くまで頭部が刺さり、絶命した。
魔神テリトリー公爵はそのまま新生エクスキサーチに刺さったまま、身体が風化し、最後には粉になって消え去った。
こうして、王都を襲うはずだったテリトリー公爵の変わり果てた魔神とその手下の魔族やアンデッドの大軍はボク達によってあっという間に全滅したのだ。




