828 オケハザマ、狭い場所の戦い方
ボク達が下を見下ろすと、そこには大量の魔族とアンデッドがいた。
かなりの大軍だ。
このアンデッド達の目的地は、王都の方向だ!
しかしいったいこのアンデッド達は何者なのか?
魔将軍アビスは姿を消し、今はかなり力を消耗しているはず。
そう考えるとアビスの軍勢という線は消える。
そうなると、考えられるのはやはり魔将軍ゲートかあるいはバグス……。
バグスは実際に黒竜王ヘックスを呪いで従え、暴れさせた前例がある。
だが、バグスの魔力は感じられない。
今この地面を蠢くアンデッドから感じるのは……強烈な殺意と憎悪だ。
これだけの殺意を持つ奴ら、一体何者か……。
死者と魔族の軍勢は周りの村を襲い、住人を次々と惨殺していったようだ。
死者の群れの中には女性や子供の姿も見える。
どうやらあのアンデッドは殺された相手に服従する呪いをかけられているらしい。
「かなり強烈な悪意を感じます。生者への憎しみ、いえ……それだけではありません。世界そのものを呪っているような感じです」
エリアさんが地面を蠢くアンデッドを見て何かを感じたようだ。
「あーもう、面倒くさいねェ、一気に焼き払ってしまえば良いんじゃないかねェ!」
「エントラ、珍しく意見が合ったな、俺様もあんな連中一気に焼き払えばそれでいいと思ったんだがな」
お願いだから止めてください、世界最強の二人が火炎魔法やブレスを使っただけでこの辺り全てが吹き飛びます……。
「お師匠様、それではこの辺りの地形が全て吹き飛んでしまい、復興が難しくなってしまいますわ」
「ルームちゃん、そう……あら、そうだったわねェ、忘れてたわ」
「なんだ、やらんのか。つまらんな……」
どうにか最強の二人の魔法による殲滅戦は止められた。
だが、下にいるアンデッドはどう見ても万を超す数だ。
これだけの数になるとどう考えてもあの王都の軍勢だけでは倒せる数ではない。
この数を少人数で倒す方法を考えてみよう。
『ユカ、私のいた世界での戦いに桶狭間の戦いというものがある。それは織田信長の三千の軍勢が今川義元の二万五千を倒した戦いだ。狭い場所で細長く陣列を組んだ大軍を少数で蹴散らしたのだ』
流石はソウイチロウさんだ! オケハザマってのが何かは分からないが、狭い場所を作ってそこであの大軍を一気に倒せばいいというわけか!
『それならボクのマップチェンジスキルで周りを高い壁にしてしまい、一部だけを穴開けてそこからあの大軍を迎え撃てばいいって事ですか?』
『そうだな、それなら確実に犠牲を出さずにあの大軍を倒せるだろう』
ボク達は地面に降りてあのアンデッドの大軍と戦う事にした。
「みんな、聞いてほしい。ボクがマップチェンジであのアンデッド達を囲い込む。そして一部だけ開けておくのでそこから一気にあの大軍を倒す!」
「流石はユカ様です! 僕も協力します」
「ユカよ、俺様も少しは暴れていいのか?」
「タワケ、お前は留守番じゃ。もう少し身体を休めろ。身体は治っても心はすぐには回復せんぞ」
黒竜王ヘックスはアンさんに窘められ、ここに残る事になった。
「さて、それじゃあ船は空に浮かしたまま妾が戦う者達を下に降ろせばいいんだねェ」
大魔女エントラ様が杖を掲げると、光の球が現れた。
「さあ、この中に入るんだねェ、そしたらすぐに下に降ろしてあげるからねェ」
そしてボク達はアンデッドの手前の地面に降り立った。
さあ、バトル開始だ!
「アンデッドの周りの地面を巨大な土壁にチェンジ!!」
ボクのマップチェンジスキルでアンデッドの大軍は巨大な土壁の中に閉じ込められた。
さて、一気に蹴散らしてやる!
ボクは新生エクスキサーチを構えた。
敵は数万、こちらは数人、オケハザマよりもよほど数の差があるが負けるわけにはいかない!




