825 アイツだけは許さん!
「そうか、バシラとテラスの子孫か……俺様が寝ている間にそんなに長い年月が経ったのだな」
黒竜王ヘックスはボク達の事をジッと見ている。
「確かに似ている。思い出すな……あの頃の事を」
「ヘックス、それでどうするのかねェ? また寝るわけでもないだろうけど」
「そうだな、俺様に呪いをかけたあのバグスというヤツ、アイツだけは絶対に許さん……俺様が消してやる!」
黒竜王ヘックスはバグスに対してかなりの怒っているようだ。
「黒竜王ヘックス……それで、話が有るんだ」
「何だ、お前はユカだったな。そんな他人行儀に俺様を呼ぶな、俺様の事はヘックスで良い。それで、何の話だ? ユカ」
黒竜王ヘックスはボクが英雄バシラの子孫だと認めてくれているようだ。
自分の事を呼び捨てにしても良いと言ってくれている。
「貴方が呪いをかけられた相手、実はボクに心当たりがあるんだ」
「何だと!? ユカはアイツが誰か知っているのか!」
「はい、アイツは……バグス。この世界とは異なる世界から現れた世界の破壊者です」
この説明で通じるだろうか……。
「ふむ、そうか。アイツは別の世界から現れたというわけか。それだと俺様が今までにアイツの気配を感じた事も無いのも当然と言えるわけだな……」
黒竜王ヘックスは納得したようだ。
まあ長年生きていて世界の大半を敵に回した彼なら、最強クラスの敵を知らないわけが無い。
それなのにヘックスが見たことも聞いた事も無い相手、それがバグスだと言える。
「だが許せんな、俺様はこの世界を破壊したいわけでは無い。むしろ若い頃はこの世界を全て俺のモノにしたいと考えたくらいだ。まあそのせいで世界の大半を敵にしてしまったのだがな!」
なんとも豪快な話だ。
だが今の黒竜王ヘックスには特にこの世界をメチャクチャにしようという気持ちはまるで無いようだ。
「むしろ俺様とフワフワの子孫がいるというのにこの世界を壊してどうする、そんな事をしてしまってはせっかく増えた俺様の子孫が消えてしまうではないか!」
「ヘックス様……」
「お前、名前は何という? よく見ればフワフワに似ているな」
「我、サラサ。フワフワ族の族長ウルツヤの娘」
サラサさんを見た黒竜王ヘックスは大きく笑った。
「そうか、フワフワの子孫達は、族と言われる程に数が増えたのだな、面白い。それでは一度お前達の住む村を訪れさせてもらおうではないか!」
「ヘックス様、もちろんです! 是非とも村にお越し下さい」
どうやら黒竜王ヘックスはフロアさん、サラサさん達と話をし、今度村に訪れるという話になったようだ。
それよりも、ボクは今黒竜王ヘックスに頼む事がある。
「ヘックス、頼みがあるんだけど聞いてもらえるかな?」
「何だ、どうした……ユカ」
「ボク達は、この山の向こうに向かわなくてはいけないんだ。だから……ここを通してもらえないだろうか?」
呪いも解け、話を聞ける状態になった黒竜王ヘックスなら快くここを通してくれるだろう。
「ダメだ!」
「え!? 何故……ボク達はどうしてもここを通らなくてはいけないんだ!」
だが黒竜王ヘックスはボクの想定外の返答をしてきた。
「ユカ、お前達を通す必要は無い。何故ならここに俺様は用がないからだ」
「え? それって……」
「俺様もお前について行く、嫌とは言わないよな?」
え、えええ!? まさか、黒竜王ヘックスがボク達について行くって……。
「ヘックス、アンタ……妾達と一緒に旅をするってつもりなのかねェ?」
「エントラ、まあそう取ってもらって構わんぞ、俺様はあのバグスというヤツが許せんのでな、俺様の手で倒してやらなくては気が済まんのだ。その上でアイツはユカに固執しているとすれば、一緒にいれば俺様がアイツを倒せるからな!」
目的はさておき、世界最強のドラゴン、黒竜王ヘックスがボク達の仲間になってくれた。




