81 不死身のアジト
『アジト』こいつが本当の盗賊の親玉のようだ。
こんな事を言うとなんだが、パワー馬鹿のソークツ、魔獣が無ければザコのドークツに比べると立っているだけで殺気をビリビリ感じる強さだ。
レベルは40以上あるだろう。
「ユカ様……コイツは相当強いです!」
まだ駆け出しの騎士見習いのホームにも分かる程、このアジトという男は強いと感じる。
「ククク……良いな。お前のそのまっすぐな目、魂を折った後に食らう時の目が見たいわ!」
「ふざけるなっ! 今までお前に殺された人たちの無念……その体にその数だけ刻み付けてやる!」
ホームの青臭い正義感が先走りしているようだ、だが私は彼のそんな所は嫌いではない。
「ハッハッハッハッハーーー! オレに傷をつけるだと? では、997回斬らなくてはいかんなぁ!」
「なっ!?」
「ハッハッハッハー! オレはさっきのソークツとドークツの分を合わせて今までに邪神に997の魂を喰らわせてるのよ! 貴様らの誰が記念すべき1000個目の魂になるかなぁ!?」
「許せない……!」
コイツは今までの中でも群を抜いた邪悪だ! 吐き気を催す邪悪と言えよう!!
「これ以上誰も殺させない! 最後の魂はお前の邪悪な魂だ!」
「……つまらん、笑い話にもならんわ」
「何だと!」
「邪神に1000の魂を捧げる事でオレは絶対の力を手に入れるのだ! オレが絶対の力を手に入れるのに何故オレ自身の魂をくれてやらなければいかんのだ!!」
コイツとは話になるわけがない。コイツは人の皮を被った邪神に魂を売った悪魔なのだ。
「お前の悪行もこれまでだ! 騎士の名に懸けて貴様を葬る!」
「ほう、ガキ……貴様が相手か!」
アジトが剣も構えずに仁王立ちで笑っていた。
「最初っから全力でやってやる! レジデンス流剣技! 縦横斬!」
「グハァ!」
ホームの剣技、縦横斬は巨大な牛すら一瞬でバラバラにする最強の攻撃だ。
アジトは見掛け倒しだったのか? ホームの必殺技連撃でアジトは全身がバラバラになっていた。
「やった……僕の剣技で……盗賊ボスを倒した!」
確かにホームは通常冒険者に比べればかなりレベルアップしてA級に近づいたかもしれないが……あまりにもあっけなすぎる。
斬り飛ばされたアジトの生首は目を閉じたまま動く気配はない……しかし、私には嫌な予感がした。
「ユカさん! やりました、僕……盗賊のボスを倒しましたっ!」
「ホーム! 危ない!!」
その時、アジトの生首がカッと目を見開いた!?
「ほほう……やるじゃないか小僧……いや、ホームと言ったか……」
アジトの生首が流暢にしゃべりだした。先程の嫌な予感の正体はこれだったのか!?
「なまじ強いだけに本当の恐怖を味わう事になろうとはなぁ……不死身のアジト様の恐ろしさを見せてやろう……」
……! なんと、アジトのバラバラに斬られた体はそれぞれがピクピク動き出し、胴体の方に蠢いていた。
「いやアアアア!! 何ですの!? このおぞましい物は!」
「ルーム! 見ない方が良い!!」
そしてアジトの身体は胴体を中心に再び鎧の男の姿に戻り……ゆっくりと歩き始めた。
「おっと……首を忘れちゃならねぇ」
「ば……バケモノ……」
「そうだ、その目が見たかったのよ……恐怖に怯えた目、それが魂を美味くするのよ!」
アジトは首のない身体で動き出し、左手で自らの首を抱えた。
「そうだ、オレは不死身のアジト……斬られようと焼かれようと溶かされようと……何度でも甦るのさ!」
これが奴の邪神の加護の正体だったのだ!
タダですらレベル40近い化け物が不死身の再生能力を持つ……これを見て怯えない人間は普通いないだろう。
幸い、私はゲームでデュラハンも見た事があるし、首が外れるキャラならロボアニメの『マシンダーA』に出てきた敵の幹部『グロッケン公爵』を幼い頃に見ていたのでこの程度では怯えなかった。
「再生能力持ちの不死身の相手か……どうやって倒せば?」