819 再戦! 黒竜王ヘックス
呪われた黒竜王ヘックスは再び真っ赤な目を光らせ、ボク達の前に立ちはだかっている。
――これがバグスの呪いの力なのか!?
黒竜王ヘックスはエリアさんの力で浄化され、理性を取り戻してボク達と会話できるまで状態が完全したのだが、彼がつい足元に落ちていた呪われたままの木の実を食べてしまった事で今度は内部から呪いに浸食されてしまったようだ。
「グガァアアアアアッ!」
おぞましい雄たけびを上げ、黒竜王ヘックスが叫んでいる。
この叫びは魂の痛みを感じるような凄まじい声だった。
「まったく、このクソたわけが! 落ちている物を拾い食いするからそうなるのじゃ!」
アンさんが鋭い蹴り技を連発で叩き込んだ。
だが、普通なら致命傷を受ける程の打撃を受けても黒竜王ヘックスは呪いの力であっという間に再生している。
「まるでキリがないねェ! こうなったら継続的にダメージを与え続ける必要がありそうだねェ!」
大魔女エントラ様はそう言うと特殊な穴を作り出した。
「コレはグラビティ―ホールの魔法、この穴にはその者の持つ体力の大半が吸い取られるようになっているからねェ!」
流石の黒竜王ヘックスもこの謎の異空間への穴に攻撃しても穴は塞げないようだ。
見ていると決まったタイミングで黒竜王ヘックスの体力がアナに吸い取られているのが分かる。
だが、それでも体力を穴に吸い取られた直後、呪いのオーラがヘックスの身体を瞬時に再生させている。
「どれだけ凶悪な呪いなのかねェ!?」
「それなら僕の魂の救世主で断ち切ってやる!」
ホームさんが大剣魂の救世主を構え、エネルギーを剣に集めた。
「うおおおおおおおっ! コレが僕のオーラだ!」
大剣魂の救世主にホームさんの闘気が込められていく。
そしてオリハルコンで出来た巨大な刀身は白く激しく光り輝いた。
「行くぞ! セイクリッドオーラブレード!」
魂の救世主から作られた巨大な聖なるオーラの剣が黒竜王ヘックスの身体を中央部分から真っ二つに切り裂いた!
だが、黒竜王ヘックスは斬られた部分から瞬時に再生し、再び何もない状態に戻った。
「そんな、これじゃあキリがない!」
「皆さん、私が再び黒竜王ヘックスを浄化します!」
エリアさんは先程と同じように浄化の力を集めようとしている。
だが、先程の力でエリアさんの膨大なはずの魔力は半減していた。
もしこれでもう一度浄化したとしても、あの呪いが再び再生させてしまえば意味がない。
その上力を使い果たしたエリアさんの命にすら関わる危険性があるのだ。
――ダメだ、このままでは呪いで再生する黒竜王ヘックスに対抗なんて出来ないまま全員の力が尽きて全滅してしまう!
どうにかアイツを倒す、いや……静める方法は無いのだろうか。
ボクは以前の戦いを思い出していた。
ボーンゴーレム、テスカトリポカ、邪神竜ザッハーク、不死身の再生能力を持った怪物は色々いた。
その中で一番今のこの状況に近いのは……邪神竜ザッハークだ!
アイツを倒した時、ボクは温泉を作りアイツの邪悪な力を奪った。
だがコイツが温泉で浄化されるとは思えない。
だが今のボクなら、あの時にはできなかった事でも出来る!
そう、アイツを浄化するための方法を思いついたのだ!
「みんな、時間稼ぎをしてくれ。今度はエリアさんじゃなくてボクがやってみる!」
「ユカ様!」
「ユカさん」
「ユカ坊……」
みんながボクの為に力を貸してくれるようだ。
さあ、今のうちにボクはあの黒竜王ヘックスをねぐらの中央部におびき寄せなくては!
そう思っていたボクだったが、黒竜王ヘックスの全身が真っ黒いオーラで包まれ、一気に口にエネルギーが集められた。
――まさか! あれは……黒い光のブレス!
このまま撃たれてしまうと、王都が跡形も無く消滅してしまう!
ダメだ、今度はアイツの向きを変えさせるだけの時間が無い!
だがこのままでは、あの黒い光のブレスが吐かれてしまう。
どうにかしてアイツのブレスを食い止める方法は無いのか!?




