816 圧倒的な再生能力
黒竜王ヘックスは地面を割り、空に舞い上がった!
普通のSSハイレベルモンスターくらいなら一度地面に埋められて這い上がってくるようなヤツはいなかった。
だからボクが四万を超す魔族の大軍を一人で倒す事が出来た。
――! だが、この黒竜王ヘックス、埋められた状態からでも自力で這い上がり、更に魔力で跳び上がる程の規格外のバケモノだ!
つまり、この黒竜王ヘックスは一匹で四万の魔族よりもよほど強いと言われている。
「みんな、大丈夫!?」
「こちらは大丈夫ですわ!」
「俺も問題ない、サラサもだ」
「あのクソたわけ、完全に我を見失っておるな」
黒竜王ヘックスは空高く跳び上がった後、意味も無く上下左右に動き回っている。
あの動きには何か意味があるのだろうか?
『ソウイチロウさん、あのヘックスの動き、何か意味があるんですか?』
『いや、アレは何を意図しているのかわからないな、まあ考えられるとしたら……魔力を放出しているのかもしれない』
『え? 一体何故そんな事を? 魔力を外に出す意味なんて……』
ボクにはイマイチ意味が分からないが、ソウイチロウさんは何となくあの黒竜王ヘックスの奇行の意味が分かっているようだ。
『強すぎる魔力は身体の中に溜まりすぎると内部で異常をきたす、つまり容量オーバーになりかねないというわけだ。だからあの黒竜王ヘックスはその溜まりすぎた魔力を調整する為に空を飛んでいるのかもしれないな』
なるほど、何となくだがボクにも意味が分かった。
つまり黒竜王ヘックスは身体に溜まりすぎて外に出せない魔力を空を無軌道に飛ぶ事で放出しようとしているのか。
『あれで魔力が練り上げられたらとてつもない攻撃が来るぞ! 気を付けろっ』
『はいっ! わかりました』
黒竜王ヘックスの動きが落ち着いてきた、どうやら本当にソウイチロウさんの言うように無駄に蓄積されている魔力を調整していたようだ。
「ユカ、気を付けるんだねェ。あのヘックスのバカ、何かトンデモない事をやらかそうとしているみたいだからねェ」
「わかりました、その前にエリアさんに浄化してもらえるようにしましょう!」
急がないと時間が無い。
今エリアさんは魔力を高め、呪われた黒竜王ヘックスを浄化して元に戻す為の魔法の言語を詠唱している。
古代語でもないコレはボク達には解読不可能な言葉なのかもしれない。
とにかくボク達はあの黒竜王ヘックスが何か凄まじい攻撃をしてくる前に浄化する必要がある。
その為には一度あの空を飛んでいるヘックスを地面に落とさなくては!
「ボクの足元の高さをヘックスのいる高さまでチェンジ!」
ボクのスキルマップチェンジで足元の地面が周りが見えないくらいまで高くせり上がった!
見えた、黒竜王ヘックスの翼だ!
「喰らえぇえ!」
ズバッ!
新生エクスキサーチの一撃は黒竜王ヘックスの皮膜を切り裂き、空を飛ぶ彼にダメージを与えた。
「地面の高さを元の高さにチェンジ!」
ボクの足元の地面が無くなり、ボクは黒竜王ヘックスの翼にしがみつきながら翼をズタズタに切り裂いた。
翼を切り裂かれた黒竜王ヘックスはバランスを崩し、その場に落下した。
「落ちてきたタイミングで攻撃します!」
「さて、ワシも本気を出すかのう!」
「それじゃあ全員にホーリーエンチャントかけるからねェ」
ホームさん達、アンさん達、大魔女エントラ様、全員が落下した黒竜王ヘックスを待ち構えている。
落下した黒竜王目指し、全員の総攻撃が炸裂した。
普通の魔物ならこんな攻撃を喰らえばひとたまりもないはずだ!
だが、全員の攻撃を喰らった黒竜王ヘックスはその場に立ちあがり、ズタボロになった身体が徐々に再生していた。
何という再生能力だ!!
黒竜王ヘックスが元の状態に戻るのにそれほどの時間はかからなかった。




