815 地の底の黒竜王
――総力の防衛戦――
言葉としては変な感じだが、今からボク達がやろうとしているのはまさにそれだ。
つまり、ボク達がこれからやる事は黒竜王ヘックスの攻撃から全力でエリアさんを守る事。
エリアさんには攻撃能力は無い。
だが彼女以外にあの黒竜王ヘックスにかけられた呪いを解ける人はいない。
つまり、ボク達は彼女が黒竜王ヘックスにかけられた呪いを解く為に、全力で彼女を守り、攻撃の目線をそらし続けなければいけないという事だ。
だが黒竜王ヘックスの強さは世界最強、下手すれば大魔女エントラ様やドラゴンの神様であるアンさんですら一人では太刀打ちできないレベルだ。
黒竜王ヘックスに対抗するのは、ボク、ホームさん、ルームさん、マイルさん、カイリさん、大魔女エントラ様、アンさん、フロアさん、サラサさん、そしてシートとシーツの聖狼族の双子の狼だ。
全員がレベル60超え、つまりは伝説、神話クラスのレベルだと言える。
だが、あの黒竜王ヘックスのレベルは間違いなく100を超えている。
――つまり、あの強さは神にも匹敵するというわけだ!――
ボク達が戦う相手はそんな規格外の怪物だ。
ハッキリ言って勝ち目があるかわからないような戦いだ。
だが、今のあの呪われて狂暴化した黒竜王ヘックスを野放しにしてしまえば、それこそ世界が彼に滅ぼされかねない。
「みんな、勝ち目のない戦いに巻き込んでゴメン」
「大丈夫ですわ、私強いですもの」
「僕も問題無いよ!」
「妾はとにかくエリアちゃんを守ればいいのよねェ」
ホームさん、ルームさん、大魔女エントラ様が笑って返事してくれた。
「無論じゃ、あの大たわけにワシが喝を入れてやるわ!」
「オレもいるぜー、まー、どこまでやれるかわからねーけど、あんなデカい相手にケンカってのも悪かねーよな」
「カイリ、もう少し真面目にやってよぉ! あんな怪物と戦えるのアタシ達だけなんだからねぇ!」
アンさん、カイリさん、マイルさんも臨戦態勢だ。
「ヘックス、俺達の爺さんと同じ名前だけど、何かあるのかな」
「フロア、今は考えごとしている場合でない、いくぞ」
「「ワオォーン!」」
フロアさん、サラサさん、シートとシーツの双子もボク達と戦ってくれるようだ。
敵は黒竜王ヘックス! 世界最強のドラゴンだ。
ボクは新生エクスキサーチを構え、ヘックスを睨みつけた。
「行くぞ! 黒竜王ヘックス!」
「ガアアアアァァァァッ!」
ボクは黒竜王ヘックス目指して走った。
「ホーリーエンチャント!」
「パワーアップ、ストレングスアップ!」
ボクに大魔女エントラ様とルームさんが魔法をかけてくれた。
この魔法は聖属性付与だ。
今の呪われた黒竜王ヘックスには特効があるだろう。
「ユカ様、危ない!」
ボクに振り下ろされた黒竜王ヘックスの爪をホームさんが魂の救世主で弾いてくれた。
「助かりました! ホームさん」
「ここは任せて黒竜王ヘックスに向かってください!」
「グガアアアァ!」
よし、黒竜王ヘックスの怒りがボクの方に向いている。
これならエリアさんへの攻撃をこちらに向けれる!
ボクはマップチェンジスキルで黒竜王ヘックスの足元の地面を一気に奈落の底に変えた!
「目の前の地面を底の見えない落とし穴にチェンジ!」
そしてその後、ボクはその地面を一気に元に戻し、黒竜王ヘックスを地面に埋めた。
まあこんなので倒せる相手ならいいんだが、どう考えてもコレは時間稼ぎにしかならないな……。
ボク達の足元が大きく揺れた!
「な、何なんだ!?」
「これは……ヘックスのバカがブレスを放ったようだねェ!」
大魔女エントラ様は普段と反対に地面に向けて防護結界を張った。
「ギャアオオオウン!」
なんと、黒竜王ヘックスは奈落の穴を登り、ブレスで固い地盤を全て砕いて浮上してきた!




