813 呪われた黒竜王
黒竜王ヘックスの黒い光のブレスは一撃で空帝戦艦アルビオンを消滅させるほどの威力だ。
下手にここで地面をマップチェンジしたとしても確かにボク達は攻撃を避けられるが、黒いブレスがもし王都に向けて放たれたら王都の大半が消滅してしまう。
せっかくエリアさんが魔将軍アビスの魔の手からアンデッド化した人達を浄化して元に戻しても、この黒竜王ヘックスのブレスが放たれれば意味が無くなってしまう!
今のボク達がやるべき事は……黒竜王ヘックスの向いている方向を反対に向かせる事だ。
「みんな、ボクに考えがある。少しだけ時間を稼いでくれないか」
「ユカ様、わかりました!」
「承知致しましたわ」
「あまり、長い時間稼ぎは出来ないけどねェ!」
とにかくあの黒竜王ヘックスを王都と反対側向かせないと、あの黒い光のブレスで全てが吹き飛んでしまう。
「ボクの目の前の地面を空中に浮かせてくれ!」
「グガァアアアアッ!」
成功だ!
ボクの目の前にいる黒竜王ヘックスのいる地面が空中に浮いた。
どうやら今までにボクが踏んだ事のあるアルカディアや遺跡の古代の床を再現できたみたいだ。
「エントラ様! ルームさん、あのヘックスの足元の地面を魔力で反対に向かせてくれないか!」
「わかった、やってみるねェ!」
大魔女エントラ様の魔力は黒竜王ヘックスのいる地面を王都の反対側に向かせる事に成功した。
「ギャオオオオオオウッ!」
黒竜王ヘックスの口から黒い光のブレスが放たれた!
幸い、ブレスは王都ではない何もない山岳の方目掛けて撃たれ、山岳に巨大な風穴が空いた以外には特に大きな被害は出なかった。
流石の黒竜王ヘックスも一度黒い光のブレスを放つと、二発三発とは連発出来ないようだ。
今のうちにアイツをどうにかしなければ、もし今度黒いブレスが撃たれても同じ手が通用するとはとても思えない……。
それよりもあの黒竜王ヘックス、なぜあんなに暴れているのだろうか……。
「エントラ様、黒竜王ヘックスって昔からあんなに大暴れしていたのですか?」
「いや、そんな事は無いねェ、アレは妾が見ても異常な姿だねェ」
なるほど、つまり本来の黒竜王ヘックスはあんな大暴れするようなタイプのドラゴンでは無いという事か。
それならば一体なぜあんな風に我を忘れたかのように大暴れしているのだろうか……?
大魔女エントラ様は昔の黒竜王ヘックスを知っている。
その彼女がこの状態は異常だと言っているのだ。
つまり、この状態の黒竜王ヘックスは何か魔法で狂暴化でもさせられているというのだろうか。
「エントラ様、黒竜王ヘックスの強さとか状態って調べる事は出来るんですか?」
「まあ、可能だねェ。妾より魔力が低い相手なら鑑定魔法は通用するからねェ」
大魔女エントラ様が暴れ回る黒竜王ヘックスに向かい、鑑定の魔法を放った。
何かの枠が黒竜王ヘックスを囲み、一瞬で消えた。
「成程ねェ、まさかこんな事になるなんてねェ……」
「エントラ様、何かわかったんですか?」
「そうねェ。結構厄介な呪いだねェ」
なんと、黒竜王ヘックスは呪われているそうだ。
つまり、本来は理性や知性のあるはずの黒竜王ヘックスは呪いのせいで知性を失い暴走しているという事か。
「ちょっと試してみたい事があるからねェ、コメットフォール!」
大魔女エントラ様が降り注ぐ小さな流星で黒竜王ヘックスを攻撃した。
この魔法一つで下手すれば小さな村なら消滅するほどの威力の魔法だ。
実際大魔女エントラ様の魔法は黒竜王ヘックスの翼を破り、鱗に穴を開けた。
これほどの魔法を使えるのは世界広しといえど彼女くらいだろう。
――だが、黒竜王ヘックスは黒い霧に包まれ、傷ついた場所が瞬時に修復していた!
コレが呪いの力だというのか。




